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    2017rinrin

    @2017rinrin

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    2017rinrin

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    高校生活最後の思い出に同居ごっこをする友達のうななな話です。
    時間が経ちすぎて、もうどうしようもないので供養します。

    うなななが同居する話1「二人暮らしをしてみようよ」
    放課後、僕の席まで来た大樹が笑った。

    「ここが俺たちの新居」
    眉難市の中でも少し賑やかな街にある、ごく普通のマンション。その部屋の扉を開けて大樹は「さあ、どうぞ」と言う。
    「冗談だと思ったから、僕はいいねって言ったんだよ」
    「七緒の家の人はダメだって?」
    「別にいいって」
    「じゃあ問題ないだろう?」
    先にワンルームだとは聞いていたけど、大樹が選んだ部屋にしては「二人で住むには狭いところ」だと思った。靴を脱いで中に入り、まず窓を開けた。
    「本当に大樹がここに住むの?」
    「借りちゃったし。七緒も住むんだよ。」
    「冬休みの間だけね。」
    今年の眉難高校は来週のクリスマスイブに終業式があり、クリスマスから冬の長期休暇に入る。その間、僕と大樹はこの狭い部屋に二人で住んでみることになった。今日はその下見と、作戦会議を予定していた。
    気に入った?と聞かれたので住んでみないとわからないと返した。大樹は乗り気でなによりと笑い、部屋を一通り見た後に窓を閉めた。
    「じゃあ、さっそく買い出しに行こうか。いろいろ必要になるだろ。」
    「今から?」
    「今日買っておいて、冬休み初日には住めるようにしてもらう。うちの人に頼んで、先に全部整えておくからさ」
    「2人で暮らすのに他人がセッティングするんだ。」
    「2人で暮らすって言ってもおままごとなんだからいいんじゃない?俺たちは終業式が終わったら、そのまま前から住んでたみたいにここに来るんだよ。面白いだろ」
    好きなものは庶民的なくせに、彼は時々涼しい顔でスケールの違う話をする。感覚のズレには鈍いらしく、なんてことないように言ってみせる。
    「まぁ、ちょっと笑えるかな」
    「決定だね」そう言って彼は、マンションの前まで車をまわすようにどこかへ連絡した。

    (略)

    「全部1から揃えるの?」
    「2週間はあるだろう?七緒と全く新しい生活をしてみたいんだよ」
    「僕にそんな金の余裕はないよ」
    「大丈夫、ここに魔法のカードがあるからね。」
    大樹が薄い財布から黒いカードをちらりと見せてくる。
    魔法だなんて、すごいことを言う。少し前に僕は魔法使いをしていたことがあるけど、大樹の手にあるカードは、それとわけが違うのに。眉をひそめると彼はいいんだよと言い、涼しい顔で、高校生には到底払えそうにない買い物をした。
    僕と大樹はいるもの、いらないものを話し合いながら買い物をすすめた。大樹が3つカートに入れるたび2つを戻すペース。大樹はその度に笑った。もう金額なんか見ていなくて、部屋に入るのか、それだけを心配した。
    最後に寄った雑貨屋で僕は緑色の石が入った星のチャームを。大樹は薔薇のチャームを買って、これから住むあの家の鍵につけた。

    (略)

    これからよろしくお願いします。と言うと、そうじゃないだろ?と言われた。
    「あぁ、そっか。ただいま」
    前から住んでたみたいにという、大樹の謎のこだわりを尊重し、ポケットから鍵を出して扉を開けると彼は嬉しそうに「ただいま」と続いた。
    部屋は先日買ったものがセッティングされており、今朝学校へ行く前に運んでもらった着替えの入ったスーツケースだけが不自然に置かれていた。
    「盗聴とか盗撮されてないよね?監視カメラとか」
    「なに?七緒おれのこと疑ってるの?気になるなら業者の人でも呼ぶ?」
    「冗談だよ。大樹のこと、信じてるよ」
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    2017rinrin

    MOURNING最後です。ここの文章がどうしても消せなかったので、供養という形でアップロードすることにしました。
    うなななが同居する話3(終)元旦の翌日の晩、僕は大樹より先にもう一つの家に帰った。
    部屋を開けるとひんやりとして少し埃っぽかった。暖房を入れる前に寒いのをしばらく我慢して、窓を開けて換気をしながら湯を沸かす。家で洗濯を済ませた着替えをタンスに詰め、コーヒーを入れたその香りで、そういえば僕は緑茶の方が好きなんだったと思う。この家で緑茶を飲むときは大樹がいつも淹れてくれてたんだった。だから僕はお返しだというようにコーヒーを淹れる。それが癖になっていたようだ。
    たまにはと、砂糖を入れて甘くした。酷く眠くなる。飲み終えて横になり、瞼を閉じた。このまま眠ってしまいそうだ。
    例えば、大樹と二人でこの部屋に閉じこもって鍵を閉めて、ずっと外に出ずにいたらどうなるんだろう。もうどこにも行かないようにしようねと笑って、今日は月曜日火曜日水曜日と、家事分担表を指で指す毎日。困った大人たちは怒るかな。かわいい後輩たちは心配するかな、協力してくれるかな。目を開ける。棚と床の間に見えるホコリ。僕たちはちゃんとそれだけの日数この部屋で二人で生活したんだ。二人で掃除して取り除かなくては。ドンドンと戸を叩かれて、それに耐えられても家賃の支払いがストップして、電気もガスも水道も止められたら。そうしたら、もう無理かなあ。太子くんなら物知りだから何かいい案を出してくれるかも。あぁ、でも新学期が始まったら部室にお菓子を届けないと。あと、卒業式には出たい。でもそうしたら大人になってしまうかもよ?やだなあ、だって大人になったら大樹は……。
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