【夏秋】体格差わからせ擬似セッ 玄関の扉が開く音を聞いて、夏彦は机上のデジタル時計を確認した。午後9時半。いつもより1時間ほど遅い帰りだ。
この間に溜め込んだ胸のムカムカのせいで手をつけられなかった宿題のワークブックを閉じた夏彦は椅子から立ち上がる。階段を上がってくる足音を聞きながら部屋のドアを開けると、ちょうど階段を登り切った秋斗と目が合った。
野球バッグを肩にかけた秋斗は、いつもの練習終わりよりもいささか疲労の色が濃く出ていた。夏彦が待ち構えていたことくらい分かっているだろうに、秋斗は無言のまま自室に入ろうとする。目の前で閉まってゆくドアを掴んで秋斗の部屋に一歩踏み入れると、秋斗は迷惑そうに夏彦を見た。
「今日は遅かったんやな」
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