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    お題交換で書いた鳳宍です。
    お題:人混みではぐれないように手を繋いで意識し合う鳳宍

    #鳳宍
    shinji

    ほらよ「ほらよ」
     宍戸が鳳に手を差し出す。人混みの中ではぐれないように、手を繋いでくれるということらしい。
     そういえば前にこんなことがあったな、と鳳は思いを馳せた。

     あれは中学生の頃、一緒に映画館へ行った時だったか。二人でテニスをして、その帰りに映画館に寄った。有名なアニメ映画を実写化した作品で、鳳の周りでも観た人全員が酷評している。宍戸の周囲でもそうだったようだが、鳳も宍戸も自分の目で観て感想を持ちたい、という話になり、せっかくだからとその映画を観たのだった。残念なことに、映画がどのような内容だったかは一切覚えていない。おそらく前評判からの予想を裏切るような"可"もなく、そしてみんなが酷評するほどの"不可"もなく、だからといって印象に残るシーンもなく、だったのだろう。
     とにかく覚えているのは、映画が終わると、確か宍戸が「近くのファミレスでも行くか。感想言い合いたいしよ」と立ち上がって、二人で映画館の外を目指した、ということだ。その日は連休なだけあって、館内は人が多くとても混雑していた。お人好しな鳳は人に道を譲ってしまうため、先を歩いている宍戸との距離がどんどん離れていってしまう。このままでははぐれてしまうのでは、と思った時、宍戸が「ほらよ」と言って鳳に手を差し出してきた。
    「え?」
    「どこでもいいから掴まってろ。はぐれるぞ、長太郎」
     鳳は失礼します、と言うと、特に深く考えずに差し出された手をとった。鳳よりは小さくあたたかいその手は、一瞬びくっと驚いたような反応を示したが、すぐに鳳の手をがっしりと握り返してくれた。この時点で鳳は我に返り、宍戸と手を繋いでしまったという事実に気づく。心臓から大きなドクドクという音が聞こえてくる。俺、手汗かいてないかな、宍戸さんから「こいつの手じっとりしてる」と思われたら嫌だな、などと考えてしまう。
     宍戸は意識なんかしていないような顔で、出口に向かって歩みを進めている。俺のことをもっと意識してほしい、そう思った。
     握手のように握った手から恐る恐る指を動かし、宍戸の指と指の間に自身の指を滑り込ませてみる。恋人繋ぎのような形にして、ぎゅっと握ってみた。さすがにやりすぎか? と思ったが、宍戸さんの手はゆっくりと鳳の手の甲に指を添えるように握り返してくれた。
     たったそれだけのことで、鳳の心臓は飛び上がるように跳ね、喜んでしまう。抱き寄せてキスしたいくらい嬉しい、この気持ちを伝えられたら。
     茹った顔に冷たい外の風が吹き付ける。どうやら映画館からの脱出に成功したようだ。宍戸さんは物言いたげに俺を見つめている。
    「どうしました? 宍戸さん」
     ハッとした。鳳は宍戸の手を振り解くように離す。
    「あっ、えっと、誰かに見られたら大変ですね!」

    「長太郎?」
    「ああ、はい。すみません」
     過去を懐かしんでぼーっとしてしまっていたようだ。宍戸に名前を呼ばれてハッとして、10年前と同じように宍戸の手を握る。宍戸は鳳の方を振り返り何か考えるような素振りを見せると、今度はニヤリと笑って宍戸が鳳の指の間に指を滑り込ませてきた。そして、すりすりと鳳の指を撫でてくる。なんだかその一挙手一投足、鳳に与えられる刺激の一つひとつが官能的だ。
    「ちょっ、あの、宍戸さん!?」
     手を振り払おうとする鳳の手をぎゅっと握り、そして宍戸はこう言った。
    「どうせだれも見てねえって!」
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