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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    敦太。心中したいだざいさん。

    ##文スト

    もう諦めてほしい 敦が武装探偵社に入社して二年ほどが経つ。身の回りもだいぶ落ち着いてきたので鏡花との同居をやめて、二人は寮の部屋で別々に一人暮らしをするようになった。
     そんな敦の最近の困り事と云えば。
    「宅配便でーす」
     その声に敦は玄関を開けて荷物を受け取る。少し重い。見ればよく知った通販サイトの箱だ。しかし何かを頼んだ覚えはない。はあ、とひとつ溜息をつくと、部屋の中に戻って箱を卓袱台の上に置く。
    「太宰さんってば、また僕んちを届け先に設定したな……」
     そう。これは今に始まったことではない。
    「だって寝てる時に荷物持って来られたら受け取れないじゃない」というのが太宰の言い分だ。時間指定するなりなんなりすればいいだろうと敦は言ったが、太宰は「やだ。めんどくさい」の一言で敦の家を荷物の届け先にしている。
    「こんにちはー、敦君。邪魔するよー」
     そこへ太宰が部屋に入ってくる。いつの間にやら合鍵を作られてしまったので、それにも文句を云ったのだが聞いてもらえなかった。
    「丁度良かった。太宰さん、また何か届いてますよ」
     呆れ顔で箱を指差すと、太宰は笑った。
    「あ、こないだ頼んだアレかな」
     太宰が嬉しそうな顔で梱包のガムテープを剥がす。ガサガサやっていると思ったら、箱の中からは七輪と太めのロープが出てきた。卓袱台の上に並べて視線を動かしている。
    「うーん、敦君と心中するならやっぱり首吊りより練炭かな?」
    「太宰さん、もう自殺とか心中とかやめましょうよ」
     げんなりした顔で敦は云う。この二人は恋仲だが、太宰は一向に心中を諦めてくれない。
    「ええ~? だって心中で同時に死ねば片方が片方を置いていくなんてことが起きないのだよ?」
     その昔に太宰を置いて死んでいった男の話は、当人から聞いたことがある。だからこそ。敦は顔を引き締めて太宰をぎゅっと抱き締めた。
    「僕は太宰さんを置いて死にませんから」
    「……それだと私があの世で寂しい」
    「じゃあ、二人で長生きしましょう。この世で二人で出来ること、全部やってからでも遅くはないですよ」
     その言葉に、敦の耳を嬉しそうな太宰の笑い声が擽った。
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    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。年下の彼氏のわがままに付き合ったら反撃された。■月と太陽


    「あなたと、駆け落ちしたい」
     ――なんて突然夜中に年下の恋人が言うので、モクマは黙って笑うと車のキーを手にする。そうして携帯も持たずに二人でセーフハウスを出た。
     助手席にチェズレイを乗せ、運転席へ乗り込むとハンドルを握る。軽快なエンジン音で車は発進し、そのまま郊外の方へ向かっていく。
     なんであんなこと、言い出したんだか。モクマには思い当たる節があった。最近、チェズレイの率いる組織はだいぶ規模を広げてきた。その分、それをまとめる彼の負担も大きくなってきたのだ。
     ちらりと助手席を窺う。彼はぼうっとした様子で、車窓から街灯もまばらな外の風景を眺めていた。
     ま、たまには息抜きも必要だな。
     そんなことを考えながらモクマは無言で運転する。この時間帯ともなれば道には他の車などなく、二人の乗る車はただアスファルトを滑るように走っていく。
    「――着いたよ」
     路側帯に車を停めて声をかけると、チェズレイはやっとモクマの方を見た。エンジンを切ってライトも消してしまうと、そのまま二人、夜のしじまに呑み込まれてしまいそうな気さえする。
     チェズレイが窓から外を見る。黒く広い大海原。時 818

    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。眠れない夜もある。■インソムニア


     同じベッドの中、モクマはチェズレイの隣で寝返りをうつ。
    「眠れないんですか?」
    「なんか寝付きが悪くてな。……寝酒でもするか」
     起き上がろうとしたモクマの肩を押し止める。薄暗がりの中でプラチナブロンドが揺らめいた。
    「寝酒は体によくありません。それだったら私が催眠をかけて差し上げます」
    「えっ」
     モクマは少しぎょっとする。これまで見てきたチェズレイの催眠といえば、空恐ろしいものばかりだったのだから。するとそれを見透かしたようにアメジストの瞳が瞬いて眉尻が下がる。今にも涙がこぼれ落ちてきそうだ。――モクマはこの顔にたいそう弱かった。
    「モクマさん……私があなたに害のある催眠をかけるとでも?」
    「い、いやそんなこと思っちゃおらんけど……」
     言われてみれば確かにそうだ。この男が自分にそんなことをするはずがない。
     しなやかな手によって再びベッドに背を預け、モクマは隣に横たわるチェズレイと目を合わせた。
    「目を閉じて、ゆっくり呼吸してください。体の力を抜いて」
     穏やかな声に、言われるとおりにモクマは従う。
    「想像してください。あなたは果てのない広い草原にいます。そ 854

    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。結婚している。■いわゆるプロポーズ


    「チェーズレイ、これよかったら使って」
     そう言ってモクマが書斎の机の上にラッピングされた細長い包みを置いた。ペンか何かでも入っているのだろうか。書き物をしていたチェズレイがそう思って開けてみると、塗り箸のような棒に藤色のとろりとした色合いのとんぼ玉がついている。
    「これは、かんざしですか?」
    「そうだよ。マイカの里じゃ女はよくこれを使って髪をまとめてるんだ。ほら、お前さん髪長くて時々邪魔そうにしてるから」
     言われてみれば、マイカの里で見かけた女性らが、結い髪にこういった飾りのようなものを挿していたのを思い出す。
     しかしチェズレイにはこんな棒一本で、どうやって髪をまとめるのかがわからない。そこでモクマは手元のタブレットで、かんざしでの髪の結い方動画を映して見せた。マイカの文化がブロッサムや他の国にも伝わりつつある今だから、こんな動画もある。一分ほどの短いものだが、聡いチェズレイにはそれだけで使い方がだいたいわかった。
    「なるほど、これは便利そうですね」
     そう言うとチェズレイは動画で見たとおりに髪を結い上げる。髪をまとめて上にねじると、地肌に近いところへか 849