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    kasyaken

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    真→桐。
    きりゅ〜がテディベア。書きたいシーンや要素を入れたらこの回想シーンいるかあ?ってなってしまったけど考えないことにします。まじまはきりゅ〜が毛玉になっても速攻正体看破しそう。どさくさに紛れて同居に持ち込んでます。

    #真桐
    Makiri

    ブラッシングするまじま「桐生ちゃん」

    ソファに腰掛けた真島が足の間を軽く叩く。桐生は真島の右手がブラシを握っているのを認め、鼻に皺を寄せた。

    「朝やったばかりだよな」
    「んー?せやな」
    「そんなまめにしなくていい。そもそも必要ないと思うんだが」

    くまなんだし。そう、桐生は今、なんだかよくわからないが突然くまになってしまったのだった。くまといっても猛獣の熊ではなく、綿が詰まったふかふかのテディベアの方だった。


    ***


    自分でも信じられないのに、他人なんて尚更だ。俺はどうしたらいい…。茫然自失としていたとき、不思議がる声が桐生の大きくなった耳に届いた。

    「桐生ちゃんこっちにいると思たんやけどなあ?」

    桐生は咄嗟にその声のする方へ飛び出したが、自分の今の姿を思い出して足が止まった。真島は喧嘩好きでしつこくて、たまに面倒くさい。しかし、困った時には真っ先に頭に浮かぶ頼れる兄貴分なのだ。自分は桐生一馬だと主張しても、真島に胡散臭いモノを見る目で見られたら…そう思うと恐ろしかった。真島の前に出てきたものの、桐生は口を開けなかった。けれど、目を丸くした真島は「なんやオモロイことになっとるな?桐生ちゃん」と、いつものあの特徴的な笑い方をした。

    というわけで。桐生は、真島の家で厄介になっていた。今後のことに頭を悩ませていた桐生に「ウチ来るか?」と真島が声をかけた。正直その申し出は桐生にとってありがたかったので素直に頷いたのであった。珍しく素直な桐生に真島は目を細め、ふっと笑った。

    (抱っこで)連れられた先は真島組…ではなく、真島の家であったので桐生は驚いた。桐生が戸惑っていると「組でもええけど、大勢おるで?」と真島が言う。確かにその通りだ。やはりこの兄貴分は見た目に反して細やかな点があると桐生は感心したのだった。ちなみに、真島は家に着いてからも桐生を抱っこしたまま部屋の案内をした。桐生は降ろせと喚いたが、真島は全て無視した。

    こんな見た目になってしまったが、誰であるかわかるのかもしれない。と、桐生は期待した。なぜなら真島がすぐ自分の正体を見破ったからだ。推測を確かめるべく、真島組に連れて行ってもらった。組員は真島に挨拶をすると、抱っこされているテディベアをチラッと見る。驚くかな?と思ったが、組員はそれ以外特に反応しなかったので桐生は首を傾げた。組長室に西田を呼んでもらい、何の用かと恐る恐る部屋に入ってきた西田に「俺が誰だかわかるか?」と聞いてみた。西田はソファの上に立っている桐生をまじまじと見ると「喋るクマですか?よく出来てますね。なにかのシノギですか?」と真島に向き直って答えた。桐生は愕然とした。真島がこいつは桐生だと説明するが、西田はまた親父が妙なことを言い始めたな、という顔をしていた。真島に頭を叩かれて西田は涙目になっていた。


    「花屋んところ行ってみよか」という真島の提案に、桐生は「忙しくないのか?」と問いかけた。真島は「んなもん、気にせんでええわ」と言いながら桐生を抱き上げ、扉に向かう。真島の机には目を通されるのを待っている何かしらの書類が乱雑に置かれていた。背後の西田が何かを言いかけた気配がしたが、結局声は届いてこなかった。


    賽の河原では有力な情報を得られなかった。得られたのは疲労感であった。まず、桐生は花屋に自分が桐生一馬だと証明するのに非常に苦労した。本人なら答えられるだろうと、花屋の提案で "桐生一馬クイズ大会"が始まった。同意したものの、出題されるプライベートな質問とそれらを把握されているという事実に、桐生はげんなりした。小さな身体を机の上に乗せ、腕を組んでため息をつく。とはいえ、腕が短いので形になっていなかった。そんな中、同席していた真島は『へえ〜そうなんや』と頭の中の桐生一馬ノートにちゃっかり新情報を書き込んでいた。

    贔屓にしているキャバ嬢の質問をした途端、花屋は場の温度が下がったように感じた。花屋がそっと視線を上げると、桐生の後頭部をじっと見つめている男の姿があった。花屋はこれ以上この話題を続けるのはまずいと悟り、すぐさま話を切り上げた。眉間ではなく鼻に皺を寄せていた桐生はホッとした顔をし、真島は「え〜?教えてや。気になるやん」とヘラヘラ笑った。桐生は「花屋がいいって言ってんだからいいだろ!」と恥ずかしげにしていた。「桐生ちゃんのタイプ気になるしぃ。教えてや」真島はしつこかった。


    結局、花屋には目の前のテディベアが桐生一馬であると信じてもらうことはできたが、欲しい情報は手に入らなかった。こっちでも何かわかったら連絡する、という半ば慰めのような言葉を土産に桐生達は帰路に着いていた。賽の河原に行くまでは「歩けるから」と、自分の足で歩こうとしていた桐生は、真島の腕の中で大人しくしていた。毛並みはどこかしょんぼりしていて、一層無力感を漂わせていた。真島が口を開こうとした時、「聞いてんのかよ!」という怒鳴り声が耳に入ってきた。顔を上げると、チンピラ達がニヤニヤしながら前を塞いでいた。なんでこんな派手な格好の、いかにもヤクザな男に絡むんだろう?と、桐生は疑問に思った。一方で、真島はニヤつくチンピラ達に全く興味を示さなかった。ダルそうにその場を通り抜けようとすると、肩を掴まれた。

    「シカトすんなよ。そのタヌキどうしんだって聞いてんの」
    「たぬきぃ?何のことや」

    真島が面倒くさそうに答えると、チンピラは桐生を指さして「抱えてんだろうが。ボケてんのかオッサン」と小馬鹿にした笑いをした。

    タヌキと言われた桐生はムッとし、真島は爆笑した。桐生が頭上から聞こえる馬鹿でかい笑い声に文句を言おうとしたとき、真島は抱えていた桐生をそっと降ろした。

    次の瞬間、肩を掴んだ男が宙を舞った。仲間達がハッと身構えるより早く、真島は近くにいた別の男の横っ腹に強烈な蹴りを入れる。残ったチンピラが拳を振り上げるが、真島は横に滑るように動き、音もなく男の背後に回り込む。そのまま男の頭を掴むと、電柱に思いっきり叩きつけた。鈍い音が響く。蹴りを入れられた男は、血を流す仲間を見て腰を抜かした。最初に殴り飛ばされた男は怒号を上げながら真島に向かって行くが、気付いた時には、鳩尾に突き上げられるような衝撃を受けていた。真島は膝をついた男の頭目掛けて右足を振り落とす。

    「タヌキやなくてくまや。自分、目ん玉ついとるんか?あ?」

    男の頭を踏みつけながら真島が言う。その低い声に、真島がキレていることに気付いた桐生は、慣れないふかふかの足を一生懸命動かし真島の足元に駆け寄る。

    「兄さん!その辺で勘弁してやれ」
    「目ん玉ついてもついてなくても変わらんのちゃうか?」
    「真島の兄さん!」

    ぽすぽすと桐生が真島の左足を叩く。真島の視線がゆっくりと桐生へ移る。瞳孔が開いていた。

    「兄さん。もういいだろう」
    「喧嘩売ってきたんはこいつらやで」
    「つまんねえ喧嘩なんか買うなよ。帰ろう」

    桐生が説得する。真島は桐生の大きな目をじっと見つめるとため息をついた。地面にへばりついている男の頭から足をどかすと、腰が抜けて地面にへたり込んでいた男に向かって大股で近付いて行った。桐生も慌てて後ろを追いかけた。

    腰を抜かした男は真島が近付いて来るのに気付き、短い悲鳴を上げた。自分達が絡んだ時はタヌキ(?)を胸に抱えていたので気付かなかったが、ジャケットから覗く刺青が目に飛び込んできて顔面蒼白になる。通り過ぎるのを祈ったが、ただの願望に過ぎなかった。目の前に、いかにもその筋の男がしゃがみ込んでいた。

    「タヌキって言うたか?」

    優しげな声であったが、目が笑ってなかった。顔面蒼白の男は慌てて頭を下げ、地面に伏した。

    「クマです!クマです!」

    男は額を地面に擦り付けるようにして、何度も叫んだ。チンピラの声は必死であったが、真島は白けた顔をしていた。


    「さ。帰ろか、桐生ちゃん」

    真島はすぐ隣にいた桐生にニッコリ笑いかけた。先程までの刺すような空気は飛散し、桐生は目を瞬かせる。真島は立ち上がり、手を払う。埃を払うようにしてジャケットも軽く叩いた。そして、戸惑った様子の桐生を抱き上げ歩き出した。

    「桐生ちゃんに知らん男の血ぃ染み込んだら嫌やからドス使わんかったわ」

    真島がヘラヘラ笑う。もしかして自分のために喧嘩を買ったのかな?と桐生が思い至ったところで、真島がなんだか誇らしげに言うものだから、桐生は開きかけた口を閉じた。



    ***

    ソファに座った真島は、ポンポンと自分の足の間を軽く叩く。桐生は少し離れた場所で真島をじっと見つめている。

    「兄さんの楽しみを奪う気かあ〜?」

    真島は間延びした声を上げた。桐生は鼻の皺を深くすると、ぽてぽてと真島の足元に近付いた。そして、短い手足を精一杯動かしてソファをよじ登る。登り終えると真島と同じ方向を向き、真島の足の間にぽふんと座った。

    ──ああ、かわええなあ。

    真島は目を細め、ブラシを持ってない手で桐生のふかふかで少し硬めの毛並みに指を通す。

    真島は桐生をブラッシングするこの時間が好きだ。ソファに座って桐生を呼ぶ。小さな身体になってしまった桐生はソファに座るのも一苦労だ。桐生を抱っこするのも好きだから、抱っこしてソファに連れて行ってやってもいいのだが、桐生が一生懸命自分の元に来るのが真島にはたまらない。

    きっと桐生には真島に面倒をかけているという思いがあるのだろう。だから、うんざりした顔をしつつも呼ばれたら真島の元に来る。別に真島は好きで桐生の面倒を見ているのだから、桐生が負い目に感じることはないのに。「『すまない』やなくて『ありがとう』やろ」と伝えて以降、桐生は感謝を口にすることが多くなったが、それでも申し訳なさそうにする。桐生に負い目は感じて欲しくはないが、それにより桐生を上手く誘導できるのであれば利用しない手はない。自分は悪い男なので。

    桐生の大きな耳を揉み込む。ピクリと反応した桐生は真島を見上げた。

    「おい。やらねえなら降りるぞ」
    「すまんすまん」

    機嫌が悪そうな桐生に真島はヘラヘラ笑う。これ以上余計なことをしたらヘソを曲げるだろう。真島は桐生の耳を触っていた左手を下ろし、そのまま桐生の小さな肩に乗せる。そして、ブラシを持っていた右手に力を入れ、桐生の毛並みの流れに沿わしてそっと櫛を通す。

    「元ん姿に戻っても櫛やらせてくれるか?」
    「嫌だ」

    即答する桐生に真島は笑った。別に期待はしてないし、肯定されたら逆に驚きだ。無意味な質問。ただの戯れだ。真島は丁寧な手つきでブラシを動かす。

    「…喧嘩なら付き合ってやるから」

    少しの間を空けて桐生がボソリと言う。小さな声ではあったが、静かな部屋ではよく聞こえた。

    ──ああ。やっぱりかわええなあ。

    「楽しみにしとるわ」

    真島は心底そう思った。




    おわり
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    ブラッシングするまじま「桐生ちゃん」

    ソファに腰掛けた真島が足の間を軽く叩く。桐生は真島の右手がブラシを握っているのを認め、鼻に皺を寄せた。

    「朝やったばかりだよな」
    「んー?せやな」
    「そんなまめにしなくていい。そもそも必要ないと思うんだが」

    くまなんだし。そう、桐生は今、なんだかよくわからないが突然くまになってしまったのだった。くまといっても猛獣の熊ではなく、綿が詰まったふかふかのテディベアの方だった。


    ***


    自分でも信じられないのに、他人なんて尚更だ。俺はどうしたらいい…。茫然自失としていたとき、不思議がる声が桐生の大きくなった耳に届いた。

    「桐生ちゃんこっちにいると思たんやけどなあ?」

    桐生は咄嗟にその声のする方へ飛び出したが、自分の今の姿を思い出して足が止まった。真島は喧嘩好きでしつこくて、たまに面倒くさい。しかし、困った時には真っ先に頭に浮かぶ頼れる兄貴分なのだ。自分は桐生一馬だと主張しても、真島に胡散臭いモノを見る目で見られたら…そう思うと恐ろしかった。真島の前に出てきたものの、桐生は口を開けなかった。けれど、目を丸くした真島は「なんやオモロイことになっとるな?桐生ちゃん」と、いつものあの特徴的な笑い方をした。
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