指先の魔法「とっておきの手品をお見せしましょう」
そう言われ、和仁(なぎと)は困って口を噤んでしまった。自身の抱えるハンディキャップについて、乱歩が知らないはずもないと思ったからだ。
「あの……でも、僕は……」
言いかけた和仁の唇に、そっと乱歩の人差し指が添えられた。
「!」
「おっと……失礼致しました。無礼講ということで、お許しを」
「は、はい」
再び距離をとって、乱歩は和仁の手を握る。
「ご心配には及びません。ワタクシを信じてください」
「それは……もちろんです」
「ありがとうございます。では、始めましょう」
乱歩がポケットを探り、何かを取り出す。手のひらの上に、柔らかいものが載せられるのがわかった。
「どうぞ、ご自由に触ってみてください。これが何か、わかりますか?」
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