むらさきの空 鏡が傾くと夜になる。見上げれば、視線の奥に星屑のような光が広がっている。でもあれは星じゃなくて人工の光。
今日の天気は、終日、晴れ。あらかじめ決められている天気と日照時間。全部が計算されている世界。でも、だからなんだっていうんだ。私はただ、やるべきことを、やるだけ。生きるとは、そんな日々の繰り返しだ。夢や希望なんて、生死の前では、いっきにかすむ。
視線を前に戻し、日銭を握りしめて、帰宅を急いだ。
――ピロリン。
しかし、踏み出した足がスマートフォンの音に呼び止められた。画面にはマチュのアイコンと、メッセージが表示されている。
『ニャアン、これから、ひま?』
――これから?
上に表示されているデジタル時計をちらりと見てから、画面のロックを解除して、両手で文字を打ち込む。
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