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    韮山小田

    大体尻切れ蜻蛉

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    韮山小田

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    西ワンドロ1ジュとキ

    じっとりと汗ばむ夏の日だった。前日に降った雨がそうさせるのか、ニューミリオンでは珍しい湿度の高い午後。
     流石にこんな日に空調の整えられた室内を出るのは煩わしく、ジュニアが入居してから強化された防音の自室でギターを携え時折傍らのノートに何事かを書き込む。不在の同居人にうるさいと邪魔をされることもなく、久しぶりに充実した一人の時間であったのだが。
    「…なんだよ、じっと見て」
     いつ入ってきたのか気がつかなかった。顔をあげてぐっと伸びをすると丁度正面に位置する年上の色男のベッドにだらりと両手をついて、キースがぼんやりとジュニアを見つめている。
    「懐かしいなと思ってよ」
     何が? そう聞こうとして、目線はジュニアではなくその下に向けられていることに気がついた。
    「てめえもギターやんのか?」
    「やるってほどじゃ…」
     ぱっと華やいだジュニアの表情に圧されたように、キースは曖昧に言葉尻を濁した。
    「アカデミーの頃に、ちょっとだけ触ったことがあるんだよ。ダチがコピーバンドやりたいって言うからさ、付き合い程度だよ」
    「へえ! どこのバンドなんだ? おれ、結構古いのも知ってるぜ」
    「あ~、なんだったっけな。忘れちまった。でも聞いたことねえバンドだったから、おまえも知らないと思うよ」
    「…ふうん。つまんねえの」
    「オレのことはいいから、続けろよ。曲作ってんだろ」
     キースは会話を打ち切るようにフェイスのベッドに寝転がる。整えられたシーツがキースの体重を勢いよく受け止めて乱れた。
     ぐちゃぐちゃのシーツを見たジュニアは、潔癖症のきらいのあるフェイスは顔をしかめて怒り出しそうだな――とそう思ったが、既にキースの煙草の匂いは移ってしまっているだろうから指摘しようと開いた口をまた閉ざした。
     何の用で部屋に来たのかと思ったが、キースはこちらを眺めるだけでそれきり会話をしようという様子はなかった。尚も募る不信感も、邪魔をしないのであればいいか――とすぐに霧散する。
     
     フェイス曰く、作曲中にメロディを口ずさむジュニアの声はいつもよりワントーン高くて、囁くように抑えられた声量は時折掠れて色っぽい。
     それを聞いた時は、女っけのない職場で幼げな容姿のジュニアに血迷ったのかとギョッとしたが、即座に呆れた顔で否定された。彼女が複数人いるという少年は語る言葉にもどこか色が滲むものらしい。誤解を生む言い回しだった。
     それを思い出して、気まぐれにジュニアたちの部屋を訪れてみると、確かにフェイスの表現も間違いばかりというわけではなかったようである。
    (絵になるもんだなあ…)
     常の騒がしい姿ばかりが印象に残るが、目を伏せて静かに歌っている姿は彼の本来の造形の美しさを際立たせる。日に透ける金髪は彼を無垢な天使のように見せ、響くギターの音色は天上の調べか。生憎、ロックであったけれども。
     ふわ、とひとつ大あくびをする。このまま眠ればフェイスは怒るだろうか。確実に怒るだろう。友の弟のベッドはやたらと良い匂いがして、とろりとキースを眠りへ誘う。
     遠ざかり薄くなる意識の端で、奏でられ続ける音楽が心地よくて。気まぐれに過ごすこんな日も良いものだ――口元が緩んで、今度こそ眠りについた。
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    韮山小田

    DONEキスブラ身内ワンライ3 「甘い誘惑」「好きだよ」
    この男の常套句である。
    酒精に目の下を朱に染める姿はなるほど昼間の青白い顔よりも魅力的であった。
    男盛りの28という年齢、ヒーローという社会的地位、それなりに整った顔立ちに、骨に響くような低く甘い声。
    腰に手を回されて、付け根のあたりを撫でさすられる。暖かい色の照明の下で二人きり、膝を合わせるように並んで座ってそんな性感を煽るような仕草をされれば、プロの女でさえころりと身を任せるのかもしれない。

    しかしブラッドは初心な小娘ですらない。
    友人のごつごつした指が腰骨を弄るのにも、呆れて手を振り払うだけである。

    「眠いのならベッドへ行け」
    「え~…やだよ…」

    宙ぶらりんになった手を一瞬見つめたキースはしかし懲りてはいない様子だった。同性の友人に対して何が楽しいのか、酔ったキースは大体にしてブラッドにべたべたと絡んだ。
    出会った当初が嘘のようである。
    15のキースは周囲を小馬鹿にしたような目をしていて、それだけパーソナルスペースが広かった。
    しかし年月は彼のかたくなさに勝ったようで、30へのカウントダウンが終わりに近づいてもまだこんなことをしている。
    恋人でもあるまいし、他 1700