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    あんごろうまる

    ユキモモ♀多め

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    あんごろうまる

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    カスホプ♀本の冒頭。
    ※ホープ女体化注意

    カースと小さい頃のホープの話。

    真っ暗な部屋の中でロウソクを点けている家がある。ロウソクに灯る火は小さいが暖かくて見ているだけで心が落ち着いてくる、そんな優しい色を放っていた。ロウの焦げた匂いが家の中に広がっており、先端に火が灯る紐も残り僅かとなっていた。
     この家には二人の親子が住んでいる。しかし二人は全く似ていない。
     銀色の長い髪をゆるく三つ編みした父親らしき男は仕事で遠方に行くらしく、着替え等をバッグに詰め込んでいる。
     一方、ふんわりとカールした癖のある黒髪をした子供は簡素なベッドの中で大人しく男を待っていた。たまにソワソワしながら男の方を見ている。
     ようやく準備が終わった男は一息つくと子供が横になっているベッドに向かった。ベッドに来てくれたことが嬉しかったのか、子供はぱあっと花が綻ぶような笑顔を見せていた。
     早く早く、と急かすようにベッドをぽんぽんと叩く子供に苦笑いしながら男はベッドの中に入った。
    『ねえ、カース』
    『なんでしょうか、ホープ』
     子供――ホープに呼ばれた男――カースは微笑みながら答える。
     ホープはモゾモゾと体を動かしながらカースを見る。
    『カースは他の星に行ったことあるの?』
     幼い子供というのは一度聞いた質問を何度も聞きたがる。それはホープも例に漏れずそうだった。
     だがカースは嫌な顔一つせず、微笑みながら答えた。
    『ありますよ。どの星も仕事で行ってます』
     この前も同じ話をしたはずなのに、ホープは目を輝かせながらカースに話の続きをせがんだ。
    『ねえ、どんな人が住んでるの?』
    『そうですね……性格や考え方が違っても君と変わらない人間が住んでいますよ』
     なぜ急にそんな質問をして来たのか不思議に思いながらカースが答えると、ホープは表情を曇らせる。
    『あのね、今日ね、お手伝いしに行ったらね……お店の人が『アルバはエテルノに酷いことをする怖い人たちなんだ』って言ってたんだ。ねえ、アルバの人達はみんなそうなの……?』
     ホープは顔半分を隠したシーツからマゼンタの目だけ出してカースの言葉を待つ。顔を隠しているのは怖いこともあるだろうが、会ったこともない人を悪く言うことへの後ろめたさから来ているのだろう。
     アルバという言葉を口にした時のホープの声は震えていた気がした。今日は街へ小さな飲食店の手伝いに行っていたので、その時に聞いたのだろう。
     大人が思っているよりも子供は聡い。難しい内容なので分からないだろうと子供の前で話していると、その言葉の意味が分からなくても「怖いこと」「悲しいこと」という負の感情を敏感に感じ取るのだ。ホープもそのような子供の一人なのだろう。
     大人が発信した言葉にまとわりつく負の感情を感じ取り怯えている。そんなホープを安心させるようにカースは優しく微笑みながら小さな頭を撫でる。
    『アルバに住む人々も私たちと変わりません。普通の人間ですよ』
     納得がいかないのか、ホープは不服そうな顔をしている。
    『……じゃあ、なんで戦争をしたの?』
    『どうしても欲しいものがあったからですよ』
    『なら、それちょうだいって言えば良かったのに』
     少しだけ気持ちが軽くなったのかシーツから顔を出したホープは、大人げないよ、と言わんばかりに唇を尖らせる。カースは困ったように笑いながらホープに説明した。
    『ホープ、ここにリンゴがあるとします。この真っ赤なリンゴは君が一生懸命磨いた時のようにピカピカで蜜がたっぷり入って美味しいですが、エテルノでしか作れません。そのリンゴがどうしてもほしいアルバの王様はエテルノから奪い、独り占めしようとしたのです』
    『その王様はどうして独り占めしたくなっちゃったの? みんなで一緒に食べれば良いのに……変なの』
     至極まっとうな意見にカースは何も言えなかった。
     エテルノに隠された太陽を強く焦がれたアルバの王はエテルノへ攻め入った。どうやら臣下たちの反対を押し切った上での侵攻だったらしい。自分のことしか考えない人間を表しているようでカースはため息をついた。
    『……この世界に住む人間は愚かです。自分のことばかり考えて他者を思いやることはない。一つの物を奪い合うために殺し合う。残念ながら、君が普段しているようなことを実践できる人は少ないのです』
     人は浅はかだ。
     争いを繰り返し続け、歴史から学習しない。千年経った今も人が変わることはなく、どこかで殺し合い、奪い合い、傷つけあっている。
     ホープのような考えができる人がこの星――この世界にはどれだけいるだろうか。きっと、ほんの一握りだろう。カースはそんな人に出会ったことがないのだから。
     難しい言葉ばかり並べられたホープは首をかしげる。
    『……んん? むー、僕にも分かりやすく言って!』
     カースの言っていることがよく分からないホープはマシュマロのような柔らかい頬をぷっくりと膨らませながらカースに抗議する。
     ホープは本気で怒っているのに、その顔がおかしくてカースはくすくすと笑いながら肩を揺らした。
    『ふふ……大人になれば分かりますよ。もう夜も遅い。そろそろ寝なさい』
     何度も頭を撫でられていると、心地良いのかだんだん眠くなってきたらしくホープは大きな目をぱちぱちと何度も瞬きする。
    『……ん、おやすみなさい』
     完全に目を閉じたホープはすぅすぅと規則正しい寝息を立てていた。
     完全に寝たことを確認したカースはホープの首までシーツをかける。
    『おやすみなさい、ホープ』
     カースはホープの狭い額に唇を落とした。
     ランプの火を消そうと蝋燭を見つめる。ゆらゆらとすきま風に吹かれて揺れる火を見ているだけで心が落ち着いてくる。この世のどこにも争いがないのではと思ってしまう。
     だが、それは幻なのだ。この世は同じ人間同士で憎しみあい傷つけあった末に殺し合う。そんな愚かで醜い世界なのだ。
     火も大きくなれば真っ赤な炎と化して人々を飲み込み、命を奪う。
    (どうか……この子が笑顔でいられる世界であらんことを……)
     ホープの真っ白できめ細かい頬に指で触れれば吸い付くように柔らかい。
     カースは眠るホープに微笑みながら、ロウソクに向かって少しだけ唇を尖らせて息を吹きかける。親子の家を優しく灯していた火は真っ暗な闇に一筋の煙を残しながら消えていった。
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    あんごろうまる

    DOODLEシャチョコン♀+三月
    *モモ女体化注意
    *モモは名前だけしか出ません
    *デート中モモにキスした社長が勇気を出して告白しようと呼び出したら、ヨリを戻そうとした元カノに無理矢理キスされた現場を待ち合わせ場所に来たモモに見られるという地獄展開です。そこからモモを追いかけるも捕まらなくて、ゲームでも会えなくなってしまった!どうする社長…!?みたいな話しです。
    *進捗なので尻切れトンボ
    お互い「ユキ」「モモ」と呼び合ってますが、地の文章は千斗と百瀬で書いてます。

    *千斗
    ベンチャー企業の社長。オンラインゲームで百瀬と知り合い、心惹かれる。恋愛童貞。

    *百瀬
    就職浪人のフリーター。高校時代サッカーをやっていたが怪我をしてしまい、そこから無気力になっている。惰性で始めたゲームで千斗と知り合い、交流を深めていく。なかなか就職活動をしないので姉の瑠璃から心配されている。

    *三月
    アイドルを目指している青年。アルバイト仲間の百瀬とは仲が良く、プライベートでも遊ぶほどだが恋愛感情は全くない。


     千斗は百瀬が働くコンビニの社員通用口にいた。アルバイトが終わってから近くで待ち合わせする場所がない千斗のために百瀬が教えてくれたのだ。
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