さよならだけならいくらでも 4 夢を見る。
夢は大抵いつも同じ。
僕はひとり迷子のように何もない空間を歩き続けている。どこまで行ってもただ無の空間が広がるだけのその場所に『僕』といくつもの『声』がいる。
声はやさしく僕の名前を呼ぶ。遠くから。それは懐かしい誰か、一瞬交わっただけの誰か、いずれにせよ今はもういない誰かの声をしている。
『カカワーシャ、カカワーシャ』
『祝福の子』
『地母神の祝福を受けた子』
呼ぶ声は少しずつ近付いてきているのに僕はその主を探し出すことができない。そうしてすぐ背後まで迫ってきた声は耳元で囁くのだ。
『どうしてお前だけが生きているの』
『お前が殺した』
『お前の幸運が』
『殺した』『殺した』『殺した』
幾つもの声が僕を責める。
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