有栖川夏葉はとにかく張り切っていた。
順に成人を迎えた樹里、智代子同様、凛世にもとっておきのシャンパンを振る舞うと決めていた。
以前から凛世と飲む約束は取り付けていたのだが、彼女の口から意外な言葉が飛び出し予定が大きく変わった。
曰く、世間一般で言う大衆向けの居酒屋で飲みたいとのこと。
凛世の誕生日からは3ヶ月ほど月日が経過していたが、その間に大学の友人とも飲んでいたのだろうか。
随分と俗世に染まった姿を見て、あの頃の自分と同じようなお嬢様ではないのだと気づき、少しだけ寂しくなる。
「夏葉さん……もし、このような場所がお嫌いでしたら……凛世の事はお気遣いなく」
「え!?嫌いだなんてそんなことないわよ!」
「そうなの……ですか?」
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