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    takamura_lmw

    @takamura_lmw
    本アカのマストドン避難所(fedi): @takamura_lmw@fedibird.com
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    takamura_lmw

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    102話がくる前にやっておかねばならなかった賞味期限40分のさめしし(友愛)。フルスロットルで何もかもを捏造しました。皿と火事のコマとか。
    あと私の性癖である「他意のない同衾」も入ってます。

    #さめしし

    朝が来る 会場を出た途端、獅子神が頽れた。
     それを予想していた村雨はすぐに支えに入ったが、二十キロもウエイト差があってはひとたまりもない。早々によろけ出したのを、渋谷がひょいと代わった。
    「村雨くん、足腰鍛えた方がいいんじゃない?」
    「必要十分の筋力はある。この男がデカすぎるだけだ」
    「それはそうかもしれないけどさ」
     うわ言のように獅子神が「わりぃ……」と呟いた。がくりと俯いた顔を覗き込んで、顔色を確かめる。幾分青ざめてはいるが、目の焦点はきちんと合っている。何か話せ、と喋らせても、呂律が回らないということもない。本当に頑丈な男だった。
     梅野が廊下の奥に視線を送って言った。
    「一応銀行(こちら)で用意した医者が待機していますが」
    「いらん。うちへ連れていく。タクシーを回せ」
     はいはい、と渋谷が梅野に獅子神を預けて離れたあとで、獅子神が言った。
    「オレんちでいいよ……」
    「だめだ。あなたはきちんと診察を受ける必要がある。私の家に行く」
    「うち、カレーあんだよ……悪くなっちまう……」
     村雨はきょとんと瞬いて、それから溜息を吐いた。
    「あなた、自分の生命とカレーを天秤にかけるつもりか? 電流で頭のネジでも飛んだのか?」
    「自信作なんだって」
     獅子神は頑なにカレーに固執する。スマホを肩に挟み、親指で下を指しながら戻ってくる渋谷に一瞥を投げて、村雨は梅野に指を振って歩き出した。
    「……あなたの家に寄って、自信作のカレーとやらを回収して、それから私の家に行く。カレーは冷蔵庫に入れる。それでいいだろう」
    「お前んちの冷蔵庫、大きいもんな」
     吐息で笑う獅子神に、場合によっては臓器を保管するからなとは言わず、村雨は黙ってエレベーターの呼び出しボタンを押した。




     獅子神をタクシーに置いたまま、獅子神宅のインターホンを鳴らすと、真っ青になった雑用係——元奴隷——が飛び出してきた。どうやら獅子神ではなく村雨が訪れたことで、雇い主が勝負に負けて死んだのではと誤解したらしい。ひとまず無事だがこれから改めて検査をすると説明し、彼らの主人がカレーのテイクアウェイをご希望だと伝えると、園田というその元奴隷はあからさまにほっとした顔をして鍋を取りに戻っていった。再び顔を出した彼が抱えていたのは上からビニル紐で縛り上げられたバスタオルの塊だった。
    「これ、中の鍋に蓋して大きいゴミ袋で包んであります。で、その上からバスタオルで縛って、紐で固定してあるので、多分こぼれないはずです」
    「……それはどうも」
     獅子神さんをよろしくお願いします、という元奴隷に、主人のお人好しは奴隷にまで影響を及ぼすのだろうかと村雨は真剣に首を傾げた。
     大荷物を抱えてタクシーに戻ると、ぐったりとリアシートに背を預けていた獅子神がうっすらと目を開けて怪訝そうに言った。
    「なにそれ」
    「あなたがご所望のカレーだ。というか、彼らが家にいるなら彼らに消費させればよかったのでは?」
     すると獅子神はもごもごと口の中で何事か呟いた。
    「はっきり言え」
    「……だって、お前と食べたかったんだ、カレー、せっかく、一緒に勝ったんだし」
     村雨は一瞬言葉に詰まり、腹の底から溜息を吐いて、「食べないとは言っていない」とずれてもいない眼鏡を押し上げた。




     タクシーを降りた途端、カレーを温めると言って聞かない獅子神を、村雨は問答無用で診察台兼用の手術台に座らせた。心音を聞き、瞳孔反射を確認し、心電図をとるついでに全身に熱傷がないか確認する。今のところ発熱はなく——そもそも平熱が37度以上ある男だが——、皮膚や筋肉の痛みや痺れもないという。最低でも明日までは様子を見る必要があるが、ひとまず異常はないようだった。
    「あとでトイレに行け。尿に異常があったら教えろ」
    「えっ」
    「赤褐色——コーラ色をしていたら横紋筋融解症の可能性がある。その場合は輸液やその他の処置が必要になるからうちの救急外来にあなたを突っ込む。あそこの部長には貸しがあるから細かいことは言わずに通すはずだ」
    「お前その歳で上司に貸し作ってんの…」
     今は救急外来にいるその男を、オークションから拾ってやったのは村雨だ。4リンクの初戦から負け続け、あっという間に転落した男の顔に見覚えがあって、諸々の融通を利かせるために数百万で買った。医師としてはそれなりに優秀だが、ギャンブルの才能も、「倉庫」で生き抜く賢さもない男だった。
     獅子神はへえ、と気のない返事をして、半裸のまま診察台の上に座っていた。だいぶ受け答えはしっかりしてきたが、まだどこかぼんやりとしているようだった。
    「冷えるぞ」
    「うん」
     頷くものの、シャツを手に取ろうとはしない。村雨は溜息をついて、備品棚から病衣を出して獅子神に押し付けた。
    「着ろ。裸でカレーを食べるつもりか」
    「うん、……ああ、そうだった。カレーあるんだった」
     獅子神はようやく病衣を受け取って頭から被った。何か考え事をしているようにも、ひどく眠そうにも見える。
    「あなた、大丈夫か。眠気や頭痛は? 意識がはっきりしない自覚はあるか」
    「いや、大丈夫。ちょっと色々考えてるだけ」
     それにしては様子が普段と違ったが、そう言って微かに微笑む獅子神がすたすたとリビングダイニングに向かうので、村雨は眉間に皺を寄せたままその後を追った。
     


     
     園田が厳重に包んだ鍋は無事だった。それどころか、彼は行き先が村雨宅だと知って気を利かせたのだろう、ストッカーに入ったまだ温かい白飯と、使い捨ての器にカトラリーまで同梱していた。
    「至れり尽くせりだな」
     呆れてそう漏らすと、獅子神はけらけらと笑った。
    「オレが先生んちになんにもねえって言ってたの、覚えてたんだな。膿盆でカレー食う羽目にならなくてよかった」
     あなたは奴隷に何を話して聞かせているんだ、と詰め寄りたくなったが、獅子神はさっさと鍋を火にかけている。
    「村雨、どれくらい食う?」
    「……いつもくらい」
     はいよ、と獅子神は紙の深皿にこんもりと米を盛り、温まったカレーを豪快にかけた。勝手知ったるとばかりに冷蔵庫を開けて、ミネラルウォーターをグラスに注ぐ。
     それをテーブルに配膳されたところで、村雨は首を傾げた。
    「あなたは? 食べないのか?」
    「オレはこれでいーや」
     促されて席に着くと、獅子神は村雨の向かいに座って頬杖をついた。あれだけこだわっていたカレーなのに、獅子神は紙皿にほんの一口分ほどの米とカレーを乗せただけだった。
    「……いただきます」
    「召し上がれ」
     村雨は釈然としないものを感じながら、獅子神手製のカレーを口に運んだ。うまい。途端に空腹を自覚して、村雨は次の一口を大きくすくった。
     獅子神はテーブルの向こうから、それをにこにこと笑って見ている。
     思えば長い一日だった。タッグマッチの相手が獅子神だと知った時、これはチャンスだと思った。全てを処理して安全に勝つこと、そしてこの男を開花させること。最良の結果を得るための、絶好の機会だった。
     獅子神が有象無象とは一線を画す資質を持っていることは分かっていた。彼の臆病さから生ずる慧眼は、これまでもその片鱗を見せていた。それをこの一戦で、ハーフライフを戦えるだけのものに羽化させる。蛹のまま微睡んでいることで身を守っていた男を、毒蛾として羽ばたかせる。たとえ蛾の寿命は儚いものだとしても、蛹が空飛ぶ夢を見た以上、羽化しなければいずれ腐って死んでいく。それなら己の手で空に放ってやりたかった。この誠実で、善性に満ちた友人が、それでもあの場所で上を目指すというのなら、その手助けをしてやりたかったのだ。
     そして村雨は——村雨と獅子神は、賭けに勝った。 
    「うまいか?」
    「うまい」
     頬杖をついた獅子神が問うのに、村雨はスプーンをせかせかと動かしながら頷いた。
     よく煮込まれた鶏肉に、とろけた玉ねぎ。スパイスも自分で調合したのだろう。少し尖った味がするが、美味かった。コメがターメリックライスならもっとよく合ったのかもしれないと思うと惜しかった。
    「お前が食べるって分かってたらもう少し辛口にしたんだけどな、チリ多めにして」
    「ではそれは次回に」
     間髪入れずにねだると、獅子神はハハ、と破顔した。
     今度みんなで料理教室でもやるか、と言いながら、結局獅子神は、僅かに盛られたカレーをほんの少し舐めただけで食事を終えた。




     ソファでコーヒーを啜りくだらない話をしながら、どちらも帰宅を言い出すこともなく、やがて村雨は獅子神をここ数ヶ月で急に使用頻度の上がった客室へ案内した。
     何かあったらすぐに声をかけるか、難しければ電話するように厳命して、自室のベッドに潜る。
     長い一日を反芻しながらうつらうつらしていると、寝室のドアがこつこつ、と鳴った。
    「——獅子神?」
     ベッドから飛び起きてドアを開けると、病衣の獅子神がぼんやりと立ち尽くしていた。
    「どうした? 体調は?」
     さっと目を走らせて確認する。吐いたり、下したりした様子はない。顔色はよくはないが、頭痛を感じているようにも見えない。脈を確認しようと首元に手を伸ばすと、獅子神の手のひらが村雨の手首を握った。ひどく冷たい手だった。
    「一緒に寝たい」
     村雨は獅子神の目を見上げた。暗闇の中で底光りするような青い目が、迷子のように揺れて村雨を見つめている。
     掴まれた手首を払うと、獅子神はさっと俯いた。
    「違う」
     今度は村雨から獅子神の手を掴んだ。ぐいと引いて部屋の中へ入れる。ぱたんとドアが閉まると、獅子神は肩を震わせた。
    「獅子神」
     獅子神は顔を上げない。だが獅子神は村雨より背が高いので、近づけば顔を覗き込むことができる。村雨は獅子神に向かって足を踏み出しかけて躊躇い、それから獅子神の腕を引いてベッドに導いた。
     獅子神はベッドの傍らで途方に暮れた顔をしていた。
     村雨がベッドに入り、上かけを持ち上げてやると、うろうろと目を彷徨わせた。
    「獅子神」
     呼んでやってようやく、獅子神はベッドに片膝をついた。ベッドが微かに軋み、冷えた体が村雨の隣に滑り込んだ。縮こまる彼の体を村雨は乱暴に撫でさすった。
    「冷えすぎだ、マヌケ」
     腕を伸ばして肩から背中、腕まで、ごしごしと撫でてやる。ようやくその肌に温かみの戻ったころ、獅子神はほう、と小さく息をついた。
     村雨は枕に頭を預け、こちらを向いて丸まった獅子神を眺めた。すぐそこにある金色の頭から、自分と同じ洗髪剤の匂いがする。しかしそこには獅子神自身の体臭が混じり、普段の獅子神のそれとも違う、なんとも不思議な匂いとなっている。馴染み深いものと、馴染み深いもの。それなのに、全く新しい、どこか落ち着かない匂い。けれど決して悪くない匂い。
     獅子神の背が上かけから出ているのに気づき、村雨は獅子神の肩に手を伸ばした。
    「ほら」
    「、ぁ」
     肩を引いてやると、獅子神は躊躇ったのち、もぞもぞと村雨に身を寄せた。獅子神の背まですっぽりと上かけで覆うと、二人の間にはほとんど隙間がなくなる。膝に獅子神の足が当たり、胸元に引き寄せた手に湿った吐息を感じる。
     乱れた金髪の間から、青い目がじっと村雨を見ていた。
    「何か見えるか?」
    「——お前が、ほんとにオレのこと好きでいてくれてるんだなって、分かった」
     何を今更、と返すのは簡単だったが、村雨はただ小さく頷いた。
    「今日、あれから、お前を視てて、分かった。オレに呆れてる時でも、オレがわがままを言っても、お前はオレを嫌いにならなかった。お前がしてくれることには、全然嘘がなかった」
    「当たり前だ。私はあなたを評価しているし、得難い友人だと思っている。あなたに嘘をつく必要がどこにある。私はあなたに健康でいてほしい。健康で、できるだけ長く私の友であってほしい。そうでなければうちへなど連れてくるものか。あなたは当然分かっているものだと思っていた」
     獅子神は小さく笑った。
    「お前がオレを気にかけてくれてたのは知ってるよ。でも理由は分からなかったし、勘違いかもしれないと思ってた。お前がオレを友達だって思ってくれてるのも、今知った。初めてなんだ。ぜんぶ」
     獅子神の指が村雨の手のひらに触れた。いつもは熱いくらいの指が、ひんやりと村雨の手を握る。
    「友達って、秘密の話をしたりするんだろ。お兄さんの話は、お前の秘密か?」
    「秘密というほどでもないが、話したのはあなたが初めてだ」 
     そっか、と獅子神は笑って、握った手にきゅ、と力を入れた。
     ふっくらとした唇が囁くように言った。
    「じゃあオレの秘密も話すよ。友達だもんな。——なあ、村雨、オレは、皿を割ったんだ」
     村雨は黙って、獅子神のどこか遠くを見るような瞳を見つめた。
    「オレがガキの頃どんな暮らしだったかは、あいつらが言ってた通りだよ。あのひとは、いつも酔っ払って帰ってきた。しばらくの間は物を壊したり、オレを殴ったりして、それから気が済むとソファに寝転がって煙草を吸う。煙草を吸いながらまた酒を飲んで、そのうち眠っちまう。そうすると何回かに一回は火のついたままの煙草が指に引っかかってて、しばらくするとそれがぽろっと落ちる。落ちるとあのひとが気に入って買ってきたラグが焦げる。ラグが焦げると起きたあの人にオレがこっぴどく殴られる。だから煙草に火がついてる時は、オレはいつも自分の皿をソファから垂れたあのひとの腕の下に置いた。あのひとの手から煙草を取るとしばらく立てなくなるほどビンタされるし、他の皿を使うと血尿出るまで殴られるからな」
     あのひと、と言う時、獅子神の唇は僅かに震えた。「あのひと」の腹を開けてやりたいと村雨は焼け付くように思った。その腹の中こそが腐っているべきだった。
    「それでまあ色々あって、ある日、オレは死ぬほど殴られて、他にもいろいろされて、もうこれ以上は無理だと思った。死にたくなかった。生きてたっていいことなんかなんもねえのに、死ぬのは嫌だった。あのひとはまたソファで煙草を吸いながら眠ってしまって、火をつけたばかりの煙草が指の間に引っかかってた。オレはいつもみたいに皿を出してきて、ソファからだらっとはみ出たあのひとの腕の先、ちらちら揺れる煙草の真下に置いて、それから踏んで割った。皿の破片の間に隙間が空いて、ラグと、あのひとが片づけなかった雑誌や、コンビニのゴミが覗いた。ちょうど、煙草が落ちるあたりに。
     オレはそのまま家を出て、公園の遊具の中で朝を待った。日が昇って家に向かって歩き出して、家のある方に真っ黒な煙が上がっているのを見て、オレは賭けに勝ったことを知った。
     ——大人たちに色々聞かれたけど、オレは本当のことを言えばよかった。かわいそうで、運のいい子供だとみんなが信じた。オレは嘘はひとつもついてない。皿を割ったことを言わなかっただけ。皿を割ったことだけは、誰にも言わなかった。今まで、誰にも。
     そう、だから、オレの秘密はさ、村雨——オレは皿を割ったんだよ」
     獅子神は奇妙に凪いだ目で村雨を見た。村雨は腕を伸ばし、獅子神の頭を胸に抱き込んだ。獅子神が村雨の寝巻きの胸を小さく掴む。やがて彼の額が押し当てられたあたりがじんわりと湿っていった。
    「獅子神」
     これが獅子神の献身なのだと村雨は思った。初めての友人、彼を羽化させた自分への、胸を裂いて心臓を取り出すような献身。村雨が与えたものに、彼が応えようとしたもの。血の滴るような、獅子神敬一の愛。
     彼はハーフライフを戦うにふさわしい生き物へと羽化をした。村雨が与えたものを吸収し、血肉として。そして彼は、村雨の親愛を初めて理解して、精一杯の親愛を、こうして返したのだ。
     きっと恐ろしかっただろう。不安だっただろう。彼は今日まで、村雨が——そして真経津と叶が差し出しているものを理解していなかった。友愛に友愛で応えていたのではなく、関心に献身を捧げていた。村雨が獅子神を導いたことで、彼はそれが親愛であり、友愛であることを知った。そしてそれに報いるために、彼は自分の胸を裂いて見せたのだ。
     なんて臆病で、怯懦で、誠実ないきものなのだろう。
    「獅子神、泣くな。あなたは横紋筋融解症の可能性がある。脱水は避けるべきだ」
     獅子神は村雨の寝巻きに頬を擦り付けて笑った。
    「今言うことかよ」
     湿った声で笑う彼を、村雨はもう一度胸に強く抱いた。金色のつむじに唇を落として囁く。
    「ありがとう。あなたの秘密は確かに受け取った。私の秘密も、あなたに受け取ってもらえてよかった」
    「……うん」
    「もう寝ろ。明日はどうせ彼らが来る。あなたが変わったことを彼らにも見せてやるといい」
     そして彼らの友愛をその目で確かめればいい。彼らがどれだけ獅子神を愛しているか、視て覚えればいい。
     村雨の腕の中で、獅子神はゆっくりと眠りに落ちていった。
     互いの入り混じったやわらかな匂いを胸に吸い込みながら、村雨もやがて目を閉じた。
     そしてまた、朝が来る。
     
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    takamura_lmw

    DONE🎉ししさんお誕生日おめでとうございます🎉
    ししさんお誕生日のさめしし、もしくはししさめです。
    一月に書いたさめせんお誕生日SSの続きです。

    あなたのこれからの人生が、あなたにとって素晴らしいものでありますように。
    できれば長生きしてください…頼む…ギャンブルなんかやめろ…ワンへなんか行くな…
    「誕生日、おめでとう」『村雨、八月二十七日って空いてたりするか』
     恋人の声を聞いた途端、村雨礼二はいざという時の切り札に確保していた上司の弱みを、ここで行使することを決めた。空いた片手で猛然と上司にビジネスチャットを打ちながら、頭の中では担当の患者とそのタスクについて素早くチェックをかける。どうしても村雨でなければならない仕事はないはずだ。あのネタをちらつかせれば上司は確実に休みを寄越すだろう。
    「休みは取れる。どうした」
    『即答だな』
    「偶然ここのところ手が空いていてな」
     嘘だった。所属する医局もいわゆる「バイト」先も相応に多忙だ。だがそれを彼に悟らせるつもりはさらさらなかった。
     村雨がここまで即座に恋人の―――獅子神敬一の、願いとも言えないような言葉に応えたのは、彼の声になにか特別なものを感じたからだった。不安でも、歓喜でもない。怒りでもなく、愉楽でもない。ただどこか尋常でなく、特別なもの。絶対に逃してはならないなにか。ほとんど第六感のようなものだが、村雨はそういった感覚を重視する性質(たち)だった。
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    takamura_lmw

    DONE桜流しのさめしし、もしくはししさめ。ハッピーエンドです。ほんとなんです。メリバでもないキラッキラのハピエンなんです。信じてください。

    これがずっと出力できなくてここ一ヶ月他のものをなんも書けてませんでした。桜が散る前に完成して良かったと思うことにします。次はお原稿と、にょたゆりでなれそめを書きたいです。
    桜流し 獅子神敬一が死んだ。
     四月の二日、桜が散り出す頃のことだった。



     村雨にその死を伝えたのは真経津だった。
    「——は?」
    「死んじゃったんだって。試合には勝ったのに。獅子神さんらしいよね」
     真経津は薄く微笑んで言った。「獅子神さん、死んじゃった」と告げたその時も、彼は同じ顔をしていた。
    「……いつだ」
    「今日。ボク、さっきまで銀行にいたんだ。ゲームじゃなかったんだけど、手続きで。そしたら宇佐美さんが来て教えてくれた。仲が良かったからって」
     村雨はどこかぼんやりと真経津の言葉を聞いていた。
    「あれは、……獅子神は家族がいないだろう。遺体はどうするんだ」
    「雑用係の人たちが連れて帰るって聞いたよ」
    「そうか」
    「銀行に預けてる遺言書、あるでしょ。時々更新させられる、お葬式とか相続の話とか書いたやつ。獅子神さん、あれに自分が死んだ後は雑用係の人たちにお葬式とか後片付けとか任せるって書いてたみたい。まあ銀行も、事情が分かってる人がお葬式してくれた方が安心だもんね」
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    「——は?」
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    「……いつだ」
    「今日。ボク、さっきまで銀行にいたんだ。ゲームじゃなかったんだけど、手続きで。そしたら宇佐美さんが来て教えてくれた。仲が良かったからって」
     村雨はどこかぼんやりと真経津の言葉を聞いていた。
    「あれは、……獅子神は家族がいないだろう。遺体はどうするんだ」
    「雑用係の人たちが連れて帰るって聞いたよ」
    「そうか」
    「銀行に預けてる遺言書、あるでしょ。時々更新させられる、お葬式とか相続の話とか書いたやつ。獅子神さん、あれに自分が死んだ後は雑用係の人たちにお葬式とか後片付けとか任せるって書いてたみたい。まあ銀行も、事情が分かってる人がお葬式してくれた方が安心だもんね」
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