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    主スト
    懲りずに学パロ

    と言うのもメタファーの世界で傘の記憶がなく…ただ二人の身長差的にどうしても書きたかったはなし。

    #主スト



     教室の窓を見遣ると、雨が降っていた。天気予報を見ずに飛び出したレージは、自分の寝坊を恨んだ。折りたたみ傘を常に持ち歩け、とストロールに言われていたのを忘れていたの自分も。
     学校の寮は遠くはないけれど、この降り方なら濡れることは覚悟しなければならない。待つから濡れて帰るか。空を見ても雲の切れ間は見当たらず、待ったところで止む保証がないから、濡れて帰る、の一択しかないのだけれど。
     スマートフォンを取り出すと、さっき思い出していたストロールから、チャットへ連絡が来ていた。一緒に帰れるか?と簡潔な言葉に、レージは雨も忘れて気分がふわふわと温かくなる。歳上の恋人の微笑みを思い出すと、居ても立っても居られなくて、レージは帰ろう、とだけ打ち込んで待ち合わせの場所へ向かった。

    「レージ」
     長身を見つけて駆け寄ると、ストロールも笑った。帰ろうか、とストロールが手に持っていた傘を広げる。そこでレージは、あ、と思い出した。
    「傘、無いんだった」
    「え、…傘はいつも持っておけと行ってただろ?」
    「忘れちゃって」
     そう呟くと、まったく、とストロールが折りたたみの傘をレージに差し出す。
    「長い距離でもないし、狭いの我慢しろよ」
     そう言って笑うから、レージは鼓動を早めながら頷いた。我慢なんてとんでもない。ありがとう。そんな気持ちで。
     屋根の下から歩き出すと、雨が傘を強く叩いた。レージはカバンを前に抱えて、時折ストロールを見上げながら歩く。制服の裾がすぐに湿って、乾かさないとなぁと考えた。
    「今日さ、ガリカが昼休みに──…」
     他愛も無い話を、雨音に重ねるように呟く。ストロールが笑うから、レージは今日楽しかったこと、授業のこと、そんな取り留めないことを話した。そうしている間にすぐに寮に着いてしまった。
    「傘、ありがとう」
    「あぁ」
     ストロールが傘を振ると、勢いよく水滴が飛んでいく。レージは、しかしそれよりも、こちらに向けられたストロールのカバンと肩がぐっしょりと濡れていることが気になった。
    「ストロール、肩濡れてる」
    「ん?あぁ、大丈夫だ。…乾かしてくる。じゃあな」
     お前も濡れたならちゃんと乾かせよ、とストロールは建物に入っていく。
    「あ、」
     謝ろうと思ったけれど、引き留めて風邪でも引かれたら困るから、レージはストロールを追えなかった。チャットで後で送っておこうと思いながら、自室へ向かう。
     
     十日後、また雨が降った。そしてまた、レージは傘を忘れた。カバンの中の整理なんてしなければ良かった、とレージは悔いた。無くしたと思っていたプリントは見つかったけれど、代償が大きい。
     昇降口の屋根の下で、どんよりと暗い空を見上げる。走れば何とかなるかも知れない。飛び出そうとしたところで、名前を呼ばれた。
    「っ、ストロール、」
    「この時間だったのか。一緒に帰るか?」
     その微笑みにレージは弱くて、走り出そうとしたのを止める。また傘を忘れた自分は、きっと今まさにストロールがカバンから出したあの傘の下を歩くことになるだろう。それがとても申し訳なく思えて、レージは逡巡した。
    「えっ、と…その」
    「…また傘を忘れた、とか?」
    「う……昨日までは、入ってたんだけど…」
    「全く、仕方ないやつだな」
     ほら、と傘が向けられる。ストロールは優しい。だからこうなるのは当然で。それがレージには申し訳なくて、でもストロールと隣り合って歩くのはとても嬉しくもあって。
    「ごめんね、ストロール」
     落ち込んで言えば、気にするなとレージの好きな顔で柔らかく笑うから、レージはいろんな気持ちがない混ぜになった。
    「しかもさ、…僕は傘も持てないし」
    「気にしなくて良い」
     歩き出すと、雨粒の音がざぁっと鳴る。
    「ストロールの方が濡れちゃうし」
    「…それは、まぁ、お前に風邪引かれたくないからな」
     一瞬さぁっとストロールの頬が染まった理由が、レージには分からなかった。
    「僕だってストロールが風邪引くのは嫌だ」
    「…じゃあ、…そうだな」
     隣を、同じ学校の生徒が歩いて追い抜いていくのを、ストロールは少し見送ってから、レージの方を見た。
    「……あっためてもらったら、大丈夫、かも?」
     ストロールの頬が更に染まったのを見て、レージは思わず喉を鳴らした。
    「あ!へ、んな意味じゃないかな!?」
    「あ、暑いって言うくらい、するね…」
    「だから、ちが、…!」
     傘を持つ長い指に手を重ねると、雨粒がぱたぱたっと地面に不自然に落ちた。
    「早く帰ろ?」
    「………そう、…だな」
     少しだけ、歩調が速くなる。雨で冷えた肩が汗をかくまで、もう少し。
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