俺のゆりかごはお前なのだから墓場まで付き添ってもらわないと許せない。 馬の背は艶やかな見た目に対し案外固い。筋肉の動きは鞍をこえて伝わり、しっとりした毛皮ごしにまざまざと熱を寄こす。
すっと伸びたまっしろな首に右頬を預けて、国広は隣を走る男を眺めた。
二本の手綱を引くその手には戦装束に合わせた黒の手袋が装着されているが、ぐっしょり濡れていることを知っている。暗色に負けて見えないだけで、国広の腹から出た赤いものがこびりついているのだ。
滑って煩わしいのか、何度も握り直している様子が見て取れる。
外してしまえばいいだろうに――いや、素手は素手で手綱を握るには適さない訳だが――血濡れの真っ黒な手はそのままで、彼と国広、それぞれを乗せた二頭の馬を操り続けていた。
「ちょ、ぅぎ……」
1970