甘酸っぱいのはスポドリのせいにした「さあ!今年もこの季節がやって来た!運動会!」
黒板の前で学級委員の国木田君が宣言する。それに合わせてクラスメイトも歓声を上げる。
「賑やかな物だねぇ…」
私は行事なんかでは全く盛り上がらないから(世界心中大会とかあったら良いのになぁ)後ろの席で何時もの愛読書を開く。
「太宰今年くらい少しは参加しろよ」
隣の席の中也が睨み付けてくる。去年出るはずだった種目を全て放棄して中也に押し付けた事をまだ念に持っているらしい。
「何でだい?勿論今年も蛞蝓に全て押し付けようと思っていたのに」
「莫迦言うなっ!去年どれだけ大変だったと思ってやがる!6種目連続だぞ?少しは俺の体力考えろ」
「ええっ?中也から体力を取ったら何も残らないじゃないか!」
「表出ろ太宰」
「中原、太宰話し合いに参加しろ」
国木田君がチョークを投げてくる。
「悪ぃ、国木田。それで俺は何の種目なんだ?」
「中原は騎馬戦とリレー、太宰は借り物競争」
「うへぇ~、借り物競走なんて余り物押し付けないでくれるかい?」
「話し合いに参加しなかった&去年サボった罰」
横で笑ってる中也を思いっきりぶん殴りたい。
「借り物競走っ…頑張れよ太宰っ…」
「蛞蝓覚えておきなよ」
体育祭準備が始まった。
教室では立て看板を作る女子生徒の声が響き、グラウンドからはリレー選手の声が聞こえてくる。かくいう私はと言うと…教室の隅で花を作るという作業を国木田君に押し付けられて黙々とこなしている。
「そろそろいいんじゃないかい?」
会計をしている国木田君に声を掛ける。
「まだまだ花紙残っているだろ?」
「いやこれ一人でやる量じゃないから」
机の上には積み重なる大量の花紙。
「去年サボりまくった罰だ。全部終わらせるまで今日は帰さないからな」
「え~……」
いや、飽きてくる…流石に帰りたいのだけど私。
荷物を持ってこっそり席を立とうとすると
「俺が居ない隙に帰ったら次の日二倍だからな」
「君超能力者か何か?」
終わらない花紙と格闘しているとリレーの練習を終えたのか、Tシャツで汗を拭きながら中也が教室に入ってきた。そのまま私に近づいてくる。
「太宰~、今年は真面目にやってんだな?」
「五月蝿い中也…てか汗臭いからあっち行ってくれない?」
「汗臭い?んな訳ねぇだろ」
「そういう所だよ?中也がモテないの」
仕方ないな、中也ほんとに汗臭いし…
自分の鞄に入っていたデオドラントスプレーを中也に投げる。
「ほらそれでも使い給え」
「サンキュー」
デオドラントスプレーを使い終わって、中也が私の横に座る。
「俺も手伝ってやるよ」
「そうかい?ありがとうじゃあ此れくらい頼むよ」