よいどれひこまひ 熱と眠気で波打ち始めた視界の中、見慣れた緑と白の背中が遠のいていく。薄いノイズのかかった脳がそれをぼんやりと補足し、咄嗟に手を伸ばしたが、まだ中身の残ったジョッキに爪が当たって小気味いい音が鳴っただけだった。
復興事業が板についてきたここ最近の未来機関において、月初めの土曜は飲み会という暗黙の了解が広まりつつある。今日も例に漏れず、その二次会としてやってきたこぢんまりとした居酒屋で、日向は酔いに酔っていた。カン、とジョッキとジョッキの合わさる軽快な音が響き渡る。隣のテーブル――弐大、終里、花村、そして酔い潰れて寝てしまった田中たち――からだった。
その和気あいあいとした喧噪を横目に、日向の横でちびちびと酒を舐めていた左右田がぼそりと口に出す。
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