劣等感お話を読む前に(キャラ解釈違うと思うので、簡単に書いています。)
設定:
スティーヴ(男 19歳。ちょっと(だいぶ)天然? アレックスが好きだが、自分の気持ちにきづいてない。)
アレックス(女 18歳。まっすぐで優しい。素直。いろいろあって感情を表に出さないようにしてる。スティーヴのことについては???)
サニー(男 スティーヴと同い年。釣りが得意。エフェとは恋人関係。毒舌。ちょっと無鉄砲なところあり。男らしい。)
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僕の左腕が義肢じゃなきゃなぁ…。
釣りをしながら僕はふとそう思った。
以前までなら、そんなことを考えることはなかった。自分のこの身体のことは自分がバカなことをした結果なのだから、仕方ないと諦めていた。
魔術とポーションを使って、ほとんどホンモノの左腕と変わりなく動かせるのだ。見ためもメタルでカッコいいし、成長するたびに新しいピカピカの腕になる。だから、義肢の左腕も悪くないと思っていたのだ。
でも最近、もし自分の左腕が…本当の左腕だったらと考えることがある。
原因は分かってる。
ガサガサと草をかき分ける音がして、原因が現れた。
僕は思わず、眉をひそめる。
「サニー、良かったら俺も隣で釣りして良いか?」
これが僕が義肢について思いを巡らせるようになった原因、スティーヴだ。
2週間半ほど前、西の洞窟で足の骨を折って動けなくなってるのを、アレックスが見つけて連れ帰ったのだ。
「…構わないよ。」
わざと不機嫌そうに応えたのに、気づいてるのかいないのかスティーヴは
「ありがとう」
と言って僕から少し離れた場所に杖を置き、折れた足を庇いながら座り、ひゅんっとウキを川底にむかって投げて、じっと水面を見つめてる。
長身で均整のとれた身体つきに、柔らかそうな濃い茶髪、中性的で優しげな顔立ち。加えて青みがかった紫の瞳…。カイやエフェいわく魔力をおびた瞳。いわゆる「魔眼」だそうだが、本人は自覚がないらしく「魔眼」を使えてないそうだ。
「魔眼」はともかくとして、さぞモテるんだろうなぁと思う。
僕だって、義肢じゃなきゃもっと身長だって伸びただろうし、身体つきだって整ってただろう。
別にモテたいわけではないのだが、「同い年」というのがどうもにも良くない。勝手に自分と比べてしまい、勝手に劣等感がわいてくる。
と、そんなことを考えてる場合じゃない。
ウキが沈んだ瞬間を逃さず、僕は釣り糸を引き上げた。
エンチャントされた本が釣れる。
正直、またかと思った。
エンチャント本は家にうなるほどあるから、要らないんだけど……。
僕が思っていると、
「サニーは、釣りが得意だって聞いたんだが…」
スティーヴが話かけてきた。
「本当に得意なんだな。エンチャント本を釣れるなんて。」
「……別に、タイミングよく竿を引っ張るだけさ。」
僕がそう言った時、ちょうどスティーヴのウキが沈んだ。
スティーヴはあわてて引っ張るが、ウキの先には何もついてない。
こいつ下手くそか?
「あー……サニー?」
「なんだよ。」
「良かったら釣りを教えてくれないか?その……どうしたら釣れる?」
スティーヴは少しおそるおそると言った感じで尋いてくる。
「……ウキが沈んだ瞬間に釣り竿を引っ張るんだよ。」
僕が応えると
「そうか……。ウキが沈んだ瞬間……。」
と妙に納得した顔をして、また水面にウキをなげた。
今ので分かったのか?
思いながら見てると、またスティーヴのウキが沈んだ。
「おりゃ!」
なぜか叫び声をあげて、釣り竿を思いっきり引っ張っる。
……かかってない…。
スティーヴは、なんでだ…という顔をしている。
「タイミングが遅すぎる」
僕が言うと
「でも、気合い入れたぞ?」
…いつ僕が気合いを入れろと言った…。
「僕はウキが沈んだタイミングで釣り竿を引き上げろと言った気がするんだが…。」
「気合いは?」
「…入れなくて良い」
僕の答えにスティーヴは困ったような顔をする。
「沈んだタイミングで気合いを入れて釣り竿を引いたら良いんじゃないのか?」
…気合いからはなれろ。
「あのなぁ、タイミングだ。気合いはいらない。はっきり言って、全然。タイミングが大事なんだよ。」
僕が言うとスティーヴはうーんと唸る。
「タイミング…」
分かってなさそうだったので、
「ウキをよく見ろ、あと水面も。水面が少しブクブク泡立ったら、そのあとウキが沈む。そしたら引っ張れ。」
事細かに説明すると
「ありがとう。そうか、水面が泡立つのか。気づいてなかった。」
魔眼って視力は出てないのだろうか…。
「もう一回やってみるよ。」
スティーヴはそう言い、また水面にウキを投げた。
僕も釣りを再開する。
今日は鮭を食べたいから、鮭が釣れたら良いなと思いながらぼーっとしていると
「サニー、見てくれ!水面に泡が!!」
魚が来てるんだろ…。
「引っ張れよ。」
声を掛けると
「えいっ!」
とやはり気合いを入れて、スティーヴは釣り竿を引く。
魚の骨が釣れた。
「…俺、釣り下手なのかな…」
…残念だけど、そうだろうな…。思いながら、
「まぁ、骨が釣れる確率も低いから…。逆にすげーよ…。」
とフォローしておく。
「ありがとう、サニー。…しかし、川や海の中にスケルトン系のモンスターは居ないのに、なんで骨が釣れるのかな…。不思議に思わないか?」
あぁん?
「スティーヴ、何言ってんだ?今釣れた骨は「魚」の骨だろ。スケルトンの骨じゃない。」
僕は当たり前のことを言ったつもりだったが、スティーヴには衝撃的な事のようだったようで
「えぇっ!?」
と驚いて僕を見た。
「サニー…俺、ずっと釣りで取れる骨は、スケルトンの骨だと思ってた…。」
…なんでやねん。
「お前、今、自分で川や海にスケルトン系のモンスターはいないって言っただろ。いないって事は別のモンスターか、別の生き物の骨だ。魚、剣で倒した事ないのか?骨をドロップするだろ?」
僕が言うとスティーヴはこくこく頷いて
「確かに。確かにそうだ。…サニー、ありがとう。長年の謎が解けたよ。」
って言うか、何故スケルトンの骨と思ってたのか…その方が謎だが。
スティーヴは骨をしまい、再びウキを水面に投げる。
おっと、僕のウキも沈んだので僕は引っ張る。
よーし、鮭だ。みんなの分も。
そう思って僕も再度ウキを水面に投げ入れた。
割とすぐ泡が立ち、また鮭が釣れた。
いい調子だ。
機嫌よく釣りを続けていると
「サニー、また水面に泡が!!」
いちいち報告せんで良い!
「引っ張れ!」
僕が言うとスティーヴは勢いよく釣り竿を引き上げた。
今度は無事、タラが釣れた。
「やった!!タラが釣れたぞ。サニー見てくれ。タラだ。」
見てる、見てる。
スティーヴは嬉しそうに僕の前に手を出してくる。
……ハイタッチか?
しっぽをふってる狼みたいな嬉しそうな顔で僕を見てきたので、僕は思わずハイタッチをし返す。
「うぇーい!」
「えーい。」
スティーヴが叫んだので、つられて僕も叫ぶ。
「教えてくれて、ありがとう。サニー。」
スティーヴはにこにこしながら僕に礼を言い、続けて
「よーし、もっと釣るぞ。」
とまたウキを水面に投げた。
なんだろう。
同い年だけど僕、こいつに劣等感なんて抱かなくて良いんじゃないか……。
釣りの仕方もあまりよく分かってないし、魚の骨をスケルトンの骨と勘違いしてるし。
多分、剣で戦ったらこいつのほうが強いんだろうけど、別にそんなことどうでも良い気がする。
僕が思わずスティーヴをじっと見ていると、気づいたスティーヴは
「サニー、どうした?疲れてるのか?」
と尋ねてきた。
「……いや、別に。少しずつ、うまくなると良いな。」
僕は目線を自分のウキに戻し、再び釣りを始めた。
「サニー、優しいな。ありがとう。頑張るよ。」
……。
どうして、こいつこんな恥ずかしい言葉をさらっと言えるんだか……。
僕はちょっとだけスティーヴの顔を見て、視線を戻す。
おそらく、僕は僕で良いんだろう。
取り合えず釣りに集中するか……。
僕はちょっとだけ軽くなった心で釣りを再開した。
その後二人で、タラや鮭を合計で20匹ほど釣って、一緒にみんなで住んでいる家に戻った。
カイやズリがそれを調理してくれ、食堂で食べる。
ズリがアレックスの前に焼鮭を出し
「今日は、スティーヴとサニーが鮭を釣ってきてくれたのよ。」
と言うとスティーヴは
「アレックス、そうなんだ。これ、俺が釣ってきたんだ。」
と今度は褒めてほしそうなオオカミみたいな顔で、アレックスに言う。
その報告、いるか??
アレックスはアレックスで素直なので、
「まぁ、すごいわ。スティーヴ。あなた、釣りも上手なのね。」
とスティーヴを褒める。
スティーヴはすごく嬉しそうだ。
こいつもしかして、アレックスのこと好きなんじゃなかろうか。
アレックスが一口鮭を食べて
「とっても美味しいわ、スティーヴ。新鮮な鮭が釣れたのね。」
再びスティーヴを褒めると、スティーヴは照れて
「その……実は、サニーが釣り方を教えてくれたんだ。」
と一言。
言わなくて良い!
その言葉にアレックスが
「へぇ、サニーが……。」
と少し驚いて呟く。
余所者とは親しくしない僕が、物を教えるなんてと思ってるのだろう。
「隣であんな下手な釣りを見せられたら、教えないわけにはいかないからだよ。」
毒づいて見せるが、僕の右横でご飯を食べているエフェはくすくす笑ってる。
信じてないな……。
「そうなのね。」
「サニーはすごいよ。俺、下手だったんだけど、どうしたら釣れるかきっちり教えてくれて。夕方まで一緒に釣ってくれてたんだ。」
スティーヴは言う。
「たまたまだ。」
夕方まで一緒だったのは、意図的ではないことを伝えると
「でも、途中で帰ることもできたのに、結局最後まで一緒にいて、一緒に帰ってくれただろ?一人で釣るのは心細いし、助かったよ。」
……調子狂うなぁ……。
「まぁ、そう思いたいならそう思っときなよ。」
言い捨てて、僕は鮭を食べるのに集中することにした。
みんなにこにこ笑ってる。
その日の鮭は、いつもより少し美味しい気がした。
あとがき・・・・・・
メインで書いてる小説の草稿の一部なのですが、スティーヴがあまり頭よくなく見えるかも?とちょっと懸念してます。頭よくなくはないです。サニーは毒舌ですが。
ただちょっと天然?
ちなみにスケルトンの骨と思ってたのは、私です。
後、JAVA版では骨粉がドロップされるようで、ちょっと訳わからなくなってます。(なんで骨粉が……と。)それから、剣で骨はレアドロップです。
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<すごく感想欲しいマン……。
もし、面白いと思っていただけた方いらっしゃいましたら、良かったらよろしくお願いします。
何の反応もないのは、意外ときつかったので;;