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    noa/ノア

    @eleanor_dmei

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    noa/ノア

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    [風信&南風✈] 前回の出会いがしら風南のおまけ。飛び込んでしまった風信機長の🥧を反芻しちゃう南風。

    ##風南
    ##パイロットAU

     びっくりした……。南風はふぅと大きく息を吐いた。
     あっと思った時には遅かった。辛うじて全力での衝突は免れたものの、首から頭へ衝撃めいた感覚が走り抜ける。
    「すみませ……」そう言いながら顔を上げたところで南風は固まった。あれほどに焦がれていたひとの目。驚いて見開いたその目が、自分を見下ろしている。
     頭は一瞬で真っ白になっていた。しばし固まったのち、思わずついてしまった腕を風信機長の体から離す。向こうも急いでいたらしく、言葉少なく反対方向へ別れた。
     取ってきた報告書を渡しがてら職員にそれとなく聞く。風信機長は他の機長の代わりで急遽呼ばれたらしい。
    「出会いがしらに会ったの?」
     勘のいい同僚に言われ無言で頷く。
    「よかったじゃん」
     よかった──確かに、なんていう再会の仕方だろう。
     あろうことか、その胸に飛び込んでしまった。
     驚きで縮めた腕をついた先。風信機長の胸、それはすごく──
     硬かった。
     胸元の緩やかな盛り上がりは横から見ていたが、手で触れたそこは、シャツごしでもわかるほど硬くしっかりとしていた。ぶつかっていった南風にもびくともしないほど。それは風信機長の信頼感そのものだった。たぶんシャツを脱げば、その鍛え上げられた稜線にそって緩やかに影がさすのだろう。きっとその下の腹筋だって──
     ちょっと待て、とそこで我に返る。自分は風信機長のシャツの下に興味があるのか……?
     途端に火が燃え上がるように首から上を今度はカーっと熱い熱が駆け上る。今日は首から上が忙しい。髪が逆立つのではないかと思うほどの熱に耳が鳴る。
     くるりと背を向け部屋から駆け出す。更衣室に飛び込み、すみっこにうずくまる。
     いったい何を考えているんだ? だが考えまいとするほどにその瞬間を思い出してしまう。
     目の前で小さく上下する、その大きく張り出した喉元。南風の二の腕を両側から抱き止めた大きな手の感触。見つめ合いながら微かに感じた風信機長の匂い。
     ほんの一瞬だったのに、それは一分にも一時間にも永遠にも感じた。
     これまでも風信機長に優しく触れられたことはあった。だがこんなに全身で触れてしまったのは初めてじゃないだろうか。
     それにしても……ドキドキとする胸の前にそっと両手を持ち上げる。敏感な手のひらと指先で感じたその場所の奥で打つ鼓動。それは忙しく走っていた。向こうも急いでいたからだろうとわかっていながらも思い出すだけで南風の鼓動も早くなる。
     それに──南風はゆっくり右手の指を動かす。
     南風が派手に手をついてしまったせいでずれた機長のブレザーの襟元。そこから手を離そうと動かしたときに、ほんの一瞬、指先が掠った小さな尖り──。
     壁に預けていた背中がずるっと下に滑る。
     いったい自分はどこを触って──。
     のけ反って頭をがんがんと壁にぶつけたあと、大きく深呼吸を繰り返す。
     と、とりあえず機長が空の上に行ってしまう前に謝らねば──なんとか残っている理性を総動員して、ぎこちなくスマホを取り出し、短い謝罪の言葉を送信する。すぐに、向こうからもすまなかったと返ってくる。その字面を見ていると少しだけ冷静さが戻ってくる。よかった。いつもの風信機長だ。
     画面にぽんと現れた『行ってくる』という言葉をそっとゆびで撫で、スマホをしまう。
     もう一つ大きく深呼吸して腕で自分の胸を抱える。
     毎日の疲れでサボりがちだったが、自分もちゃんと鍛えよう。そうだ、どこのジムがいいか聞いてみようか。やっぱりプロテインとか摂ってるんだろうか。そんなたわいない会話のネタが顔を出し、いつのまにか、頬は鍛える気などないとばかりにゆるゆると緩んでいた。
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