【大浮】The more puzzled you are,(いまさら、なんだと言うのです……)
浮葉はふいっと視線をそらした。
恐らく大我には気付かれていないはずだ。彼はクライアントのご機嫌取りの最中である。にこにこと普段見ないような愛想笑いを振りまいて、浮葉の知らない[[rb:表情 > カオ]]をしている。
不思議に思うのは、心にもない愛想笑いを振りまいても一切の愚痴を言わないことだ。『ああしときゃ、悪い気しねぇだろ』とは言うものの、面倒くさい・やりたくないということは言わない。割り切っていると言えばそうなのかもしれないが、普段の姿からすると黒橡として立ち回る彼はまるで別人だった。
それがプロだというのであれば、浮葉も倣わねばならない。自らの内に弱さを内包していることは自覚していて、いつか誰かに絡めとられないよう優雅さと幽玄さを微笑みに乗せて立ち回る必要があるだろう。悔しいが、いまだ心無い問いに口籠ってしまう時があり、それを大我に救われることも多いのだ。
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