桜遥が棪堂哉真斗に堕ちるまで - Day11 - ~ 2 weeks love progress ~下記のストーリーを埋めていく予定です。
※更新頻度とは連動していません
■ 1日目 来訪 ※公開済み
■ 2日目 烹炊 ※公開済み
■ 3日目 接吻 ※公開済み
■ 4日目 呼名 ※公開済み
■ 5日目 寝顔 ※公開済み
■ 6日目 逢瀬 ※公開済み
■ 7日目 未足 ※公開済み
■ 8-10日目 空白 ※公開済み
■ 11日目 残声 ※この話
□12日目 寂寥
□13日目 悋気
□14日目 後朝
■ 11日目 残声
朝起きて一番にスマホをチェックすると、2日程動きの無かった棪堂とのトークが、一覧の上の方へと上がって来ていて未読のバッジが付いていた。
躊躇わずにタップしてトーク画面を開くと『ここから未読メッセージ』と区切られたラインの下に、一行だけのメッセージが届いていた。
『今夜、電話していい?』
棪堂の低い声が聞こえるような一言に、桜は思わずドキリとする。
3日会っていないだけなのに、少しだけ寂しいと思うのは棪堂に絆され過ぎだろうか。
『いいぞ』
たった3文字だけ打って返信すると、すぐに『嬉しい』という、棪堂のイメージとは全く異なる可愛いキャラクターのスタンプが送られて来た。
思わず苦笑が漏れる。
電話をしたいということは、今日も訪れることは無いのだろう。
朝食もまだだというのに夕飯を何にしようか考えながら、桜は学校へ行く準備をし始めた。
電話を掛けてくるといっても時間の指定までは無かったため、桜は普段通りに過ごすことにした。
学校帰りに夕飯を食べて、帰宅してシャワーを浴び、布団を敷いて寝る支度まで整え終わったところで、聞き慣れない着信音が鳴る。
どんな相手とも基本的にはメッセージの遣り取りしかしていないため、電話の着信音を聞くことはなかったのだ。
画面の『棪堂』と表示された下にある、通話開始のスライダーをスワイプして耳に当てると、『もしもし』と低い声が聞こえて来た。
「……もしもし」
電話なんてほとんどしたことが無い桜は、棪堂にならって同じような言葉を返した。
「寝る準備出来てる?」
時間を見て、桜の生活パターンを想像したのか、把握されている状況をくすぐったく思う。
「もう、布団も敷き終わった」
「じゃあ、布団に入って、寝ながら話そう」
それでは寝落ちしてしまわないかとも思ったが、どうやら棪堂的には、それが目的らしい。
「寝る直前まで遥の声を聴いてたい」
そんな甘い言葉を紡がれて、ぶわりと顔の温度が上がる。
姿は見えないのに、至極近くに居るような感覚が、不思議と桜の気持ちを昂揚させる。
ここ2日程全く連絡が無くて、少し寂しく思っていたのだ。
取り留めのない会話をしていると、少しずつ眠気が侵食し始めた。
「明日の夜、会いに行くな」
棪堂の声も普段よりも少し緩くなっていて、あちらはあちらで、現から離れつつあるのだろう。
「うん、待ってる……」
無意識にそんな言葉が溢れて、そこで桜の意識は途絶えた。
普段の何倍も優しい微睡みからの就寝は、酷く心地の良いものだった。
◆11日目 終了◆