「とられた」ついしかめっ面になってしまう。
それ、私のなのに…!
目の前で私の抱きまくらを抱きしめながらすやすやと眠る恋人をきれいだと思いつつも憎たらしく思う。
(けーちゃんが疲れてるのはわかってる…わかってるけど…!)
私のお気に入りの抱きまくらのネコちゃんが歪んだ形で彼女の腕の中に収まっている。抱かれているというよりかは締められてる…に近い。
ぐっすり眠っているけーちゃんの腕の中から抱きまくらを引っ張ってみるがガッチリときめられていて引きずり出せない。
「力強ぉ……っ!」
これ以上引張れば生地が伸びてしまうと思い諦めて手を離す。
(もう一個抱きまくら買うしかないのかなぁ…)
まさかけーちゃんがこの抱きまくらを使うなんて思ってなかった。最初は私が抱いて寝ていると何故かうまいことスポッと引きずり出しベッド下へ放り投げられていたが…
今や自分のもののように抱きまくらとして使うなんて…!
ちょっとムカッとしたので寝ている彼女の頭を軽くぺちっと叩けば「うーん…」と唸るだけだった。
こんなことをしてても仕方ない。
それに、私が抱きまくらを買った理由は寂しさを紛らわせるためだったし…(けーちゃんには勿論言ってないが)
「私がいるならその子抱きしめなくていいじゃん…」
人形に嫉妬…をしているわけではないけど、なんだか少し複雑な気持ちになってしまっている。
そんな私の気も知らないですやすやと気持ちよさそうに私の名前を寝言で呟く恋人に「けーちゃんなんてもう知らないんだから!」と捨て台詞を残し別の抱きまくらをポチるのだった。