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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    敦太。幸せになるのが怖いあつし。

    ##文スト

    禍福は糾えるなんとやら 太宰の部屋。敦がふと夜中に目を覚ませば、カーテンの隙間から月明かりが射し込んでいる。蒲団から体を起こして隣を見れば太宰が静かに横になって目を閉じている。なんだか心配になって敦は太宰の口許に耳を近づけた。すると、すう、すう、と規則的に静かな寝息が聞こえたので、ほっとして敦は天井を見上げる。
     ほんの少し開いたカーテンからは、夜闇を切り裂く月光。それが二人の寝ている掛け布団と擦り切れた畳を横切って伸びている。そういえば今夜は月が眩く大きく見えるスーパームーンの夜だと、ナオミさんが云っていたっけ。
     敦は愛しい恋人の髪をそっと撫でる。最近「髪が伸びたけれど切りに行くのがめんどくさい」とぼやいていたので、今度自分が切ってあげようかと敦は思う。敦は太宰の癖のある猫っ毛が好きだった。指先からするする逃げていく髪を一通り弄ぶと、膝を抱えて蹲った。
    「……ねえ太宰さん。僕こんなに幸せでいいんでしょうか」
     ぽつりと不安を漏らす。
     孤児院を追い出されはしたものの、運良く太宰に拾われて衣食住に困らない環境を手に入れた。おまけに年上の、ちょっと困ったところがあるけれど愛しくて堪らない恋人も出来た。その幸せが敦にとっては時々言いようもない巨大な不安に変わる。
     だって、孤児院にいた頃はいつも嬉しいことがあると、なんらかの形で不幸が襲ってきていたから。例を挙げると、美味しそうな飴を手に入れるとそれは食べる間もなく年上の生徒に奪われる。だから敦は今のこの幸福が何かの拍子に失われるんじゃないかという不安を抱いていた。例えば、太宰が死ぬだとか。
    「いいんだよ、敦君」
     耳朶に吸い込まれる言葉はとても優しかった。はっと隣を見れば太宰がうっすらと目を開いていた。包帯の巻かれた腕を伸ばしてくるので、敦はそれを捕らえた。いつも通り、その手のひらの体温は敦よりも少し低い。
    「君は幸せになっていいんだ。誰にもそれは邪魔できない」
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    高間晴

    DOODLEチェズモク800字(いつもより字数オーバー気味)。珍しく二日酔いのモクさん。■二日酔いの朝


     朝、モクマはベッドから身を起こしてずきずき痛む頭を抱える。二日酔いなんて酒を飲み始めた年の頃以来経験していない。だが、昨夜はチェズレイが隣でお酌なんてしてくれたから嬉しくなって、ちょっとばかり飲みすぎた気がする。それ以降の記憶がない。
     ふいに部屋のドアをノックする音が聞こえた。チェズレイの声が「朝ごはんが出来ましたよ」と告げる。モクマは返事をして部屋を出ると洗面所へ向かう。冷たい水で顔を洗うと少しさっぱりした気がして、そのままダイニングへ。
     おはようと挨拶をすればチェズレイが鮮やかに微笑む。味噌汁のいい匂いがする――と思ったのは一瞬で、吐気をかすかに覚えた。
     ――あ、これ完全に二日酔いだわ。
     典型的な症状。食べ物の匂いがすると胃のあたりが気持ち悪くなる。頭痛もぶり返し始めた。だがチェズレイがご飯をよそってくれているのを見ると、どうにも言えない。
     朝ごはんはやっぱり白米がいいな、なんて冗談半分で言ったら、その日のうちに炊飯器を取り寄せて味噌汁の作り方までマスターしてしまうのがこのチェズレイという男だ。そこまで想ってもらえるのは嬉しいが、時々、ほんの少しだけ 892

    高間晴

    DOODLE字書きだって洒脱モを書きたかった……というだけのアレ。チェズモク。■オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ


     それは突然の雨だった。
     昨日、チェズレイとモクマの二人はとある国に拠点を移した。モクマがそのセーフハウスの近辺を、どんな店があるのか見て回っていた。
     ――あそこのラーメン屋、うまそうだな。チェズレイはきっとついてきてくれないだろうけど。
     なんて思いながら歩いていく。するとみるみる空が曇って雨が降り始めた。
     まずい、傘なんて持ってないぞ。
     モクマはとっさに青藍の羽織についていたフードをかぶると、慌てて下駄を鳴らしながらセーフハウスに向かってアスファルトを駆け抜けた。雨はどんどん激しさを増していく。確かにスコールが多い国だとは聞いていたけれど。顔に大粒の雨のしずくが次々と当たるのがわかる。
     約二十分の後。セーフハウスの玄関を開けて駆け込むと、チェズレイが慌てて出迎える。
    「モクマさん……! いま迎えに行こうとしていたところで――」
    「ただいま、チェズレイ。いや~いきなり降り出すからびっくりしちゃった」
     言いながらフードを脱ぐと、羽織がだいぶ雨を吸って重くなっているのに気づく。全身濡れ鼠だ。「待っていてください」と言い置いてチェズレイが 1511