平穏な朝体格差をまざまざと意識させられるのは海都で地べたを這ってでも生き延びていた子供の頃以来かもしれないな、と、苦い記憶を思い出してしまったサンクレッドは、背後から自分を抱きしめるウリエンジェの腕を指先でつつく。
だが、ウリエンジェの意には介さないようだ。
頭頂部に乗っている顎をどかそうと頭を左右にふるふると揺らす。
それでもまったく、意に介さないときた。
思慮深さと優しさの内に秘められているウリエンジェの頑固さに苦笑し、茶化すようにサンクレッドは片眉と口端を上げる。
「そんなに熱烈に抱き締められたら朝飯が作れないだろ、大先生は腹減ってないのか?」
コテージ風の大きな宿の個室に備え付けられているキッチンに並べた野菜や香辛料は、この街の特産品で先日に商人から購入した品々だ。
2027