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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    ぼんど800字。チェズモク。うっすらネタバレしているのでクリア後推奨。香りについて。

    ##BOND

    ■香りの話


     朝食後。ヴィンウェイのセーフハウスのキッチンで、チェズレイが食器を洗っている。そこへモクマが使い終わった湯呑みを手に近づいた。
    「それも私が洗いますので置いておいてください」
    「あ、いいの? 悪いねえ」
     そう言ってチェズレイが洗い物をしているシンクに湯呑みを置く。すると近づいた拍子にふわりとほのかな香水の匂いがした。石鹸のような、清潔感のある香り。
    「お前さん、いつもいい匂いがするねぇ」
    「それはどうも」
     そうしてモクマはチェズレイの隣に立ったまま、あの夜を思い出す。ACE本社ビルから落下していく際に、この男に抱き込まれた時。これとは違う匂いがしていたことを。
    「そういえばお前さん、潜入の時はいつも香水をつけてなかったよね? ACE本社に乗り込んだ時は何かつけてた?」
     完璧主義者のチェズレイは、香りが邪魔になってはいけないからと潜入ミッションの時はいつも香水をつけていないはずだった。モクマはそのチェズレイの傍にいたこともあるが、忍者の嗅覚でもわからないほど何の匂いもしなかったことを覚えている。
    「いえ、あの時も何もつけていませんでしたけど……どうかしました?」
     チェズレイが洗い物を終えて、食器を水切りラックに置く。それから手をタオルで拭く。
    「いやぁ、お前さんがあの夜に俺と空中ランデブーしてくれた時、すごく安心する匂いがしたから」
     へらりと笑うと、チェズレイは目をみはる。それから目を細めて笑った。
    「あの時の私は汗と埃の匂いしかしなかったはずですけど」
    「だよねぇ。俺も覚えてるのは埃と血と、たぶんお前さんの汗の匂いだけだ」
     でも、とモクマは微笑んで言葉を続ける。
    「――あの時の匂いが、いまだに忘れられない」
     チェズレイは目を細めて口の端を引き上げると、モクマの頬に触れた。
    「それは、これからいくらでも上書きして差し上げますよ」
     確かめるように、水で冷えた親指がモクマの唇をそっと撫でていく。
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    高間晴

    DONEお題箱からのリクで風邪を引くチェズと看病するモさんの話。チェズモク。■いちばんの薬


     とある国で拠点にしているビル。上階にある執務室にて。
     モノトーンでまとめられた無駄のないスタイリッシュなこの部屋は、組織を率いるチェズレイの好みに合わせたものだ。室内にはドアの前に一人、チェズレイの側近である黒服の男が控えている。そんな中でチェズレイは黄昏の景色が映る窓を背にして机に座り、部下から提出された麻薬の密輸ルートに関する資料に目を通している。
     ――頭が痛む。これはたぶん熱もあるなと、チェズレイはそんなことを頭の隅で考えながら、涼しい顔を崩さない。
     そこへノックの音と「チェーズレイ」と呼ぶ声がしたので、はっと顔を上げてしまう。黒服が心得たように黙ってドアを開ける。そこには予想通りモクマの姿があった。書類を手に机までグレーのカーペットの上を下駄で歩いてくる。顔を見るのは二週間ぶりだ。チェズレイはすぐさま目の前の愛しい相棒兼恋人にハグしたかったが、部下の手前、そういうわけにもいかない。
    「ただいま~。久しぶりだね」
    「おかえりなさい、モクマさん」
    「お疲れさん。これ、俺がニンジャジャンの仕事やりながら新しく手に入れた、人身売買に関わってる組織のリストね」 2295