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    sakananjaja

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    sakananjaja

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    セックスしないとの部屋
    ルカ→→→魁
    後半はR18

    セックスしないと出られない部屋 [ 前編 ]「なんなんだこの下品な部屋は」

    白い硬質な壁、塵一つない清潔な床。
    皺を許さないと言わんばかりにぴんとシーツが張られたベッド。

    そして壁に浮かび上がる“セックスしないと出られない部屋”の文字。ピンク色だ。


    低級の任務だからと遣わされた任務。
    指定地点である廃校、その1室に踏み入れた瞬間、2人はこの部屋に閉じ込められた。長い年月放置され砂ぼこりを被っていた教室があっという間に美しくも生活感のない純白の空間に変化した。
    割れていた窓は消え去り、ドアも見つからない。怪異の仕業と知らなければ発狂しそうな空間だ。

    「まじでヤバいじゃん…なにこれ」

    今にも吐きそうな、震えた声で呟き魁斗はしゃがみ込んだ。

    「え?だっておかしくね?事前調査の報告書と違くない?」

    「そう…だね」

    踏み入れた対象の潜在意識に触れ、解錠方法を変化させる部屋。

    「潜在意識で、セックスって」

    ちらっとルカを見る。
    その視線にルカは困ったように眉尻を下げる。「だよなぁ、わけわかんねぇよな」と魁斗は溜息をついた。

    「女の子選びたい放題のおまえは…んなセックス願望無さそうだし、おれは身長伸びねぇかなぁって念じながら入ったし」

    そうやってブツブツと地面に零した後、はっと息を吸い込みながら勢いよく顔を上げた。

    「ぁ、や、やば…」

    「どうしたんだい?魁斗」

    「お、おれ、昨日…エロ動画見ちゃった」

    顔を真っ青にしてルカを見上げる。
    唇の隙間から「ごめん、おれのせい?」と呟いたが、ルカはもう視線を合わせようともしない。

    ただ押し黙って壁に浮かんだ文字を睨んでいる。

    怖い。怒っている。
    多分、おれのせいで…。

    ごめん、と謝ろうと口を開きかけた瞬間、ルカが突然壁に殴りかかった。
    ドン!!!と低音と微かな振動が部屋を震わせる。

    魁斗は驚き体を跳ねさせた後、ぴくりとも動けなかった。

    こぇえええ、こいつ突然キレんのマジ慣れねぇええええ。

    「くそ!」吐き捨てて今度は怪具を抜き放つ。はっと息を呑み、魁斗はその背中にしがみついた。

    「やめやめやめやめやめーーー!明らかにかってぇ壁に斬り掛かって、その怪具折れでもしたらどーすんだよ?!」

    「怪具が折れたら素手で戦う」

    「そーゆー問題じゃねぇよ!」

    魁斗の叫びに剣を握る手を震わせ、ルカが押し黙る。
    怪具を小型化したところを見届け、そっとその背中から離れると、魁斗は部屋の中を改めて見回した。

    正方形。窓もない殺風景な部屋。
    真ん中に鎮座したベッド。仕掛けがないか近寄って枕やシーツを捲るがなんの変哲もない。ベッドサイドの小さなサイドテーブルにはコンドームとピンクのボトル…恐らくローションが鎮座している。
    下の段の開き戸を開ければ冷蔵庫になっているようで見覚えのあるミネラルウォーターのボトルが2本用意されていた。

    マジかー…マジでセックス部屋じゃん。
    漫画のシチュエーションじゃん。
    ネットで見たことある〜。

    けど、相手がルカとか…無理だろ。なんでこんなことになってんだよ。

    セックスってどーやんだよ。

    思わず制服の前を握り、その下の腹を撫でる。他人に体を見せて、密着して、男同士って多分ちんこをケツに入れんだろ?ルカに?お、おれに?

    血の気が引いていく。
    無理すぎる。

    ちらりとルカを覗き見れば、まだ壁を睨んだまま動かない。
    明らかに怒りに燃えた背中。怖くて声を掛けられない。けれど、多分、この状況を作ってしまったのは自分だ。
    昨日、貯まったポイントで狙ってたエロ動画を見てしまった。実は朝も見た。だって48時間限定レンタルだ。帰ってからも見ようと思っていた。

    仕方ないだろ健康な男なんだから。

    さっきうっかり口走ってしまったのはヤバかった。
    絶対ルカを怒らせた。

    どうしよう…



    自分のせいだ…とルカは唇を噛み締めた。潜在意識、魁斗とセックス…。

    ルカは、魁斗に密かに想いを寄せていた。

    同じ境遇に身を置く理解者。
    性格はまるで違うが無防備に自分に甘え、頼り、時に鋭く、遠慮なく、正直な言葉をぶつけてくる。
    よく笑い、よく泣き、自分に無いものをたくさん持っている。気が付けば、性別の壁を越え彼に惹かれていた。

    自覚してしまえば、次は触れたい、伝えたい、許されたいと欲が湧いて出る。

    いつ、伝えようか。
    魁斗は驚き、気味悪がるかもしれない、怒って否定するかもしれない。
    なんと、伝えようか。
    そうやって、チャンスを伺い、この甘やかな苦しみに日々浸かっていた。

    それなのに

    全部奪い去り、強引に結論付けるかのような“セックス”?

    丁寧に言葉を尽くし、態度を見せ、許してほしかった。
    それをぶち壊される怒りにルカは震えていた。

    魁斗を傷付けるわけにはいかない。
    なんとか事に及ばず部屋を出る手段は無いのか。

    「な、なぁ」

    遠慮がちな声が背中にぶつかる。
    振り向かずにいると紙の擦れ合う音。

    「この部屋、あと1回解錠されると限界がきて消滅するって書いてあるし」

    知っている。何度も読んで確認した。

    「や……やる、しか、ねぇじゃん」

    「それは!!」

    振り返れば、魁斗が怯えた顔でこちらを伺っている。

    「悪かったって、お、怒んなよ」

    「魁斗のせいじゃないよ」

    「だとしても、いつまでここにいるつもりだよ。トイレも食事もなんもないここに…おれと…すんの嫌なのは、わかるけど…」

    俯き、視線を外し魁斗が零す。

    「おれに、責任がある…から、おれが、お、女の子役…でも…いいから」

    「き、君は…っ!部屋を出る為ならそんなことをすると言うのか」

    咄嗟に出た言葉に、魁斗がかっと顔を上げた。「おまっ!おれがどんな気持ちで!」腕が伸び、ルカの襟首を掴む。

    「仕方ねぇだろ!じゃあどうすんだよ!」
    「魁斗はいつも諦めるのが早いって言っているんだ!どうして自分が折れて終わりにしようとする!」

    自分の想いはこんな形で砕かれるはずではなかった。

    「おれだって嫌だよ!!男とセ…セックスなんて、無理に決まってるけど、やるしかねぇじゃん!!」

    魁斗の叫びに目の前が真っ暗になる。

    襟首を掴むその腕を払い除け、逆にその胸元を掴む。自分を抑えることができない。
    勢いに身を委ね、歪む唇に噛み付いた。

    「んぅ!!?」

    悲鳴なのか、文句なのか、何かを訴えようと開いた唇に舌を差し込む。歯がぶつかり嫌な音を立てた。

    暴れる魁斗の腰を引き寄せ、体を密着させれば嫌がるように魁斗が暴れるが、獲物を仕留めるように酸素を奪い、追い詰める。
    酸欠になったのか、次第に魁斗の抵抗が弱まってゆく。

    「っんぁ…ふっ…」

    鼻で呼吸することを忘れ、僅かに開いた唇の隙間から必死に息を吸い、顔を真っ赤にさせてゆく。

    「や、やめっ」

    唇を離すと、全身で呼吸をしながら魁斗が弱々しく訴えた。あまりに初すぎる。
    駄目だとわかっているのに、どうしても体が反応してしまう。

    「キスだけで、こんなになるのに…これでも、まだ、セックスをするって言うのか?」

    「ぅ…ぁ」と言葉にならない呻きを漏らし、魁斗が視線を彷徨わせる。

    「でもっ…おれのせいで」

    「魁斗のせいじゃない、俺が魁斗を抱きたいと思ったからだ」

    正直に伝えると、それまで遅緩していた魁斗の呼吸がぴたりと停止した。

    「は?なに、冗談」

    頰を引き攣らせながらゆっくりと顔を上げる。
    その表情が全ての答えのようでルカの心臓は握り潰されたスポンジのように瑞々しさを失い、カラカラに乾いた。

    そうして、全身を強張らせた魁斗に、短く告げた。


    「魁斗…君が好きだ」

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