夢「来世は"個性"が宿ると信じて……屋上からのワンチャンダイブ!!」
今でも鮮明に思い出す。胃液で喉が焼けるほどの吐き気と、汗腺がニトロで爛れる感覚すら伴う痛みを覚えるほどの、激しい嫌悪。
年に2度ほど、出久が屋上から飛び降りる夢を見る。来世にかけてワンチャンダイブをする、夢を見る。
本当ならば、鯉が泳ぐ水槽に落ちたのは、勝己が爆破したヒーローノートのはずだった。
一度瞬きをすると、鯉につつかれる出久が沈んでいた。
水槽に沈む出久を掬い上げる、夢を見る。
あの頃の出久は、人一倍細かったはずだ。
それなのに、学生服に含まれた水分のせいで不自然に重たい。
学生服の袖口から滴る水滴が、水面を揺らした。波紋に掻き消された勝己の顔は、歪んでいた。
道端の石ころだと信じて疑わなかったモノが、こんなにも重たく質量を伴った者だったのだと気づいた時には、ソレは勝己の腕の中で息絶えていた。
自分は、なにをした?
考えるのが、酷く恐ろしい。
夏の、暑い日だった。
蝉の鳴き声だけが勝己の頭を支配した。
いつまでも鳴り止まない騒音が罪の意識を加速させる。
ジトリと汗ばむ掌からは、ほのかに甘いニトロが香っていた。
勝己が拾い上げたモノは生温い。
それが血の通う温かさなら、どれほど良かったか。
夏の日差しに熱された水の温さに、勝己は絶望を抱える。
あの夏、出久は死んだ。俺は_____
「……っちゃ…………っちゃん!!かっちゃん!!」
ここで、出久の声に起こされるのはいつものことだった。
この夢の続きを、勝己は未だ見たことがない。
出久曰く、この日は酷く魘されていたらしい。
生きている出久を胸に収めようとして、すんでのところで立ち止まる。
触れることに悍ましい恐怖を覚えて、手を下ろす。
ジトリと汗ばむ掌からは、やはりニトロが甘く香っている。