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    伏せたい訳でもないけど、小説なのでこっちにしました。

    誰よりも眩しい君へプロムナードの準備の為、兄の部屋に来ていた。
    弟を着飾らせることが出来るのを楽しみだと笑っていた兄がヘアセットをしてる間、鏡を見つつ暇だったので少し昔のことを思い出した。

    雨間幸時への最初の印象は、正直な話全く無かった。

    サマースクールに来たきっかけなんて見た目で誤解された地元から離れて少しでも息がしやすければそれでいい…あと、兄も参加する予定だったし親も自分に期待してきたし、まあ理由を上げれば色々ある。
    だが、人付き合いが苦手なので適当に多くの人と話して、それなりに楽しめればいい。
    それで最初から色んな人間に声を掛けた。

    雨間に対しても最初はそんな気持ちだった。
    カメラを持ってる人間にはとりあえず写真撮ってと声を掛けていた、それ以外に言うことも無いしあちらも自分に興味はないだろうと思った

    「ありがとう、そろそろ行かな…俺は大神侑。兄がおるから侑でええで」

    それだけ言えば後の方でなにやら言っていた。声の大きい男だとも思った気がする。

    何故か縁があってまた話す機会があった。
    後で聞くと色んな人間と関わるために走り回っていたらしい、それなら自分のような人間とも話すかとひとり納得した気がする

    「慎さん」

    と兄の事を呼んでいることから、兄の知り合いだから気にかけてくれてるのだと思った。
    自分の兄は自信もないし才能もないし親からも知り合いからも可哀想な人間だと言われるほどの落ちこぼれだったが、とにかく人間が好きで心根の優しい人で、冷酷な自分とは正反対の人間なので、兄を好きだという人間は沢山見てきた。
    なので、そんな兄を気にかけての声掛けなのだと思い冷めた目で見ていた。

    適当に言葉を交わして時間潰し程度にしか思わない。
    自分は、無感動で感情の起伏が少ない人間だ…適当に湧いたものに近い感情を伝えればいいそう思っていたが…、雨間の言葉の端々に自分と似たようなものを見つけた。
    こんなにも明るい太陽のような笑顔を向けれる人間が?自分と似てる?そんなはずない頭を横に振りたかった…だが、なんとなく出来なかった。

    雨間の透き通るような色素の薄い青色は何もかもを見透かしてるようで、それをした瞬間に暴かれる気がしたから。

    適当に話していたはずなのに、いつの間にか自分の深い部分をポツリと呟いていた。

    「俺みたいな喧嘩してる人間がサッカーの試合なんて出たらチームに迷惑かかるやろ」

    引かれたらどうしようとも、引いて欲しいとも思った。なんとなく怖いんだ、この人と関わるのは

    「してるのか?」

    「してるやろ。顔に怪我もしてるし」

    適当に返したのがバレたのかと思った。それくらいに真っ直ぐな目で見られた。

    「してるのかって聞いたんだけど?」

    逃がさないと言われてる気がした。

    「…してない。喧嘩なんてしたことないって言ったら信じる?」

    「信じる」

    泣きそうになった。
    数年ぶりに目頭が熱くなった。感情なんて表に出せないはずなのに、どんなものかは分からない。今思えば嬉しかったんだと思う
    自分の顔を見た人間は怖がったり泣き出したりする人が多かったのに…

    そういえばサマースクールに来てから皆おかしかった。普通に俺と話してくれて怖がる人なんて一人もいなかった…

    「偏見で人を見るなんてもったいない事したくない」

    そんな人の集まりなのだと、今ならわかる。
    この時の雨間幸時の、印象は一緒に居てはいけない怖い人だと思った。
    話した時に見せてくれた朝焼けのような強い光のような怖い人だ。

    怖いとは思っていたが、なんとなく避ける事をする気になれずに何度も話した。
    イベントでしか話さない人が多かったが、幸時とは日常の些細な時に話す事が多く途中から雨間から幸時と呼ぶように言われた。

    何となくこの人の事だから、相手を避けるために苗字で呼んでるのだと言う事もバレたのかと思った。
    「はるはると呼ぶわ」
    とか適当な返しをして回避しようかと思ったが、却下された。

    話をする度に何故か自分の家庭の事情をしった風で直ぐに兄が話したのだと察する。
    なんでも話したくなる気持ちはわかるし、別に聞かれても困ることでは無いし少し変わった差別をする家庭の事に関してなにも感じていなかったから別にいいかと流したが、幸時はそうは思ってなかった。

    「慎さんと、ちゃんと話した方がいい」

    という風な意味合いの言葉を何度も言われた気がする。
    優遇されて愛されてる自分が話した所で変わらないし、いくら温厚な兄でも怒るのではないか?それともいつもの笑顔で拒否をするだろう…そうとしか思えない。
    なのに、幸時は兄を諦めなかった。

    「できない人じゃねーよ。本当にできない人ならミシンなんて扱えてないし、着れる服だって作れない。そのできないって言うの兄弟共有の思い込みだからやめろ」

    と兄に尊重していた。俺が出会った人たちの誰よりも…
    そして

    「兄ちゃんは可哀想な子やからその分侑が頑張らなな」

    と言う言葉に、いつものような明るい声とは真逆の静かな怒りのようなものを持って【毒親】について教えてくれた。
    何となく少しだけ霧が晴れた気がするけど

    「そんなことされたら辛いよ。侑だって辛かったはずだ」

    という言葉はよく分からなかった。
    俺は本当に優遇されてたから、やりたい事は何でもさせてもらったし優しくもされたから、そんな事を言ったら贅沢だとまた蓋をしかけたが

    「あえて言うけど思って良い。大好きな兄ちゃん泣かせてんだぞ。親が」

    「慎さん。…早く、助けてやって」

    その言葉で蓋を閉めたら行けない気がした。
    この人は、本当に見透かしてるのかと思うくらいに俺の気持ちとかを引っ張るのが上手い。
    怖いとは違う気がした……胸の当たりが重くてザワザワと音を立てて何かが崩れていくのを感じる。
    怖い……でも、なんか違う……
    臆病で感情も出せない適当で冷たい俺を幸時は

    「優しい」

    と言ってくれた。
    俺は誰かを傷つけるのは嫌で、それには俺じゃ無理で……でも、それを否定してくれて

    久しぶりに泣いた。

    幸時に抱きつき、隠したが多分気づかれてたと思う優しく背中を叩く声は優しかったから。

    この時の幸時の印象は、魔法使いみたいな人だと思った。俺や兄を助けてくれる…魔法の靴を与えてくれた人。

    この頃にはだいぶ自分でも周りが見えるようになった気がする。
    霧が晴れるようなそんな…そろそろ兄と話してもいいかもしれない…そんな時目の前で兄が倒れた。

    心臓の音が自分のものじゃないみたいだ目の前がチカチカする。
    たまたま居た幸時に今日の授業を休むと伝えてもらったり兄を運んだりしたが、ほとんど覚えてない真っ白で……そして、久しぶりに湧いた。

    憎い

    そんな感情。兄の【好き】があるからこんな事になる。
    そういえば親も兄を攻撃するのは好きなものに対してが多い気がする。
    これを取り除けば兄を守れるのではないか?だから、宝箱を持ち出した、だから、ゴミ箱に捨てようとした。

    でも、色んな人の好きに出会ってしまった。

    それはどれも輝いていて、眩しくて取り上げては行けない核のようなものだった。
    そうこうしてるうちに直ぐに兄に捕まった。
    宝箱を返せというわけでも無く捨ててもいいという兄はなんだか穏やかで、そして胸ぐらを掴んできた温厚で優しいだけだった兄は、今までに見た事ないくらい強い目をしていた。

    「俺を舐めるな」
    「何を壊されても否定されても「好き」を手放さん」

    そう言う兄はとてもかっこよかった。
    きっと……兄もここで出会ったんだと思う、俺にとっての幸時のような魔法使いに。

    そして、自覚した。
    自分はただ兄を守りたくて兄が居なくなるのが怖くて全てを封じこめたのだと……そして、それを根気強く解いてくれた幸時にいつの間にか心を許していたのだと

    泣きながら「ごめんなさい」を兄に伝えれば「優しいよ」と言ってくれた。

    でも、その言葉の響は少し違って聞こえた。

    最初の笑顔を向けるのは幸時がいい、俺にとっては特別だけど幸時にとっては特別でなくていい。
    俺は…幸時への恋を自覚した。
    一方的でいい。

    あなたが好きです


    秘めていこうと思った。
    俺にとっては幸時は特別な人だけど、別に受け入れられなくてもいいし同じものを求める必要は全くなかったから

    サマースクールで、お守りを作るイベントが催された。これに乗じてお礼を渡せば気持ちを気づかれることなく贈り物が出来ると、嬉しくなった。
    何を渡そうかと考えた時にそういえば兄の作った向日葵の刺繍のシャツを気に入っていたと聞いた気がして、それと動きまくって疲れてるだろうからとラベンダーのポプリを用意した。
    初めての刺繍は自分で言うのもなんだが見本通りの出来栄えで、ポプリ入れも既製品を参考にしたし全てが見本通りで自信を持って渡したが…幸時は直ぐに真似だと気づいた。

    「なあ、ちょっとわがまま言っていい?」

    「いつか、"侑が考えた"、俺に似合う物にしてくれよ。俺は侑が選ぶものも見てみたい」

    そう言われた時に正直びっくりした。
    今までは誰かの真似で良かったし、俺の個性よりも上手に出来たという事の方が大事でそんなもの必要ないと思っていたから。
    だから……怖くなった。
    自分のいいと思ったものに自信はないし…それに、自分自身の感情や考えがいいものだとは思わない。

    でも、雨間幸時の怖いところはそれも全て含めて受け入れてしまうところだ。
    そちらの方が喜んでくれるだろうと言うのがわかるのが、正直困った。

    だって、俺のこの気持ちも受け入れてしまうのではと期待してしまった。

    そこから数日悩んでいた。
    何が幸時らしいものかと……
    幸時に、渡したいもの…自分を忘れないでという少し粘着質な気持ちがこもりそうで怖いが…どうしても思い出のものにしたい。
    やはりサマースクールと言えば海だろうか…安直な理由で海に来るとシーグラスを見つけた。
    そういえば幸時が自分にくれたお守りもシーグラスだったなと思うと近くに落ちているガラスも目に入る。

    「ガラスが海に流されて…そんで出来るんやっけ…なんかこれ、俺と幸時みたいや。」

    「好きを磨く皆と…磨くもんが分からん俺らか」

    気づけばそれらを拾い集めていた。
    寮に帰るとそれらを砕き手が切れないように透明な器に入れて、昔工作で作った万華鏡を作る

    「淡くて分かりにくいけど…綺麗やなぁ。透明感が強くて眩しくて…幸時みたい」

    出来上がった万華鏡を、光に当てるとビーズで作るものよりもだいぶ淡いが屈折が多いからか光が強い気がする。
    そういや、光が怖かったんよな。幸時と出会った頃は

    この時の幸時の印象は………


    「離したくない人。どんな事しても手に入れたい」

    「は?」

    いつの間にか声に出していたらしい。
    髪のセットを終わらせてメイクの微調整をしていた兄と目が合った、この人はここに来る前は自分に甘い顔をして「可愛い」としか言わず守るべき対象のように見ていたのに、今となっては普通に怪訝そうな顔をするしあたりも強くなった気がする。
    凄く、健全な兄弟のようになったな。

    「いや、俺好きな人が出来たみたいでさ」

    「幸時やろ?知ってる」

    アイシャドウの色を手の甲で作りながらさも当たり前のように口にする兄に驚く

    「え?いつから」

    その言葉にため息で返されて目を閉じろと催促された。

    「割と最初からやと思うで?運動会で迎えに行ったやろ、侑……そんでお題で幸時借りる時凄い嫉妬してたやろ」

    指先が瞼に触れて擦るように色を塗り広げるのと同時に頬が熱くなるのを感じた。
    化粧の邪魔だと言われたがこればかりは仕方ない。

    「最高に男前にしたったからかましてこい」

    そう言った兄貴は強気で自信溢れる笑顔で送り出した。


    今から告白しに行こうと気合いが入る。

    俺が雨間幸時と出会ったあのひの先に向かって歩いていく。



    あのひの先を2人で歩こう。
    もう、光を怖がらないから……
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