類えむ、火星に行って〜さめさんの願いさめさんには、願いがあります。
《推しカプに宇宙に行ってほしい》
その為にさめさんは、NASAで勉強して宇宙船の制作にも協力しました。
「制作にも関わったならテストも担当しなきゃね」
そのくらい熱い気持ちだったのです。
さめさんの努力の甲斐もあって、類くんとえむちゃんがさめさん作の宇宙飛行船に乗ってくれる事になりました。
ロケットで旅する2人がたどり着いたのは火星。
えむちゃんは、見知らぬ新天地にワクワクを隠せません。あちこち気になるものを見に行っては、類くんにも見せようとひっぱっています。
類くんも、念の為周りに気を配りながらも、瞳の奥にあるワクワクを隠せません。
さめさんは、2人の様子を遠隔カメラで見ていました。
「すごいね、類くん。見た事ない景色ってワクワクするね」
「そうだね、ひょっとしたら未知の植物なんかもあるかもしれないね」
楽しそうな2人の会話に、さめさんも嬉しそうです。
しばらく探検を楽しんでいた類くんとえむちゃんでしたが、ふとえむちゃんが立ち止まりました。
そして、ぽつりと
「司くんと寧々ちゃんもいたら、もっと楽しかったよね…」
そう呟いたきり黙りこくってしまいました。
えむちゃんの言葉に、思わず類くんも寂しげな顔になります。
「そうだね、えむくんとの探検はとても楽しいけれど、2人がいないのは寂しいね」
さめさんはとても焦りました。
推しカプに宇宙に行ってもらいたいとは思っていましたが、悲しんでほしい訳ではなかったのです。
急いでワンダショのメンバーを集めて、光よりも速く類くんとえむちゃんがいる火星に連れていきました。
さめさんの目的は推しカプに宇宙に行ってもらう事だったので、あらかじめ発見していたワープを利用したのです。
再会を喜ぶワンダショでしたが
「せっかく火星に来たのだからここでショーをしよう」
そんな司くんの言葉で、急遽『ワンダーランズ×ショータイムサプライズステージin火星』を開く事にしました。
楽しげなショーの様子に、今まで隠れていた火星人達がステージに集まってきます。
本来、世紀の大発見とも言える状況ですが、今はショーの最中。
ここにいるのは、キャストとお客さん。ただそれだけです。
仲間とショーをしている類くんとえむちゃんは、今までで一番の笑顔を見せてくれます。
さめさんは気がつきました。
(2人を笑顔にしてくれるのは、みんなといる時間なんだな…)
そうして心に決めます。
(今度から、推しカプではなく仲間で宇宙に行ってもらおう…)
新しい野望を見つけたさめさんの瞳はメラメラと熱く燃えているのでした。
めでたしめでたし