私の○○歌愛
化粧品とか、女の子に必要な物とかそういうのを買って万屋を出ると年若い女の声が聞こえた。
媚びへつらうような甲高い声に嫌気がさす。その女が話しかけていたのがうちの本丸にいる歌仙兼定だから余計に。
「刀剣男士様ですよね…!?」
「え、まぁ…」
「すっごーい!本物初めて見ました!」
…何よ歌仙ったらデレデレしちゃって。
人には散々秩序がどうだ、節度がどうだばっかりのくせにいざ自分が女から話しかけられたらあんなにデレデレするの?
審神者じゃなくこの辺りに住む一般人らしき女2人は、良かったらお茶でも…なんて言ってる、良くないわよ!
なんだか腹立たしくて荷物を持ったまま歌仙の腕に抱きつく。
「私の歌仙よ、近寄らないでちょうだい」
私を見るや否や、女2人は舌打ちをしながら離れていった。
話しかけた男が悪かったわね。
「全く、女の子に必要なものがあるから外に出ててとは言ったけど女にデレデレしてろなんて言ってないわよ」
「……」
「歌仙…?」
何も言わない歌仙を見れば口を手で覆い、顔を真っ赤にしていた。
からかったりして赤くなる事はあるけどこんな風になるのは初めてで…なんだかこっちが照れくさくなった。
慶ね
「いいなぁ、大慶直胤…私一番最初の鍛刀でもこの間の鍛刀でも鍛刀出来なかったんですよぉ」
「はぁ…」
水心子正秀様を近侍にした審神者様は2年ほど前に審神者研修を終えて審神者になった方でそこそこ霊力も高い優秀な方だ…鍛刀運以外は。
上司に命令され彼女の担当になったのが半年前。その時から大慶直胤を鍛刀出来なかったと何度も何度も愚痴をこぼしていた。
「それにしても政府って酷いですよねぇ、私たち審神者に歴史を守れ〜なんて言いながらこうやってたまに期間限定の鍛刀なんかやってぇ」
「それは、審神者様の霊力を調査する目的で…」
「えぇ〜それってぇ、鍛刀出来なかった審神者は霊力が低いって事ですかぁ?」
こンのクソガキ…!!
横に控える水心子正秀様が申し訳なさそうな顔をして後ろでぺこぺこと頭を下げている。
「そうだ!役員さんの大慶、私に譲渡してもらえませんかぁ?」
「主!それはいくらなんでも!」
「でもぉ、正秀も清麿も、大慶来たら嬉しいでしょ?」
「それは…そうだが…」
2人の会話が耳に入ってこない。
大慶直胤を譲渡しろ?何を言っているんだこの女は。
「ね?いいでしょ?お仕事頑張りますからぁ」
「…いえ頑張らなくて結構です、やる気がないなら辞めていただいて」
「…は?」
「彼は私の大慶直胤です、それを譲渡なんて絶対にしません」
ギャーギャー騒ぐクソガキを置いて政府まで戻ってきた。
はぁ減給されるかな…
「んふふ」
「なんですか…」
「ねねちゃんだけの俺だよー」
頭に血が昇って忘れてたけどいるんでした…。
ニコニコ…というかにまにまと笑う大慶直胤を見つつ、上司にあのクソガキを押し戻そうと決意した。
後雨
「ねぇ主、ごっちん連れてく?」
「連れてかない、光忠連れてくから」
「ごめんね後家くん。夕餉の買い出しなんだ」
翌る日
「主!今日こそごっちん、連れてくでしょ?」
「今日は今週の誉が一番多かったごこちゃんにご褒美買いに行くから無理」
「ご、ごっちんさん…ごめんなさい…っ」
また翌る日
「主ー!今日こそ…!!」
「ん?主なら姫鶴さん連れて万屋行ったよ」
「なしておつうはいいの…!主…!!」
「主に聞きたいことがあります」
「改まってなに?」
「なんでボクを万屋に連れてってくれないの?」
「………はぁ、最近万屋の辺りに刀剣男士に声をかける一般女子がいるって聞いて、光忠とかごこちゃんとかおひぃは隣にいてくれること多いけど後家はフラフラ万屋の中フラつくじゃない…それで他の可愛い女の子に声かけられてる後家見るの嫌だし…私の後家なのに…」
「主、もう一回言って」
「貴方は、私の後家兼光」
「ん♡主だけのごっちんだよ♡」
面倒臭いこと言った気がする…