【悲報】陰キャ腐男子、イベントで入手した最王の同人誌(R18)害悪ゲーマーに見つかり開廷してしま「はぁっ……はぁっ……!」
大荷物を持って帽子を被った陰気な男が1人マスクの下でニヤニヤとしながら呼吸を荒らげ、急ぎ足で飛び込み乗車をした。
(ひ、人がすっごく多いし買うのすっごく緊張して頭の中がずっと真っ白になっちゃってたけど…が、頑張ったお陰で最王のえっちな本…た、沢山買えた…!お、王最も何冊か手に入ったし…は…っ早くお家に帰って読みたい……ひとり遊び…し、したいっ…!)
大荷物を持って電車を降りれば、挙動不審な動きで何とかタクシーを捕まえて乗り換える。
傍から見ればこれから何か大きな事件を起こしそうな不審者に見えるだろうが、今の彼に人目を気にする暇なんてなかった。
大きな鞄の中身は爆発物や凶器に見えるかもしれないが蓄えた貯金を惜しげも無く裏で流し、偽造の身分証明書を用意してまで手に入れたBLのエロ同人誌である。
ある意味犯罪者なのは間違いないだろう。
我慢出来ずどこかの公衆トイレで1冊2冊位は読もうと何度も考えてはいたが、必死に理性で耐えて帰路へと向かったからか、そちらに意識が漂い続けるのもおかしい事ではないのかもしれない。
高層のマンションの前に着けばお釣りも貰わず、飛び出すようにタクシーから出した。
エレベーターに乗ればまだかまだかと足踏みをしつつ、ドアが開けば号室の扉の前に急いで立ち塞がりガチャガチャと忙しそうに鍵穴を回す。
「あっ…あれ……?」
何故か扉は開かなかったのでまた回すとカチャリ、と音を立てて開いた。
「(おかしいな……僕鍵掛けて出かけたはずなんだけど……急ぎ過ぎて忘れちゃったのかな……?)」
そんな事を薄々と考えつつ、頭の中は今日買ったエロ同人誌の事で頭がいっぱいな彼は靴も揃えずに早足で自室へと飛び入った。
「ぅえっ……………………!?」
想像にも無かった光景に目を見開き、思わず大きな声をあげた。
~♪~♪~♪
「はー!?こいつ絶対チーターだろ!!!!」
自室のベッドにはいつもの見慣れた小柄な彼が寝転がり、大きな独り言を言いながら大音量でスマホゲームをしていたのだった。
『アッ…………えっ……………??』
予期せぬ事態に全身が金縛りにあったかの如く強ばってしまい、持っていた荷物をどさり、と床に落とす。
その反動で顔隠しに被っていた帽子がずり落ちた。
「あ、サイハラちゃんおかえりー。さっきまでどこ行ってたの?連絡しても全然出てくれないから来ちゃったよ。」
『ぅ…うわぁああぁあぁあ!?!?!?お、おおおおおお、おおおオウマくん!?!?!?ぼ、ぼぼぼ、ぼく鍵かけて出たのにおかしいとおもったけどっ…あ!?!?も、ももも、もしかしてまたぴ、ピッキングしたの、!?!?そ、そそそれ、ふ、ふほっ、不法侵入だよ!?!?!?』
帰宅したばかりの年齢詐称した挙動不審な男が軽犯罪を指摘しながらパニック議論の如く騒ぎ立てれば、小柄な男はその煩わしさに目を細める。
四六時中恋人の事を想う程に溺愛している彼だが、少し前までならこういう状況はとてつもなく嬉しかった。
…しかし今は違う。
彼等が出会うきっかけとなったダンガンロンパというタイトルに出てくる“王馬小吉”というキャラクターは、現状、挙動不審に陥っている陰気な男の人生において一番の推しであるが、そんなオタクの彼がリアルで溺愛している目の前のゲーマー…そしてオリロンとして産み落とした“王馬小吉”の親張本人が何故か敵視してしまっているのだった。
公式によって改変されてしまった性格や言動、ストーリー内での立ち回り…そして恋人の心を奪ってしまっているという強過ぎる嫉妬によって苦手を越えて完全に地雷と化している状況である。
ある意味修羅場とも言えるが、問題点はそこではない。
最初は純粋に自分の好きな人が作った“王馬小吉”というキャラクターを愛でていたが、元々ミステリー小説を読むのが趣味である彼がネットサーフィンによって出会った二次創作小説で完全に腐敗してしまい、BL二次創作をコミュニティサイトで探るに飽き足らず自分でも執筆する様になってしまった。
「最原×王馬」の大手文字書きと言われる程になった彼だが、電子書籍では読む事が中々叶わない「BL同人誌」を通販…ついには自分の足を使って買い漁り始めてしまった事により、PCやベッド周り等…家探しをされると非常に不味い状況に陥ってしまったのだ。勿論自分で執筆するモノの殆どが劣情を綴った成人向け作品である。ここまで来ると年齢詐称は当たり前という認識なのかもしれない。
…つまり性愛の目覚めによって、バレてはいけないモノが沢山積もっている状況である。
優等生である小柄な彼は同じくダンガンロンパファンではあるモノの、ゲーマーというだけで二次創作やファン交流はそこまで興味はない。
勿論恋人がアニメオタク寄りだったり“王馬小吉”推しだったりは気に食わずとも認知しているが、『そんなこと』にまで興味関心があるなんて知るわけもなく、BL二次創作エロを摂取する為に年齢詐称してる彼を普段から子供扱いする始末だ。
「あーもうウルサイなー。オレの個人情報とか散々漁っといて今更何言ってんの?………ていうか何その大荷物。」
『!?!?!?』
誤魔化す為にもどうにかして外出するプランを必死に考えてる最中、大量に持ち帰った“ソレ”についてド直球で聞かれてしまい、陰気な男の額から一瞬にしてブワっと冷や汗と小さなうめき声が漏れ出し始める。
『アッアッ、こ、ここここ、これはっ……そのっ!』
あからさまにおかしいその反応に小柄な男は目を細め、胸部を押さえて苦しむ彼に向かって不機嫌そうにため息をつく。
「…どーせ“王馬小吉”のグッズなんでしょ?言われなくても分かってるって。…ほら、何買ったのか見せてよ。」
持っていたスマートフォンを布団の上に置き、やれやれ…と上体を起こせば、遠目からでも視認出来る程に冷や汗が滴り落ちる挙動不審な男にぐっと近寄った。
『アッ………アァ………ッ』
「ねえ、早く見せてよ。」
『み!!!み!!!見せられないよ!!!!!!』
急に大声を出した挙動不審な男に小柄な男は目を丸める。絶対に答えないという鋼の意思を持てば咄嗟にしゃがみこみ、自分の荷物を大慌てで身体の後ろに隠した。
「…なんで?」
『な……ななな、何ででもッ……だよ……!』
「へー、サイハラちゃんはこのオレに口答えするんだね?」
『 『 ……ぐぁッ!? 』 』
見慣れない反抗的な態度に対してカチン、と来たのか声色を低くすれば相手の首を両手でぎゅっと掴み、親指で頬をぐっとこちらに向けた。
陰の者同士、睨み合い……否、不機嫌な害悪ゲーマーによる一方的な蛇睨みが始まっていた。
ソシャゲでチーターと当たってしまってから不機嫌になっていた彼はより一層、苛立ちを含ませた目を向けている。
「あのさー、いつからそんなに偉くなったの?このオレに隠し事するなんて許されると思ってんの?本当だったら無理矢理にでもその荷物漁ってやりたいけど、優しいからちゃーんと聞いてあげるよ。」
『ぅ、うぐっ………!』
「ほら、オレの目を見て嘘偽りなく自分の口で答えてよ。何を買ったの?教えて。サイハラちゃんの口からちゃんと返答が出ないなら、手段を選ばずにどんな手を使ってでも吐かせるからね?」
『ぁ………アッ……アッ……』
口角は上がっているモノの凍てつく氷の様な目で相手を見下げれば饒舌に言葉責めをしていき、挙動不審な男は更に身体を震わせながら小さく呻き声をあげる。
虫の息というのだろうか。8日目を生きる蝉の如く、弱々しくなった彼は捕食者相手に“もう逃げ場がない”と観念したのか、相手にも音が聞こえる位に固唾を飲み込み俯いた。
『はぁっ………え、えぇっと………今日は素敵なイベントがっ……あ、ありましてっ……だ、ダンガンロンパのっ……に、二次創作っ……イベントがッ……』
「ふーん……で?」
しかめっ面の小柄な男は、すかさず鋭く冷たい相槌を打ち込む。
『アッ……そ、それで、た、たたた沢山グッズを買いましてっ……』
「知ってるってば。だからそのグッズが何か教えろって事なんだけど。」
追い詰められる状況に相当苦しんでいるのか、心臓発作を起こしたかの如く胸部を押さえて呻き続ける。
そんな相手の体調を一切心配する事もなく、「早く言えよ」と冷たい声色で唆し続ける。
この状況に驚かない辺り、これが初めての展開ではないのだろう。
『っ……ぅぐッ…!ハッ……ハァッ…………ハァッ……………お、お…あ、さ……ぃ……ぉ……アッ……さぃ………さ、……さ、…さささ、さい…さいはら…さいはらしゅういちと…お、おおおお、おうま、こっ、おうまこきちくんが……………っ!』
「最原と王馬が何?勿体ぶらずに早くスムーズに言ってくれるかな?」
『ふたりが、っ……………………………アッ…』
「2人が何なの?」
『ふっ………ふうっ………!…ふっ……………ふたりが、……そのっ……え、……………ぇっ……
…えええ、…ぇ……えっちな、ことッ……するほ、ほんを………
た、たくさん……か、かってきました……………
こ、こここ……このにもつッ、ぜ、ぜんぶえっ……………
え………えっちなほん、です……ッ………はぁっ……ハァッ……フウゥ…ふぅ……』
「………」
酸欠状態になりながらも嘘偽りなく全てを言い切り、声を出しながら必死に呼吸をしている相手の想定外だった返答を耳に入れれば、小柄な男が細めていた目はぱっちりと見開かれる。
絶対に文句を言おうとしていた様子だが最後の衝撃的な一言にドン引きし、あんぐりと開いた口をゆっくりと閉じてしばらく黙り込んでしまった。
「…」
『っ………っ………』
「……………はぁ。」
沈黙が続いて数分、小柄な男は乾いた溜息を吐いて顔面蒼白なまま俯く相手に対し、冷静沈着に質問した。
「……………あのさー。オレ興味無いからこんなオタク馴れ合いイベントに参加する機会なんて無いけどさー、
こういうのって直接買う時は年齢確認されるよね?………なんで高校生のサイハラちゃんが買えてんのさ。」
『あっ……うぐっ……………………ぎ………
ぎ、ぎ…
…………偽造した身分証で……か、かか…買いました………。』
タガが外れた様に己の愚行を自供し続ける相手に対し、チーターに向けてた怒りなんて一切忘れてしまう程に呆れ返り、また1つ…また1つと溜息をつき続ける。
切れ者である優等生の彼でさえ、言葉が見つからないようだ。
「…いやもうそれさー、普通に犯罪だからね?」
『は、はい………。』
「…えっちなのは大人になるまで見ちゃダメって言ってた癖に、掌返しで年齢偽ってまでこんなの買ってさぁ……サイハラちゃんは人として恥ずかしくないの?」
『は、はずかしい……かも……しれません…………………………へ、えへへっ………………』
「は?」
俯いているからバレないと思ったのか、何故かニヤニヤとしている相手に鋭い視線を向け直した。
呆れ返って冷めていた感情が一瞬にして点火される。
「何でニヤニヤしてんの?オレは今サイハラちゃんの事を考えて真剣に叱ってるんだけど?」
『あっ!?!?ば、バレてた…!?アッアッ………ご、ごめん…………お、オウマくんがえっちって言葉使ったから、つ、つい………ふ、フヘヘッ…』
「はぁ!?!?」
『ひいぃい!?!?!?ごご、ごごごごごごめんなさいいぃっ!!!』
逆鱗に触れられた相手の怒号に制圧されたのか、ヘラヘラとしていた陰気な男はすぐさま正座になれば背筋を伸ばして大声で返事の如く土下座をする。
「はぁあ………ドン引き…いや……呆れを通り越して“絶望”の域まで達してるよ。オレはサイハラちゃんをこんな子に育てた覚えはないよ。」
『うぐッ…………ごッ………ご、ごめん…ごめんなさ……ぃ……。』
白状したせいか叱られ過ぎたせいか、へにょりと力尽きて屈服する男の大荷物をしかめっ面のまま、ゴソゴソと漁り始める。
本人の供述通り、全ての荷物が成人向けのBL同人誌だった。
発情期を迎えた犬や猫の様子を初めて見た飼い主の様に余程ショックを受けたのだろうか…
相手を散々子供扱いしていた小柄なゲーマーは紛れもない現実に一瞬だけ頭を抱えた。
…そして彼は現実を受け入れるかの如く、1冊1冊を七並べの様に広々とした部屋の床に並べ立て始めた。
優等生の彼にとってこの薄さの冊子など教科書やノート以外で見たことがないのだ。
「…うわ、なんで同じの4冊も買ってんの?普通に意味わかんないんだけど。あー、もしかして激エロ1人神経衰弱でもしようとしたの?」
『あっあっ、え、エット………そ、それも楽しそうだね……!じゃ、じゃなくて……え、……えっと……じ、自分で読む用と保管用と……ょ…よ、汚した時用と…貸し出し用だよ……!!む、夢中になって読んじゃって…す、すぐ汚しちゃうからっ……………か、貸し出す相手はオウマくんしか、い…居ないけど……………アッ…………………よ、良かったら読む…………?こ、この2人の事……き、気に入って貰えると嬉しいんだけど…………ぇ、エヘヘ…………。』
「……今自分が気持ち悪いこと言った自覚ある?なんかいきなりタメ口になってるし、もしかして反省する所か、開き直ってたりする??変態キモハラちゃんと違ってオレは純粋にダンガンロンパが好きだし、勿論ゲームキャラを性的消費なんてしてないんだけど。……もしかしてオレの事ナメてんの?」
『ぃ……ぃゃ違ッ………ご、ゴメンナサイ……。』
ドン引きしながらも頑張ってユーモアのある冗談を言ったつもりだったが叱られて縮こまっていた男に早口かつ少し興奮気味に長々と気持ち悪く語られ、更に不機嫌と化してしまった。
「はーあ。オレがサイハラちゃんに分かりやすく教えてあげられる様にと夜通し勉強してる間も、当の本人はBLのエロ漫画読み漁って余計な知識を蓄えてたって考えたらほんっと情けないよねー。」
『ァッ………そッ………………』
「………出すもん出してるからオレと2人っきりで居ても変に落ち着いてたんだね。」
『た、確かにそれはそう………かも……しれません…。』
「…そっかそっかー、オタクのサイハラちゃんは2次元のエロにしか性欲湧かないのかー。ほんっとムカつくよねー。…オレの気も知らないでさ」
ひとつ舌打ちをすれば縮こまっている相手の肩を掴んでそのまま勢いよく組み敷き、何か言い訳をしようともごもごしている口を塞いだ。
『……ッ!…………………!?ぉ、おうまくん!?!?』
久しぶりだからと少し長めに続いた柔らかい感触に意気消沈していた陰気な男は水を得た魚の様に身体を震わせて声を上げた。
「はぁ……久しぶりにキスしちゃったね。無理矢理だったから唇切っちゃったけどさ…オレを怒らせたサイハラちゃんが悪いんだよ?言葉じゃ理解できない程にバカになってるから仕方ないよねー?」
お互いが少しばかり酸欠状態になってしまっているのか、熱を含んだ呼吸音が重なり合っている。
興奮で若干浮ついた声で挑発的な文句を口にすれば、相手に熱い視線を落とし、流血した唇を指の腹でそっと拭う。
「……オレだって人並みに性欲あるの分かってるよね?サイハラちゃんは脳内お花畑の純粋馬鹿だからどんだけムラついても手出さない様に我慢してたのに、ムッツリどころの騒ぎじゃないってさ〜⋯本当酷い話だと思わない?………ま、オレなんかより2次元の方が……
『な!?!?それは違うよ!!オウマくんが1番えっちでぼ……アッ……!え、えっと、き、ききき、きみと一緒にいるとずっとえっちな事、か、考えて…き、気がおかしくなってしまうから、こ、こここうやって発散する様になったんじゃないか…!!ぼ、僕って気分が…アッ…こ、興奮しちゃうと我を忘れちゃうし…が、我慢出来ずに無理矢理オウマくんが嫌がる事しちゃってき、嫌われたりなんてしたら困るからっ…!!た、大切に……ずっと大切にしたいから……!!!オウマくんの事…………!!』
先程まで恐縮していた彼だが口付けされて根っから興奮状態になったのか、相手の言葉に対し声量を上げて必死に論破していく。
そんな彼を見て面白おかしさと少しばかりの自分に興味があった事への安堵が混ざり合い、嫉妬深い小柄な男は吹き出してしまった。
「………ぷっ、くく………何それ。王馬と最原のBL漫画に載ってた口説きシーンの再現だったりする?……………………もしそうだったら殺すよ?」
『ぅわ!?!?ァッ……そ、そんな訳が無いだろっ……!?な、何が口説きシーンだ!あああああもうっ…!わからずやなのはオウマくんの方じゃないか……!』
本人は冗談のつもりで殺害予告をしているモノの声のトーンは本物過ぎて全くそうは聞こえない為か、無意識に喧嘩を買ってしまった陰気な男はひとつ身震いをしたが段々と怒りのボルテージが上がっているのか挫けず反論していく。
「え?じゃあ何??仕方なくオレの性欲処理に付き合ってあげるって事??たはー!サイハラちゃんは優しいねー!…………でもオレの事を王馬小吉に見立てて抱かれたら殺すからね?」
『だ、抱か!?な、ななななんでそこに王馬小吉くんが出てくるんだ…!!ぼ、僕が1番えっちな目で見てるのはきみだって言ってるのにッ…!!えっちは愛を育むものなのに、せ、せ……性欲処理って言い方も…す…すごくいやだなぁッ……!?!?……こ、こうなったら…僕が力ずくでもわからせるしか…………ッ!』
余裕そうに己を組み敷く相手の皮肉と嫉妬交じりのドロドロとした言葉を全力で否定すれば、小柄な相手の細い腰を引き寄せ、力加減も出来ないまま抱き締めた。
「えっ、ちょいきなり何?てかなんで逆ギレしてんの?悪事を働いたのはサイハラちゃんの方だよね???無理矢理押し倒されたのがそんなに悔しかったの?オレよりも力持ちだってアピールしてるつもり?だったらダサいからやめた方がいいよ?…でもさー、エロい事したかったみたいな言い方だし、こういう展開待ってましたー!っていう変態さんのオーラも十分滲み出てるんだよねー。てか分からされなきゃいけないのって性欲を上手くコントロール出来ないサイハラちゃんの方じゃない?」
『はッ………ち、ちがうっ…!ぼくはっ…………!』
反論したモノの倍の量で嫌味を言われたのが悔しかったのか、抱きしめたままドサリと横転し、目線を合わせ更に赤くなったしかめっ面でじとりと相手の顔を見つめた。
「あーはいはい、怒りん坊さんモードだねー。責任もって発散させてあげるから落ち着いてねー。」
分かりやすく憤慨してる相手を見るが否や、FPSの不完全燃焼で好戦的になっている彼は相手の熱くなった頬に手を触れたまま、まるで燃料投下する様に子供扱いしながら宥めて目を細める。
憤慨していた陰気な男はその手の甲をギュッと掴んで相手の身体に自身を押し付け、興奮気味にゆっくりねっとりと口を開いた。
『はぁ……お、オウマくんは…分かってないなぁ………だ、抱かれたらなんて………ま、まるで自分が“攻め”になるみたい言ってるけど…き、今日はきみが“受け”………お、女の子になるんだからね…………?だ、だだだだ、だって……僕が分からせないと………!な、何回きみのせいでパンツを汚したり…授業中にきみのことを思い出して…が、学校のトイレでひ、1人遊びする羽目になったと思ってるんだ…!そ、それなのに2次元しか興味無いみたいな言い方してっ……、ま、毎晩どうにか出してるお陰でやっと落ち着いてたのに、こ…こうやってきみが煽るからッ…………!
ごちゃごちゃと性事情を説明し始める相手の口を、ものすごくうざったそうな顔をしつつ、手のひらできゅっと蓋をする。
「あー、はいはい。そういう官能小説みたいな言い回しは良いから。……“受け攻め”って確かBLの専門用語だっけ?欲情してわざわざ自分が突っ込みたいってアピールしてるの本当にキモいし、性知識は自分の方が豊富だよーっていうマウントのつもりだったりすんの?だったら勘違いにも程があると思うよ??授業中に勃起してる時点でエロ耐性無さすぎだし、そもそもエロ漫画の内容思い出して勃起するとかマジの変態キモヲッ………痛ッ…!!!
…………は………はぁあぁあーーッ!?!?
話の途中でいきなり本気で噛むとかどんな神経してんだよ!!躾されてないバカ犬かよッ!!オレこんな暴力的な子に育てた覚えないんだけどーーーー!?!?」
『ち、違うって言ってるじゃないかっ……!こ、子育てしてるみたいな言い方して………!!そ、そうやって僕のことをバカにしたり子供扱いしてくるのは精神攻撃のつもりなんだろうけど、話してる時の表情とかが小悪魔みたいで、す、すごくえっちでムラムラするんだぞ……!!そ、それにっ…お、おおオウマくんだって僕の唇噛んだしお、お互い様だよ、ね……!?ほ、ほんと僕のことを子供扱いし過ぎなんだよきみは……!……………アッ……あははっ………』
「短時間で落ち込んだり怒ったり笑ったり興奮したりを繰り返してさー⋯罪木蜜柑並に情緒バグり過ぎじゃない?性欲の暴走で頭ん中おかしくなってんの??3章クロの動機それでいいんじゃない?」
余裕綽々な相手の罵倒を痛覚によって遮れば、応える様に上目遣いでヘラヘラしながら心の内に留めていたであろう劣情をスムーズに言語化しながら長々と吐露する。そんな相手に対して段々と自分の方が欲情してきたかもなんて思えば、どうにか平常心を取り繕って誤魔化そうとし始めた。
『ぃ、いや……………ふふっ…………………くび、…き、綺麗にあとッ…付いてるから………ぼ、僕がちゃんとえっちな目で見てる証拠のつもりだったけど……油断してるきみの見た事がない反応が見れて…う、嬉しいなぁ…………ふ、ふへ……ふへへっ……………あっ………し、しばらくそれ隠すのに…こ…困ったらいいんじゃないかなー⋯?え、えへへ……ッ………ぼ、僕のものっていう印付け……い、1度やってみたかったんだよね……………ちょ………超高校級の誘い受け…………ぼ、僕が変態に育ったのも…き、きみの責任なんだからね……』
ダンガンロンパファンである彼らの人生においても一番くだらない議題での学級裁判ではあるモノの、久しぶりの口論だからか物の見事に白熱してしまっている。
陰の者同士、勿論そんな2人を粛清する人間どころかマスコットさえもいないのだ。
「…好きなゲームタイトルの推しキャラのエロ妄想でシコってる変態雑魚オタクのクセして、本気でオレに逆らうつもりかよ。さっきから官能小説とかエロ漫画みたいな言い回しで得意げに妄想語っちゃってさー。BLの二次創作ばっか摂取したせいでバカになっちゃったその頭、無理矢理にでもオレが直してあげよっか?」
『ふ…ふふっ………………わ、わかったぞッ………さ、さっきからオウマ君はさいぉ…アッ………び、BL漫画の話ばかりしてるのは………ぼ、僕に1人遊びのお供にされてるのとか……えっ、えっちな目でみられてるのを自覚して………じ、実は恥ずかしいんだよね………?そ、それとも僕が変態でショック受けてるの………かな??ど、どっちもかな………!ご、誤魔化したってきみの事を知り尽くしてるぼくには……ば、バレバレだよ……!……へっ……えへへっ……そっかぁ…………はぁ……あれ……?黙っちゃった………!ろ、論破しないの………??そ、そうだよね……きみは優等生だから…………!アッ……そう考えると、学年トップの優等生の首に……お、オタクの僕が、噛み跡つけたんだね…………シチュエーションが、ぇ……え…えっち過ぎる……アッ………ば、バレたらどうなるんだろう……い、石丸清多夏だったら風紀の乱れを察知して…注意してきそうだね……?……ふっ…ふへへっ………………アッ、本気で怒ってる………?ぉ、怒ってる顔も…すごくえっちで可愛いね…………!こ、こうやって本気で反論ショーダウンしてるお陰で色々な表情が見れて嬉しいなぁ…!ぼ、僕も色んな事がきみにバレてこ、心が軽いし……し、しばらくはえっちな本が無くても大丈夫かもしれない………!』
都合よく言いくるめたつもりが、効く処か変にスイッチを入れて真正面から喧嘩を買われてしまい、怒り任せに劣情までもを恥ずかしげもなく流暢に語り始めた相手に対してポーカーフェイスをする余裕もないのか、開き直って興奮交じりに大声早口でベラベラと喋り続ける赤面顔を鋭くギラついた目で黙って睨み続ける。
「……………………アッッッッタマきた。今から死ぬまでぐっちゃぐちゃにぶち犯してやるよ。ここまでオレをキレさせたのはサイハラちゃんが初めてだし、誇りを持って死んだらいいよ。」
低い声でそう口にすれば、力任せに口元を覆って相手の服のボタンに手をかけるが、その手に躊躇もなく歯を立てた。自分が脱がせてやるんだという熱い意思表示の如く、逃れられない様に相手の細い腰に両足を絡める。
『か、下半身は僕が拉致させて貰うよっ…!そ、それにお…おお…怒ってるのは僕だって同じなんだからね…!!!今日は絶対に引かない!!!ぼ、僕は殺したりなんてしないけど……オウマくんが気絶しちゃうまで僕が分からせてやる……!!!!!!!』
「へー、面白いこと言うね?ご主人様におちんちん押し付けて噛み付いて吠えてる姿も負け犬らしくて、なんだか凄く健気で可愛いよ。首輪付けてお散歩でもしてあげよっか?」
『ふ、ふふ……お、オウマくんもさっきからツンツンしてる猫ちゃんみたいで可愛いよ…!こ、これってもしかして……こ、ここ……交尾になるのかな……!な、なんだかえっちすぎるぞ……ご、語尾とか鳴き声に変えてみる………?……アッ!ダンガンロンパのナンジタウンコラボ…近々あったの思い出しちゃった!た、楽しみだね……一緒に行こうねオウマくん!』
ウッキウキな顔の良いオタクから吐き出させるデリカシーも何も無い煽りと本音に対して腹を立てた小柄な優等生はご無沙汰で長くなった爪を猫の様に扱い、2次元を動機とした陰キャ同士の本気の取っ組み合いが始まったのだった。
ダンガンロンパのファンらしく始めた口論…そして学級裁判ごっこでは話が収まらずに物理的な攻防が始まる辺り、
どの世界線でもどのタイトルでもコロシアイは必ず起きてしまう事が何となく証明された様な気がした。
しかもここまで長く波長の合う喧嘩というのは、同じレベルの者同士でしか発生しないのかもしれない。