朝が来る 会場を出た途端、獅子神が頽れた。
それを予想していた村雨はすぐに支えに入ったが、二十キロもウエイト差があってはひとたまりもない。早々によろけ出したのを、渋谷がひょいと代わった。
「村雨くん、足腰鍛えた方がいいんじゃない?」
「必要十分の筋力はある。この男がデカすぎるだけだ」
「それはそうかもしれないけどさ」
うわ言のように獅子神が「わりぃ……」と呟いた。がくりと俯いた顔を覗き込んで、顔色を確かめる。幾分青ざめてはいるが、目の焦点はきちんと合っている。何か話せ、と喋らせても、呂律が回らないということもない。本当に頑丈な男だった。
梅野が廊下の奥に視線を送って言った。
「一応銀行(こちら)で用意した医者が待機していますが」
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