ヒカ♂ウリ守護天節「会心の出来だ…。」
満足げなその声は、小さな呟きながらも狭い浴室の中に響き渡った。声の主である男は右手に筆を持ち、深い青の海賊衣装に身を包んだカルヴィン。わざとらしいほど目立つ海賊帽に、首元には華美なゴールドネックレス、わざと汚れたように見せかけた装飾が施された服の胸元は粗暴な海賊のように大胆に開かれていた。
バスタブの前で跪く彼のもう片方の手は、水の張ったバスタブの中に身を委ねる男の顎を掴んでいる。
バスタブの中の男…いや、マーマン、ウリエンジェは顎を支えられたまま長い睫毛をそっと開き、薄い光を湛えた金色の瞳を覗かせた。耳には魚類のヒレを模した装飾具を付け、上半身にはところどころ透き通るようなターコイズグリーンの鱗模様が描かれている。感嘆の声をあげたカルヴィンは丁度、彼の頬や首筋にそれを描き終えたところだった。下半身は魚の腹部を模したタイツで両脚を包んでおり、スラリと伸びたターコイズグリーンの尾鰭がバスタブの縁をなぞり、雫を溢して揺れる。その姿は、伝承に出てくる「人魚」そのものの美しさを備えていた。
「人魚の姿、とても良く似合ってるよ。ウリエンジェ…。」
「ふふ…貴方の海賊姿も。様になっていますよ…。」
カルヴィンがそっとウリエンジェの顎を掴む手を離し、頬の鱗模様を擦らないようそっと手の甲で撫でる。自分をうっとりと見つめるカルヴィンの眼差しに、ウリエンジェは意味ありげに微笑んだ。芝居がかった声音で囁く。
「さて…粗野なる海賊の君よ。私を捕らえ、何を企むのか。不老不死の言い伝えか、人魚の涙が生む富か…。」