キスしないと出られない部屋「そっちも何もなさそうか?」
「はい、出口や壁を壊せそうなものは見つからなかったです」
氷帝学園テニス部3年宍戸亮と2年の鳳長太郎は、だだっ広い部屋に閉じ込められていた。放課後、2人は部活動のために部室へ向かったのだが、入室した瞬間まばゆい光によって目くらましをされ、気付いたらこれだ。
部屋にはソファやベッドといった、生活するのに必要最低限の家具しか置いていない。入ってきたときにはあったはずの扉は、確かにそこにあったというのにすっかりなくなってしまっている。床と壁はコンクリート打ちっぱなしのような材質で、壁には大きくこう書いてあった。
『キスしないと出られない部屋』
このような珍妙な部屋に閉じ込められ、外との連絡手段も出口もない。最初、2人を襲ったのは恐怖心だったが、人間とは不思議なもので、こうも外に出る手段がないと一周まわって冷静になってくるものだ。どうにか脱出方法はないか、壁に書いてある表記を無視して探し回っていた。だってキスして出られる部屋なんて現実離れしたもの、存在するわけがないのだから。
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