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    RE_734

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    RE_734

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    山もなければオチもないし意味もないです。だらだらと壁打ちしていた雑談。推敲してねえ~~
    2Gに避難するふきさこの話。これは避難場所として果たして適していたのだろうか。
    ※モブに苗字がつきます。

    (誤字脱字は適当に見つけて適当に修正しておくのでそっとしておいてください)

    #aopl_BL
    #アオ腐ラ
    blue-wingedDarter
    #いさひな

    いさひな+ふきさこ 避難場所の話「ヘイしゅーちゃん! これ着てて!」
    「なんでだ」
    「バスケのダンクには邪魔なんだよー。すぐ戻ってくるからさ」

     学ランをアンダースローで投げて寄越した伊佐は、颯爽と腕まくりをしていた。12月もそろそろ終わろうというこの時期に寒くないのか。
     あぶないあぶない、と小声で呟きながらお気に入りのヘッドホンもそそくさと外す。

    「TikTok用にね? なかっちともっちゃんがダンクキメてる動画撮りたいんだって〜。カッコよく撮ってねって言っといたから、あとでしゅーちゃんにも見してあげる」

     なかっちともっちゃん。クラスメイトの田中と橋本か。バスケ部の冬の選抜予選も終わって余裕が出来たのだろう。詳しくは知らんが。
     折角生まれ持っての高身長で男のロマンであるダンクシュートをしないのは勿体ないんだって。知るか。そんなもん。
     と、言ったところで伊佐には通用しないだろう。楽しそう面白そうが彼の中では優先順位が跳ね上がるものなのだ。
     しゅーちゃんも来る? とことりと首を傾げる伊佐に、こいつは持っててやるから早く行ってこいと学ランを指差すと、満足気に目が細められた。

    「よっしー! 体育館いくぞー!」
    「ゴール下取られちゃうから!」
    「オッケー今いくー!」

     それ、ちゃんと着ててね。とダメ押しした伊佐は、教室後ろに下げられている体育館履きを引っ掴むと軽快な足取りでクラスメイトのあとを駆けて行った。
     さり気なく言い換えたんだがな。うまく誤魔化されてはくれない。
     受け取った学ランに腕を通していると、マナーモードにしていたスマホが点滅している。通知。メッセージか。

    『秀さん今教室にいる?』
    『いるぞ』
    『今から行く』

     ぽこんと通知バーに踊る文面は柊迫からだ。彼からの連絡は簡潔でいいが、簡潔すぎて目的がわからないことがある。まあ、来ると言うなら来てからでいいか。
     片腕だけ通していた学ランにもう片方の腕を通しつつ、なるべく教室出入り口に目を向けておく。
     上級生の教室に一年生が一人で乗り込むのはなかなかハードルが高いものなのだ。普通は。普通じゃない奴も心当たりがあるけども。

     ぼんやりとスマホを眺めつつ、視界の隅に見慣れた顔が入るのを待つ。バンド内で並んでいると小柄に見える柊迫も、女子も入り混じる教室にいるときはそれなりにタッパはある方だ。

    「――秀さん、」
    「柊迫。ここだ」

     控えめに教室を覗く柊迫を見つけひらりと手を掲げて見せれば、小さく「失礼します」と口にしてから敷居をまたいでやってきた。するすると人混みをよけながらやってくる様は猫のようだな、と思うのもつかの間。

    「秀さんが学ラン着てるの珍しいね」

     はち、と普段はあまり大きく見開かれることのない瞳を瞬かせた。日頃動作がオーバーではない物静か(な方)の後輩は、リアクションすら猫じみている。

    「――ん、ああ。これは俺のじゃなくて伊佐のだ。さっきちょっと着てろと押し付けられて」
    「そこで律義に着てくれるのが秀さんって感じだよね」
     わけのわからんところで一人勝手に納得している柊迫を、とりあえず立たせっぱなしも何なので俺の椅子へと座らせる。

    「それで? 今日はどうした」
     と促せば、そうそうと言いながら手に持っていたクリアファイルを脇へよけた。いや、それが要件ではないのか。
    「これは単なるカモフラ。部活の先輩のところへ行かなきゃいけないからっていういいわけが立ちやすいから持ってきただけ。いかにもーって、感じするでしょ」
     クリアファイルの中身を引き出した柊迫は、先月から詰めている楽曲のスコアをぺらりと捲った。完全に頭に入っているのだろう、直ぐに閉じられたそれは再びクリアファイルへと収められた。

     カモフラージュをしてまでわざわざこちらの教室まで来たという時点でなんとなく察しがついた。いつも柊迫にひっついている(というと目の前の顔がえらいことになりそうだから言わないが)春宮がいないことも理由の一つだろう。
     避難場所がここでよかったのかときけば、
    「流石にクラスの女子も上級生の教室の中まで追っかけてこないよ」
     とひとこと。なるほど、今回はクラスの女子から逃げていたと。

    「春宮は休みか」
    「んーん。早退。地方のおばあちゃんがこっち来るからお迎えだって。その帰りに買い物に行って荷物持ちだってよ。臣ママ強いからさー、もう担任に話付けてんの。おばあちゃん大事にしろよって言われててわらった」
     そこまではよかったらしい。が、如何せん時期が悪かった。冬休みを目前とした今日この頃。1-Bのお嬢さんたちは、しばらく顔を合わせなくなる前にどうにかこうにかしていけ好かない王子様の連絡先が欲しいそうだ。行事ごと、長期休み目前ごとに水面下で開催される春宮永臣連絡先入手チャレンジに、いつも一緒に居るからという理由で橋渡し役へと目を付けられるのが常らしい。

     なんなら今回に至っては、教室を出るついでに
    「侃も終わったらウチな。ばーちゃんまだお前のこと覚えてっからよ」
     と巻き添えにしてくれやがったと眉間にしわを寄せる柊迫を見れば、この後の事態はおおよそ想像に難くない。

    「休み時間の度に『春宮くんのことなんだけど』って声かけられてみなよ。もう自分の机にこの席に座っているのは柊迫です、って書いておいてやろうかと思ったね」
    「――それは……、お疲れ様」
    「うん。だからチャイム鳴るぎりぎりまでいるね」
    「お好きなだけ」
     どうぞと自分の席を差し出すように掌を向けると、ふわりと目元がゆるんだ。

    「あ、でも秀さんが座ってる席の人が戻ってきたらさすがに退く」
    「安心しろ、こっちの席は伊佐だ」
    「席替えしたってきいたのに、また席近いの?」
    「……でかいと後ろに寄せられるんだ」
    「なるほど、」
     後ろの人見えないもんね、と続けた声に頷く。なんなら放っておくとやかましい伊佐のお目付け役と認識されているらしく、必然的に近い席になりやすい。くじ引きとはいったい何だったのか。

    「まあ、そんなわけだから気にせず座っていてくれていい」
     どうせ戻ってきたところであまり問題ないと続ければ、じゃあありがたく、とくたりと上半身が机へと懐く。
    「あったか……」
     窓際から二列目。この時期窓を開ければ冷たい風が吹き込むが、からりとよく晴れた今日のような日にはカーテン越しの日差しで程よく温まる。思わずこぼれた声色から、本日の彼の疲労具合が伺えた。

     スマホへ目を移しながらほつりほつりと、話し始める柊迫の話に耳を傾けながらまったりと相槌を打つ。冬休みの部活の話。冬季課題の話。休み明けのテスト範囲の話まで転がったところで、聴きなじみのある賑やかな声が廊下から聞こえてきた。

    「しゅーちゃんただいまー! ってあれ? ふっきーもいるじゃん、2Gへいらっしゃーい」

     教室に入るなり伊佐は目聡く柊迫を見つけると、めいっぱい手を振りながらこちらにずんずん向かってくる。ただでさえ目立つのに声も煩ければ動作まで煩い。
    「和さんこの時期に腕まくりって正気?」
     表情筋全部使っているのかと思うレベルで「うるさい」を顔中で表した柊迫は、伊佐のまくられたパーカーの袖を指さした。寒くないのと続ける言葉尻すらげんなりしている。
    「寒くないどころかちょっと暑いねー、さっきまで体育館で動いてたから」
     ダンクシュート決めてきたよー! とVサインを掲げて見せた。
    「わざわざ休み時間にダンクキメに行く意味が解らない……。陽キャこわ……」
    「まーまーまーまー。動画撮ってもらったから見てみてー」
    「動画も撮ってもらってるとかもう陽キャの集まりじゃん……よってたからないで」
    「じゃあ再生すんね―。しゅーちゃんもみてー、ばっちりきまったから」
    「お前ら本当に会話成立しないな?」

     本当に同じ言語で会話しているのか? と思うくらいにはいっそ清々しいまでに歩み寄りが見られないが、これでよく歌うときにまとまるな。いや、まとまってはいないのか? うまいことピースが嵌まっているだけで自己主張の塊なのは変わりない。
     俺と柊迫の間にスマホを持ってきた伊佐は、するすると画面をスクロールしながら件の動画を再生させた。

    ――キュ、

     体育館の板張りの上を、学校指定の運動靴が軽快に駆けて行く。パスを受けてドリブル。ボールがバウンドする音が異様に大きく聞こえるのは体育館特有の反響の所為だろう。身長ゆえの歩幅の広さは、バスケットボールの競技上さぞ羨ましがられることだろうなと思いながらゴール下までた画面の向こうの伊佐を眺める。
     狙いを定めて踏み切り数歩。より一層歩幅の広くなったステップは、難なくゴールリングに手を届かせた。ネットをくぐるボールの音が軽やかだ。お見事。

    「うっわ、こんなの漫画の中だけかと思った……」
    「でしょでしょ?! 男のロマンと言われてやらんわけにはいかねえなあと僕は張り切っちゃったわけですよ。ロマン達成」
    「和さんただでさえ目立つんだからこれ以上目立たないでよ。こっちは臣さんだけで手いっぱいなんだから……」
    「ご安心くださーい、僕の面倒はしゅーちゃん担当だからね。ふっきーはひーちゃんだけみててあげればいいんだよ」
    「それもちょっとやだな……」
     
     今日のことがあって殊更遠慮したい気持ちが勝っているであろう柊迫の心境が手に取るようにわかる。もう分かりやすく手でNGすら出している。
     それでも「ちょっと」で済んでいるところあたり、付き合いの長さによる許容が垣間見えて微笑ましい。

    「あ、しゅーちゃんヘッドホンとってー。後で貰ったこの動画折角だからNGシーンと合わせて編集しよ」
    「ああ。そろそろ退くからお前座れ」
     教室に出る前に外していたヘッドホンを手渡しながら、椅子から立ち上がると
    「えー、じゃあしゅーちゃんはここに座んな」
    と己の膝を叩いてくる。何が悲しくて180の男が188の男の膝の上に座らなければならんのだ。
    「誰が座るか。冴木ー、席借りる」
    「うーい。どうぞー」
     すぐ近くの席でクラスメイトと喋っている席の主に声をかければ快く承諾の返事が飛んでくる。有難く冴木の席の椅子を引いたところで伊佐に手首を掴まれた。
    「やだやださえちゃん浮気を増長させないで。そこは阻止して」
    「今のそれ浮気現場だったの?」
     頼む冴木。もっと言ってやってくれ。もはや柊迫の顔が何とも言えない顔になってきている。悪かったな、折角避難場所に選んだのに。そろそろ気を遣って俺の席を退きかねない。なんだかんだ気にしいの性格上わざわざ他のやつの席に座るやつでもないのだ。そのまま座っててくれ。

    「別に冴木の席に座ったところで浮気にはならん」
    「なるよ?!」
    「ねえ秀さんのツッコミどころはそこなの……」
    「遡るとキリがないから目の前のところだけにすると最近決めたんだよ」

     残り長くもないがお前は俺の席で大丈夫だからと柊迫に言いおくと、うんと素直に頷いたのは良い。そこまではよかった。
    「もう和さんめんどくさいから秀さん座ってあげれば?」
    「お前たまに本当になにもかも放り投げることあるよな?」
    「うーん。今日のおれはもう営業終了しちゃったから」
     疲れていますのアピールとばかりにぺとりと上半身を机に倒した。爆弾を放り投げておきながら営業終了をするな。

    「ほらあ、ふっきーもそう言ってるよ! 大人しくここに座んな!」
    「なんで伊佐も頑なになるんだ、いいだろ隣の席で」
    「秀さんもうあきらめな。でかいのがふたりで騒いでると迷惑になるでしょ。クラスの人に申し訳ないよ」
     いつもに比べて威勢はない方だが相変わらずのキレだなおい。よそで発揮しろ。自分のクラスでやれ。
    「なんでこんなところで無駄な握力を発揮するんだもういいだろ。……力強いなおい」
    「僕意外と握力あんだよねー、常日頃からコントローラー握ってるからかな?」
    「あっ、くそっ」
    「素が出たねえ」
    「実況するな馬鹿」

     あえなく力が及ばなかった俺は抵抗虚しく伊佐の膝の上に乗りあげる形で収まった。咄嗟に退こうにも両腕で抱きつかれて振りほどけない。足で踏ん張れたらよかったのだが、この長身おばけは足も長い。必然的に俺の足が床から浮くのだ。無念。

    「無駄な抵抗はよせー」
    「立てこもりの強盗犯相手みたいに言うのは勝手だが、どちらかというと犯罪者側は伊佐だからな」
    「嘘でしょしゅーちゃん?! そんな風に見てたの?!」
    「ねえふたりともいつもこんな漫才みたいなことしてるの? 部室だけじゃなくて?」
    「共犯みたいにいうな、どう見ても伊佐の単独犯だ」
    「いやどうみても共犯でしょ……」

     まてちょっとお前のその認識を正さないか、と思ったところで柊迫がぱっと顔をあげた。視線の先には教室の壁時計。

    「あっ、もうすぐチャイム鳴るからおれそろそろ行くね。秀さん席ありがと、がんばってね」
    「……ああ、」

     頑張れって何をだ。伊佐の膝の上からの脱出をか。
     来るときもするりと猫のように来た後輩は、去り際も気まぐれな猫のようにさっさと去って行った。あいつも上級生の教室でこれだけ自由に出来るんだから、自分の教室でもなんとかなるんじゃないかとすら思う。

    「しゅーちゃん背中あったかくなってるねえ。窓際だから?」
     俺を抱きかかえたまま背中にぺたりと顔をつけた伊佐の頭を軽く小突きながら、そうなんじゃないかと適当に相槌を打つ。

    「そんなことより早くおろしてくれ」
    「うーんできない相談だねえそれは。チャイムが鳴るまでこのままだね」
    「バスケやって暑かったんじゃないのか」
    「バスケやって暑かったのと、日向であったまったしゅーちゃんであったまるのはまた別なんだよ」
    「どういう意味だ……。いや、わからなくていい」
    「解説する?」
    「いらん」

     えー、いけずぅー。でもそこがすき。と訳の分からん寝言を聞き流しながら、壁時計を確認する。予鈴まであと2分半ほど。抱きつかれたまま面倒になった俺はいい加減肩の力を抜いた。俺も営業終了ってことでいいだろう。

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