ある少女の夢私が年端もいかない少女の頃、夢を見たのです…。
その頃の私は周りの大人から疎まれ蔑まれており、それは幼い私の心に消えない傷を残す程のものでした。
そしてその夢は、私を蔑み心無い人たちの言葉から始まりました。
「お前の様なグズは…!!」
「あんたみたいな…」
黒い影達がいつもの様に、地へ手足を付ける私を、罵り嘲笑っていた時
「…はーぁ…つまんないの」
私を苦しめる人たちの奥から落胆したような少女の声がしました。
「…?」
いつもは聞こえないその声に疑問が浮かび。
そこへ目を向けると、私の前にいる人たちを優雅に切り裂き、蝶のような軽やかなそれは私の目の前に現れました。
そして、私に手を差し伸べ、
「良ければ私と踊っていただけませんか?」
そう言った目の前のそれは、よく見ると中性的な顔立ちで、服装もまるで絵本に出てくる王子様の様な姿だったのです。
そんな彼に見惚れて、おずおずと手を前にだそうとする。
すると彼は私の手を掴み、夢の奥へ導いてくれたのです。
それはそれは、今までに見たこともない絵に描いたような素敵なひと時を過ごしました。
そして、その様な夢はいつか終わりを迎なければいけないのです。
私の手をひき、幸せへ導いていた彼はいきなり立ち止まり
私の方へ向き直ると、肩に手を添え顔を近づけてきました。
私は恥ずかしながら、咄嗟に目を瞑ると
「りんごみたい」
と小さく笑う声が聞こえ、目を開けようとした時、おでこにデコピンをされ
「じゃあね、わたしの可愛いおひめさま?」
その言葉に、バッと勢いよく飛び起きるとそこは見慣れた私の部屋でした…。
…それからのこと、あの夢は見なくなりました。
それでも私はあの夢を一生忘れることなど出来ず、待ち続けているのです。
また、あの素敵な王子様が現れる夢を…