没ネタ「僕は興味があるなぁ。同じ個体の男士を好いている主、初めてなんだ」
「…主と刀の昵懇の関係なんて珍しくないですよね」
「うん。だから同じ個体の僕だから気になって」
まずいな、と彼女は思ったけれど、既に桑名江の見えない瞳はこちらを見ていた。見えないけれど分かるのは、好いている桑名と同じ個体だからだろうか。桑名江は手をすり、と彼女の頬に寄せる。避ければ良かったのだが、彼女は避けなかった。否、避けられなかったのだ。
「あの…」
頬に寄せた手は首筋を撫で、肩に乗り、腕を滑り落ちて彼女の手を掴んだ。熱を持った桑名江の手に気をとられていた彼女は壁際に追い詰められたことに今気付く。首筋に吐息がかかる。桑名江の唇が押し付けられたのだと気付いた時には既に遅かった。足の間に桑名江の足が押し込まれ、壁に貼り付けられてしまった。
「ちょっ…!」
「僕も同じ桑名江だよ」
かぷ、と首筋に噛み付かれた。
「ひっ」
「どんな反応をするのか」
ぞわぞわと彼女の背中に何かが走り抜けた。耳介にちゅ、と口付けをされる。絡めた手と反対の桑名江の手が彼女の腰を抱き寄せた。舐め回すように腰を撫で、するりと臀部の膨らみに手を触れる。ビクッと跳び跳ねる彼女の肩。臀部を撫でる手が下着へと侵入を始める。
「やめ…ッ」
「そこまでだよ」
背が粟立つような声が聞こえたと同時に桑名江の顎にぎらりと鈍く光る切っ先が添えられていた。聞いたことのない声に彼女は一瞬混乱する。ぐるりと視線を巡らせた彼女が見たのは、桑名江の背後から本体の刀を構えた彼女の本丸に所属する桑名だった。
「うちの主に何しとる」
いつもの声より随分と低い。完全に戦闘モードだということはすぐに分かる。