あべこべな本音多分俺はイライラしていた思う。
きっと、リドルくんよりもずっと。
多分ひどい独裁者だったと思う。
リドルくんよりずっと。
傍観を決め込んでいるくせに、自分の手は汚さず裁きを下していた。それも、その時の気分で。
だから、ホッとした。
リドルくんが入ってきて、決闘を挑まれて負けて…自分が寮長でなくなったことに。
…やっと本当の傍観者になれることに。
「ケイト」
「なぁーに、トレイくん。」
「手を抜いただろう。」
「酷いな、見てたでしょ。リドルくんが強かった。ただそれだけだよ。」
追いかけてきた、トレイの顔を見る気もしなかった。
一トランプ兵のくせに、いちいち説教たれるために追いかけてくるなんて、どれだけ世話好きだよと嘲笑が漏れる。
「俺にはそうとは見えなかった。」
「俺のこと、高く見すぎたよ。それに俺としては寮長の座をさっさと譲れてラッキー☆くらいに思ってるよ~。」
言葉を発している自分ですら、全部本音で、全部嘘に聞こえる。
「本心か」
「…しつこいよ、トレイ·クローバー。」
冷えた俺の声にトレイが一歩後ろに下がるのを感じた。
「負けは負け、寮長はお前がよく知ってるリドル·ローズハートに変わった。今後も副寮長はトレイのままだよ。それに、協力しないって言ってるわけじゃない。面倒事はごめんだけどねぇ〜。」
そう言って、オレは立ち止まるトレイを置き去りにしてその場を去った。