段階が上がっていく××しないと出られない部屋 硬い床の感触を仰向けになった体全体で感じながら、目を覚ました。
目の前には真っ白な天井が広がっている。
ーーここはどこだ……?
長時間横たわっていた訳ではないのか、体はそれ程痛くない。
とりあえず身を起こしてみると、僕はいつも通りののスーツを着用していた。
周囲を見渡すと、四方は白い壁に囲まれていて、十畳くらいの広さだろうか。窓や換気口など空気の出入り口になるものはないが、酸素が薄い気もしない。そして、身を起こした僕の前方に当たる壁にだけ、レバーハンドル式のドアノブが付いた鉄製のドアがあった。
つい先程まで、キラ事件終結のお祝いを兼ねて、成人してからまだ一度もお酒を飲んだことがないというニアと、羽目を外して二人で晩酌をしていたはずだった。
ニアは初めての酎ハイが口に合わないらしく「苦いです」と溢しながらチビチビ飲んでいたので、酔っていなかった。僕はほろ酔いだった。何者かに誘拐、監禁される程泥酔していた訳ではない。いや、例え泥酔していたところで、あのセキュリティ万全の捜査本部に外部の人間が侵入できる訳はないのだ。
「起きましたか、ジェバンニ」
静かだがよく通る声に振り向くと、部屋の隅っこで、ニアが膝を抱えて座っていた。白い壁と白いパジャマが同化して、見落としていたみたいだ。
「ニア、これは一体……」
「私も起きたらここにいただけですから、事情は把握していません。ですが、あのドアの横に張り紙がしてあります」
ニアはそう言って、ドアの方を指差した。僕は起き上がり、指差された方に向かった。
ドアの横には確かに白い張り紙があり、デジタルフォントでこう書かれていた。
『手を繋いでください』
「は……?」
二次創作的なあれではないかと察し始めていたのだが、ここはせめて「セックスしてください」ではないのか。
「……手を繋げばいいんですかね」
ニアの方を振り向いて、とりあえず問いかけてみる。
「手を繋げばいいんでしょうね」
ニアは僕とは目を合わさず、うつむき加減で髪を弄っている。
それならばと僕はニアの方に向かう。
「では……」
座っているニアに手を差し出すと、ニアは表情に乏しい墨色の瞳で僕の顔を見上げ、それから差し出された手を取った。そのまま引っ張り起こすようにしてニアのことを立たせると、道行くカップルのように手を繋いでいる構図になった。
「これで……」
ドアの方からカチリという音がした。鍵が開いたみたいだ。
「開いたみたいですよ、ニア!」
僕は気恥ずかしくなってさっと手を放すと、ドアの方に向かった。
しかしドアの向こうには、また真っ白な部屋があった。そしてまた同じように鉄製のドアがあり、その横には張り紙がされていた。
『キスをしてください』
これはもしかして、徐々にエスカレートしていくタイプなのだろうか……。でもまあ、キスならまだ許容範囲だ。