雫#主スト
雫
教室の窓を見遣ると、雨が降っていた。天気予報を見ずに飛び出したレージは、自分の寝坊を恨んだ。折りたたみ傘を常に持ち歩け、とストロールに言われていたのを忘れていたの自分も。
学校の寮は遠くはないけれど、この降り方なら濡れることは覚悟しなければならない。待つから濡れて帰るか。空を見ても雲の切れ間は見当たらず、待ったところで止む保証がないから、濡れて帰る、の一択しかないのだけれど。
スマートフォンを取り出すと、さっき思い出していたストロールから、チャットへ連絡が来ていた。一緒に帰れるか?と簡潔な言葉に、レージは雨も忘れて気分がふわふわと温かくなる。歳上の恋人の微笑みを思い出すと、居ても立っても居られなくて、レージは帰ろう、とだけ打ち込んで待ち合わせの場所へ向かった。
1926