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    簾 臭子

    業の塊
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    簾 臭子

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    ちあしのSS
    特にオチのない話です。
    途中で投げたのとほぼ地の文のやつ。繋がってそうだけど時系列は別です。

    ##ちあしの


     深夜3時。夜遅くまで仕事が入るのは珍しいことではないとはいえ、ここまで遅い時間に寮に帰ってくるのは久しぶりだった。
    流石に皆寝ているだろう。いつもは飛び込むように開ける玄関も、音を立てないようにそおっと開けてそおっと閉めた。

     玄関を抜けて廊下に向かおうとする足が止まる。共有ルームの電気がついたままになっていた。まだ誰か起きているのか?
    チラリとそちらに目を向けると、ソファの背もたれから頭が少しのぞいている。誰がいるのかまでは判別ができない。
    一瞬、怖いことを考えてしまったが、寮生の誰かならもう寝たほうがいいと伝えるべきだろう。
    恐る恐るソファに近づき、後ろから覗き込む。

     そこには忍が座っていた。うたた寝をしている様子で、膝には書類が置かれている。
    読んでいるうちに寝てしまったのか、そのまま放っても置けないので隣に腰掛ける。
    「ん……」
    千秋が座った振動で起こしてしまった。寝起きのぼんやりとした顔でこちらを向く。
    「こんなところで寝ていたら風邪をひくぞ」
    「あ……守沢殿、おかえりなさあい」
    そう言い忍はふにゃりと微笑む。舌足らずの声で出迎えられ、頬が緩む。
    「ああ、ただいま仙石。ほら、寮室に戻ろう」
    ぽんぽんと肩を叩き、立つように促す。
    「あ、いや、ええっと…守沢殿明日休みでござるよな?」
    「ん?ああそうだが…」
    「その、最近お会いできてなかったので、久しぶりにおしゃべりできないかなあと」
    衝撃が体を走った。つまり、こんな遅くまで1人で忍は千秋を待っていたということか。あまりのいじらしさに一瞬言葉を失う。
    「仙石…!もちろんいいに決まっている!夜通し語り合おうじゃないか!」
    「も、守沢殿、声が大きいでござる…!みんな起きちゃうでござるよ」
    「ああ、すまん」

     嬉しさでつい大きい声が出てしまった。
    最近は特に仕事が続いていて、後輩たちと面と向かって話す機会というのがめっきり減ってしまっていた。
    「よし、何か飲み物を入れてこよう」
    キッチンに向かおうと立ち上がると、キュッと服を掴まれる。
    「いま拙者の部屋、神崎殿も朱桜くんもいないんでござるよ」
    金色の目が千秋を見つめる。その頬が赤く染まっていて、千秋もなんだか照れてしまう。
    「ここで話してたら誰か起こしちゃうかもしれんので…」
    「そうだな、じゃあお邪魔するとしよう!」









     ふ、と目が覚める。
    目蓋を開けて、ぼうっと天井を見つめる。カーテンの隙間から差し込む、外の街灯の光がぼんやりと部屋の輪郭を浮かび上がらせている。
    腕を伸ばしサイドテーブルのスマホを手に取る。3時26分、変な時間に起きてしまった。
    布団から出したままで冷えてしまった手を、長い前髪をかき分けておでこにそっと当てる。そのまま冷たい指をつうっと頬に滑らせる。火照った皮膚にひんやりとした温度が気持ちいい。

     横には、すやすやと寝息を立てて気持ちよさそうに眠っている千秋がいる。ゆっくりと寝返りを打つ。
    仰向けのその体は半分ほど布団からはみ出していた。忍側に寄った布団を脚と腕で浮かせながら全身に被さるように掛け直す。
    そんなことをしていたら目が冴えてしまって、でもこんな時間に起きるのもなと思いながら千秋を見つめる。
    いつもはかっこいい先輩の顔を見せる千秋だが、こうして熟睡していると子供のようなあどけなさが優る。甘いマスク、というのだろうか。
    夢ノ咲を卒業してからというもの、千秋のその容姿が売り出されるようになり「守沢千秋」のファンが爆発的に増えている。
    今年のバレンタインもえげつない量のチョコが事務所に届いており、お母さんからしかチョコを貰ったことのなかった頃が本当に嘘のようだと笑っていた。

     じっとその爽やかな寝顔を見ていたら、なんだか炭酸が飲みたくなってきた。
    一度そう考えてしまうと、もう無性に飲みたくてしょうがない。確か外の自販機にレモンの炭酸水が入っていたはず。
    千秋を起こさないように、そうっと布団から抜け出す。
    ハンガーに掛けてあったジャケットを羽織り、念のためキャップも被っておく。鞄の中を漁り財布を発掘する。
    暗い部屋をすり足で進み、玄関の鍵を回す。扉を少し開けて体を滑らせるようにして外に出る。そうっと閉めて、カチャリと鍵を掛けた。

     白い蛍光灯が点々と照らす内廊下を一人で歩く。エレベーターの前まで来て、なんとなく、その先の非常階段の方へ足を向ける。
    外へと繋がる扉を開けると、冷たい外気が体を包む。
    まだギリギリ夏とはいえ、深夜となると流石に寒い。寒いが、キンと冷えた空気が気持ちいい。
    スッと鼻で息を吸い、肺が新鮮な空気で満たされる。目だけじゃなく頭まで冴えてきてしまった。
    コンクリートの階段を一段一段下っていく。

     一階まで降りて、道路を小走りで渡る。お目当ての自販機はマンションの向かいにあった。
    暗い夜道の中でその機械だけが煌々と光っている。左上から順に眺めていき、2段目で見つけた。
    350ml缶のレモン炭酸水、120円。
    財布のチャックを開けて小銭を人差し指でかき回す。100円玉と50円玉をつまみ、投入口にチャリチャリと入れる。
    パッといくつかのボタンが緑色に発光する。2段目左から3番目のボタンを押すと、ガタン、音がしんとした住宅街に響く。
    小銭を回収し投入口の缶も手に取る。キンキンに冷えた金属で掌が急激に冷やされて、少し痛い。

    「っくしゅん」
    くしゃみが出た。じわじわと体の外側がつめたくなっていた。
    早く暖かい布団の中に潜りたい一心で駆け足で玄関ホールを抜ける。
    エレベーターは一階で待機してあったようで、上ボタンを押すとすぐに開いた。
    いそいそと乗り込み3階のボタンを押す。スーッと扉が閉まり、箱が上に登っていく重力を感じる。
    自分の体を抱えながら止まるのを待つ。ポーンと到着の音が鳴る。

     ポケットの中の鍵を取り出して玄関を開ける。リビングに通じる廊下の先、内扉の向こうが明るい。
    えっと思ったら、内扉がバタンと開かれる。
    「仙石!どこ行ってたんだ」
    安堵した、という表情で千秋が出迎える。
    「あ、えっと……これを買いに、おわっ!」
    ズンズンと近づいてきてぎゅうっと抱きしめられる。弾みでキャップが床に落ちる。
    頭や背中が暖かくて大きな手で撫でられて、じわじわと体温が戻ってくる。
    「こんなに冷たくなって……別に朝起きてからでもよかったんじゃないか?」
    「いやあ、一回飲みたいなって思ったら我慢できなくて……あの?守沢殿?」
    首をひねって、いつまでも抱擁したままの千秋の顔を覗く。少し怒ってる?
    「心配したぞ、本当に。気づいたら布団にも部屋にもいないんだから」
    「あう……心配かけてすんません」
    不意に体が離されたと思ったら、ちゅっとおでこにキスをされた。
    「ほら、もう4時になるぞ。寝よう」
    そう言い腕を引かれる。一瞬皮膚が触れ合った場所に身体中の熱が集まる。

    もう炭酸のことなんてどうでも良くなっていた。
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    簾 臭子

    TRAININGちあしのSS新しくドラマの出演が決まったと千秋から連絡が入った。撮影現場が寮から通うには遠かったため、ウィークリーマンションを借りることにしたらしい。そう連絡があった数日後、忍達はそのドラマ撮影の見学に来ていた。無事その日の収録は終わり、千秋が3人の元に駆け寄って来る。今晩部屋に泊まっていかないかと誘われたが、鉄虎と翠は次の日に用事があると断る。一人暮らしが寂しいのだろうか、露骨にしょんぼりする千秋を不憫に思った忍は誘いを了承し、1人で泊まることになった。

     ワンルームの狭い部屋には家具が備え付けで置いてあるようで、ある程度の電化製品も揃っていた。
    「う、ウィークリーマンション?って便利でござるね」
    「ああ……ただ、他人の部屋にいるみたいでなんだが落ち着かないんだけどな」
    千秋は苦笑いで答える。言われてみれば、千秋の私物はほとんどなく妙に生活感のない部屋だった。キョロキョロと部屋を見渡すと、キッチンの隅に置かれているゴミ袋に目がつく。中にはカップ麺の容器が重なっている。
    「守沢殿、もしやちゃんとご飯食べてないでござるな?」
    ぎくりとした表情で振り返る千秋。
    「そのだな、撮影が忙しくて…」
    「そん 1423