特別包装「そもそもハロウィンよりクリスマスの方がよっぽど好きなんだ」
天使は言った。クロウリーは手元のスマートフォンから目線を外し、天使の言葉に耳を傾ける。「それで?」と視線で続きを促すと、アジラフェルは満足気に言葉を続けた。
「なぜなら、ハロウィンは邪悪だからだ。みんな悪いものの格好をして百鬼夜行のごとく街を練り歩いている。彼らの決めゼリフは決まってこうだ、『トリックオアトリート』。お菓子をよこさなければイタズラ……なんて便利な、いや酷いセリフだ!まるで悪魔みたいな所業だよ」
ハロウィンへの熱い抗議はアジラフェルの身振り手振りを大きくさせる。弾みでゴツッと手の甲がテーブルに当たることで、ようやくアジラフェルは我に返った。彼は紳士然とした態度を崩してしまった己を恥じ、冷えてしまった紅茶を喉に流すことでクールダウンを試みる。
3098