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    ficolivine

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    10/21 らんぽっぽお誕生日おめでとう‼️‼️‼️
    (創作お司書🍏くんがいる)

    指先の魔法「とっておきの手品をお見せしましょう」
     そう言われ、和仁(なぎと)は困って口を噤んでしまった。自身の抱えるハンディキャップについて、乱歩が知らないはずもないと思ったからだ。
    「あの……でも、僕は……」
     言いかけた和仁の唇に、そっと乱歩の人差し指が添えられた。
    「!」
    「おっと……失礼致しました。無礼講ということで、お許しを」
    「は、はい」
     再び距離をとって、乱歩は和仁の手を握る。
    「ご心配には及びません。ワタクシを信じてください」
    「それは……もちろんです」
    「ありがとうございます。では、始めましょう」
     乱歩がポケットを探り、何かを取り出す。手のひらの上に、柔らかいものが載せられるのがわかった。
    「どうぞ、ご自由に触ってみてください。これが何か、わかりますか?」
    「はい……ボールが、1つ……ですね。ふかふかしてます」
    「では、それをしっかりと握っていてください」
     和仁の右手に、手袋で覆われた手が重ねられた。その手に導かれるまま、手の中のボールを握り込む。
    「このボールに、ワタクシが魔法を掛けますよ……一、二、」
     ぱちん──と指が鳴らされる。が、特に変化は感じられなかった。何かが変わったのだろうか、と和仁は首を傾げる。
    「さあ、手を開いてみてください」
     言われたとおりに握った手を緩めると──
    「あ、あれ? えっ?」
     手の中から、ひとつ、ふたつ、みっつ。ボールが転がり落ちた。何が起きたのか理解できず、和仁は目をぱちくりとさせる。
     手の中にあったボールが1つだったのは間違いない。それが、なぜか3つに増えていた。
    「わあっ……す、すごい……!」
     目を丸くする和仁の反応を見て、乱歩は満足そうに微笑んで、今度はハンカチとスプーンを取り出す。
    「これで終わりではございませんよ。さあ、もう一度お手を拝借致します」
     手に持っているスプーンがいとも容易く曲がる、握ったロープが突然切れたり繋がったりする、袋の中身の重さが変わる──そのどれもが初めての驚きで、和仁はひとつひとつに感嘆の声をあげた。乱歩が手品を嗜むことは知っていたが、実際に体験すると、その面白さと不思議さに心が踊る。
     すっかり興奮した様子の和仁に、乱歩は目を細めた。
    「フフ、楽しんで頂けましたか?」
    「はい……とっても!」
    「それはよかった。アナタのそのお顔が、ワタクシにとってなによりのお代でございます」
     主役は乱歩であるはずなのに、逆に自分が喜ばされてしまった。和仁は、ほんの少しだけ罪悪感を覚える。
    (……あ、でも、春夫先生が仰ってたな)

     ──「江戸川は、人を楽しませるとき一番いきいきしてる気がするな」

     つまりそれが、乱歩の望みであって、一番の贈り物になるのだろうか?
     乱歩は、人が驚いたり喜んだりする顔が好きなのだと、和仁は理解していた。だから、乱歩の「贈り物」を受け取れば、彼は喜ぶ。たとえあべこべであったとしても、喜んでくれるのならば、それでいいのではないだろうか?
     そうして、思い至る。これがきっと、このひとなりの感謝の表現なのだ、と。
    「乱歩先生」
    「はい。なんでしょう」
    「お誕生日、おめでとうございます」
     乱歩は瞠目し、そうしてどこか照れくさそうに、やわらかな笑みを返した。
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