【大浮】熱熱、が――じわりと染みていく。
その間にある羅紗の羽織すら遮ることはできず、肌と肌の境界などありはしないというように。
(あぁ、どうして)
それが嫌ではないのだと、気付いてしまったのだろう。
きっかけは何気ないことだった。
別のことに気を取られたまま階段の手すりに手をかけたところ、ハーフグローブがつるりと滑ったのだ。前のめりに落ちそうになるところを、背後にいた大我が浮葉の腕を掴んだ。ただそれだけのこと。
制服をきっちり着こなし、着物を羽織る浮葉には掴まれた腕の力強さしか分からなかったが――食い込む指先の感触だけは鮮明に覚えている。
大の男を一人支えるのにそれだけの力を要するのは当たり前で、浮葉は引き上げられた後にまじまじと大我の顔を見てしまった。
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