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    kikhimeqmoq

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    kikhimeqmoq

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    五条お誕生日。恵が小学1年生。

    五条誕2023欲しいと言われたから買ったのに物を受け取ったら受け取ったで「なんの話?」と言いだすのは酷いのではないか。誕生日にプレゼントを買うなんて初めてのことなのに。気がついたらいつのまにか下唇を噛んでいた。無意識だったから力が強い。跡がついているかもしれない。
    「なんでシャーペンなの?」
    べつに、と呟いた言葉もうまく回らない唇の間に巻き込まれて消えた。たぶん悟には届いていない。
    「めぐみ? なーんーでー?」
    自分を覗き込むサングラスの隙間からファーみたいにフサフサで長く白い睫毛と、人間離れした輝きの青い瞳が見えた。ファーは先週、本人が着ていたフードジャケットに備わっていた。フワフワと滑らかな手触りが気持ちよかった。この人の睫毛も同じのような気がする。
    そうだ。その時もこの人は自分に念を押していた。
    来週は僕の誕生日だからね、と。
    「だって……欲しいって言うし……」
    「シャーペンが? そんなこと言ったっけ?」
    これだけ大きい大人の男性が首を傾げる姿が可愛いと思えるのも不思議だった。でもクラスの女子なんかよりよほどキュートで可愛らしい。猫みたいだ。自由で美しく可愛らしい猫。
    「た……んじょうびだ……っ……て言うから……」
    「あー、誕生日にシャーペンくれたの?」
    「……そういうんじゃない」
    早口だし小声だし、自分でも嘘っぽいことを言ったなと思うと恥ずかしくなり彼の顔を見ていられなくなった。俯くと頭の上からクス、と小さく笑ったのが聞こえた。クソ、笑われた。
    「じゃあ恵の誕生日はボールペンあげる」
    「そういうんじゃないって!」
    思わず廊下の床に向かって大声をだしてしまった。俺の誕生日なんてどうでもいい。そんなことを言ってほしいわけじゃない。そもそも誕生日を祝ったこと自体も恥ずかしいのだから、シャーペンの話もボールペンの話もしないでほしい。もしくは、素直に喜ぶか。
    「まあいいや、稽古行く?」
    固まって動けなくなった自分に背を向け、彼は稽古場へと歩き出す。もう俺には飽きたんだろう。あげたシャーペンは彼の手元でくるくると回転していた。高専の暗い照明に反射して安い銀色が時々光った。銀の棒を器用に回転させる白い指がいつもに増して格好よく見える。俺も練習しようかな。
    ぼんやりと眺めているとふっと彼の姿が消えた。やばい早く自分も稽古場に行かないと。突っ立っている場合じゃない。
    走るとすぐ、稽古場に着く。半分野外になっている物置のような場所だ。入口で上着を脱いだ。高専の中央にある大きな建物や立派なお堂よりも、敷地の隅にある狭くて暗いこの場所を気に入っていた。少し秘密基地みたいな気もする。あの人は式神が調伏できたらそいつらが暴れて壊してもいい場所にしないとね、と言ってここを選んでいた。が、呪力はすぐに操れるようになったのに、肝心の式神が現れない。先週は影から泡がたったからもう少しのはずなのだけど。
    「今日はできるよ」
    彼はそう言って俺の肩を送り出すように押した。
    手を組み、目を閉じる。彼に教わったとおり額の中心に意識を込め、念じる。最初にまず二匹の犬が与えられる、らしい。これも彼に教わった。たしかに、影を作り出せるようになった頃から、その影の奥に何かの存在を感じるようになった。犬なんだろうか。犬といわれれば犬のような気もするし、形がない渦巻きだといわれれば渦巻きのような気もするが。
    集中してから数分が経ち、作り出した影はそれなりに大きく、濃くなっていた。式神を呼び出せる気配はあったが、捕まえようとするとすぐに消えた。夏の蚊よりもすばしっこい。
    こういう時、あの人は手間取ったりせず、圧倒的な力でどんな存在もねじ伏せるんだろう。
    あんな風になりたい、と思ったところで「今日はできるよ」と言われたのを思いだす。
    できる彼のように。
    彼が術式を振う時を思い出し、真似をするためにありったけの力で捻じ上げるようにして呪力を掴み、影の奥からそれを引っ張り上げた。
    オン、という生き物の声と、おおっ! という彼の声は混じって聞こえた。
    気がついたら土間の上に尻餅をついていた。綱引きに勝った時、勢い余って転ぶやつだ。呪力の吐き出しすぎで体がだるい。起きる気もなく座り込んでいると、頬に生暖かい湿りけを感じた。両頬だ。
    「すぐによく懐くし、良い式神じゃん」
    そうだ。玉犬を呼び出したのだ。
    両側の式神は本物の犬のように自分を舐め、恭順を示し、同時に甘えてきた。両腕をあげ、頭を撫ぜると普通の犬より鋭い目を細め、ぐるぐるといって喜んだ。可愛い。
    「式神だよ。ペットじゃないんだから」
    そういう彼の口調は馬鹿にするというよりは、面白かっているようだった。自分は彼が見たことがないことをしているらしい。
    「今日は良い日だね。僕の誕生日だし」
    大声ではなかったし早口でもなかった。呟きに近い。落ち着いた口調と言ってもいいくらいのだったのに、声自体は少し上擦っていた。瞳は開き、呪力ではなく熱が漲っており、キラキラと輝いていた。彼は静かにしかし明らかに喜び、お喋りを封印して無言のまま玉犬と自分を観察していた。
    自分も良い日だとおもった。
    物でもなくお菓子でもなく、式神でこの人をこんなにも興奮させることができるなら、来年もこの日に調伏しようと決意した。そのくらい良い日だった。
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    kikhimeqmoq

    DOODLE伏五の五条が直哉と話しているだけの落書き。たぶんなんか、あんまり良いネタじゃない。恵が高一の五月くらい。誤字脱字衍字および重複は見直してないです。「君さあ、なんでずっとムカついた顔してんの?」
    久しぶりに御三家の会合があった。うちの当主は二日酔いで欠席するとだらなことを言い出し、次期当主である自分に名代を務めるよう言いつけてた。それはいい。それはいいが、なんでこいつと控え室が一緒やねん。俺、ほんま嫌いやねんけどら
    「悟くんはなんで似合わへん東京弁を使ってるの?」
    「似合ってるでしょ。君の金髪よりはずっと似合ってるし。直哉って昔は可愛い顔してたのに、いつのまにか場末のヤンキーみたいな金髪ピアスになったのは社会人デビューなの?」
    ハハッと乾いた笑いを付け加えた男といえば白髪が光っていた。銀髪というほど透けていないが、真珠みたいに淡く柔らかく発光している。下ろした前髪から覗く青い目はこれまた美しく輝いていたが、柔らかさなんて一欠片もなく世界を圧倒する力を放っている。それは自分が呪術者だから感じる力であって、その辺の猿どもが見たってガラス玉みたいに綺麗だと褒めそやすだけなんだろうが、こいつの真価はそんな見た目で測れるものじゃない。まあ、えげつない美しさっちゅうのは事実やけど。
    「もうすぐ禪院の当主になるっていうもんが、いつまでも五条家に 3020