創薬センター絡みの問題も落ち着き、いつもの日常が戻りつつあった頃。杉浦はうっかりジャケットに入れっぱなしだった盗聴器のインカムを返すため、八神探偵事務所を訪ねていた。
「ごめん、持って帰っちゃってた」
目立たない濃灰色のインカムが机を転がる。
「やっぱり探偵だとこういうのも使うんだね。こういうのってどこで買うの?」
その質問は単なる興味で、本気で欲しいとか遊びで使いたいというわけではなかった。こんなスパイグッズみたいなの仕事で使うってなんかかっこいいよね、といった意図だった。しかし、八神は少し考えた後にこう答えた。
「知り合いにこういうの作るのが得意なヤツがいるんだよ。ハッカーで、やたら器用なヤツ」
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