薄月夜「中也なに、その恰好」
先に入ってるぞ、そう声を掛けた中也を見て、太宰が言う。
「何って、これ、こういうモノなんだろ?ここにあったぞ」
「ああ、うん。そうだね。そうか」
「? なんだ?」
「何でもないよ。私もすぐに入るから。お先にどうぞ」
「何だよ。気持ち悪ぃな」
そう言いながらも、中也は顔を引っ込めた。
太宰はひとり、ほくそ笑む。
「へぇ……?」
「何で手前が此処にいる」
中也の眉間に皺が寄ったのは、ほんの数時間前の事だった。
久しぶりの休日だった。しかも連休。首領からもゆっくり休めと言われている。秋は深まり、冬の足音が聞こえている。すこし遠出するにはいい季節だ。目的地を決め、地下駐車場の愛車に向かうと、そこには如何にも待ち合わせしていたかのように、青鯖がいた。
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