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    kemari94

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    kemari94

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    何でもかかえてしまうロナルドくん。ドラちゃんから叱咤されるのも見たい

    #吸血鬼すぐ死ぬ
    vampiresDieQuickly.
    #吸死
    suckedToDeath
    #ドラロナ
    drarona
    #女体化
    feminization
    #妊娠
    pregnancy

    星屑ちょっとした気の迷いだったのかもしれない。
    もうどうすることもできないし、誰かに言うこともできない。


    あの日は月すらも出ていない星々がやけに明るく見える夜だったのを覚えている。
    新横は明かりが多く滅多に星なんて見れないが、今日はやけに明るい星3つが光っていたのだ。日が落ち起きてきたドラルクと日用品の買い物に出た時あのめちゃくちゃ光ってる星って何だと聞いてみた。

    「ああ、あれは”デネブ” ”アルタイル” ”ベガ” 夏の大三角形だよ。何だいこんなの小学生で習う様な基本中の基本だぞ。そんな事もわからないのでちゅかゴリルドくんは」

    ぷぷぷ〜〜〜とバカにするドラルクを息を吸う様に砂にした。
    その横で人生で一回は満天の星空を見て見たいもんだな。と呟いてみた。

    「それなら周りに何も明かりがないところとか良いんじゃないかな。君に爆破されてしまったドラルクキャッスルも山の中で周りの明かりもほとんどないから星はすごく良く見えるよ」

    へーと特に興味なさげに相槌をした。

    買い物をした後も、予定していた依頼もなく来訪者もない日だった。ギルドからの招集がかかることもなかったため早めに事務所を閉め休業日にしたのだ。休みにしたからと言って何かしたいこともないし、執筆中のロナ戦はこの間フクマさんに引きずられる形でオータム本社でパン粉一歩手前で提出したばかりだ。
    何をするか、どうするかを考えあぐねていると、ドラルクがこんな提案をしてきた。

    「そんなに悩んでいるんだったら、私と一緒に映画でも観ないかい?」

    ジョンも今日のお昼からこの間のフットサル仲間たちと温泉旅行に行っているし、私もあった積みゲーあらかた終わっちゃったから暇なんだよね〜、と付け加えた。
    映画か・・・と少し思案したが、たまにはこいつに付き合ってやるかとその案に乗ったのだった。

    「クソなB級映画じゃねーだろーな」
    「クソとは何だクソとは!!B級の中には良い話のものだってあるのだぞ!」

    まあ私が観るのはほとんどクソなB級だがなと最後に付け足し、やっぱりクソじゃねぇかと一蹴しドラ公を砂にした。
    ドラルクはナスナスと元に戻りながらも、今日観る映画はどれにしようかと迷い始め、定期契約している動画視聴サービスの画面を表示させた。わたしもその横から覗き込みずらっと並んでいる映画のタイトルを何気なく見ていた。
    有名なタイトルから知らないタイトルが入り混じりしている中、何となく気になるタイトルとコンセプトアートがあった。指差しをし、これが気になるの?というドラルクの問いかけにわたしは少しだけと答えた。
    時間はたっぷりあるから今日の1本目は君の選んだものにしようと、いそいそと準備を始めたのだった。ドラルクは前に半田が置いて行ったプロジェクター一式を引っ張り出してきた。予備室の肥やしになっていたものが思わぬところで役に立ってよかったと思いつつ、いつの間にか増えているいらないものをどうにかして処分しないとと考えを巡らせていると、準備の終わったドラルクがソファーに座りテーブルの椅子に座っているわたしにこっちにおいでと手招きした。大人しく横に座り映画を観始める。
    やはり大きいスクリーンで映画を観ると臨場感が違うねとドラルクは話しかけてきた。まあそうだな、そこは半田に感謝しないとな。とちょっとした話を織り交ぜながらもどんどん映画は進んでいく。わたしのチョイスしたのはどうやら恋愛映画の様だった。日本語吹き替えが無い映画の様で必然と字幕なのだが、主人公の女性が夜にしか会うことができない1人の男性と恋に落ちていくという内容らしい。良くも悪くも淡々と物語が進むのだが後半になるにつれ色を見せる様な場面が多くなる。
    そしてわたしは後悔する。なぜこの映画を選んでしまったのだろう。この映画の女性が夜にしか会えない男性と恋に落ちていく物語、相手の男性がなぜ夜にしか会えないのか大体の察しはついていた。そう自分の隣にいるやつと同じ種族。吸血鬼なのだ。



    選んでしまったからには最後もで見ないといけないと思い、隣にいるドラルクをなるべく意識しない様に視界に入れない様にと途中からしていたが、そんな気持ちが伝わってしまったらしい。映画最大の見せ場であろう、男女の混じり合いのシーン。直接的には表現はされていないが、恋愛偏差値の低い自分にはとてつもなく刺激が強かった。ゴリラゴリラと言われているがれっきとした女子である。そして隣にはひょろひょろのガリガリだけれども男である吸血鬼。映画と同じではないか。間違いが起きてもおかしくない。
    わたしの様子が様子が少しおかしかったのだろう、ドラルクがわたしの手に触れてこちらを覗き込んできた。


    「ロナルドくんどうしたの?」


    この時のわたしはどんな顔をしていたのだろうか?今までにない様な顔をしてたに違いない。だってドラルクが心底びっくりした様な顔でこちらを見つめていたのだから。







    そこから後の記憶は朧げだ。
    覚えているのは人間の肌よりも少し冷たい感触、でも心地よい体温。そして優しい手つきと、耳元で囁く優しい声。全て初めてのだったがいつまでも感じていたいような気持ち。そう、これこそ気の迷いなのではないだろうか。





    映画鑑賞から1ヶ月。この間にも様々な依頼やらおぽんちな吸血鬼がでたやら、半田が突然押しかけてきたり、へんなが訳のわからないこものを薦めてきたり(ドラルクが全力で追い返していた砂になりながら)騒がしい日々が続いていた。
    あの日のことははっきりとではないがところどころ覚えているが、その次の夜にドラルクが起きてきても特に様子は変わるこはなかった。ああ、やはりただの気まぐれだったのだろうと思い込み、わたしも同じく普通に話していた。
    そこからまた2〜3週間。そういえばと思う。アレがきたのはいつだっただろうか?普段は気にすることがないのだが、ここ最近忙しくてもしかしたら遅れてるのかもしれないと思い込んでいた。また、ドラルクが来る前は生活リズムもめちゃくちゃだったためか数ヶ月に1回と不順であったのだが、ほぼ規則正しい生活と栄養管理された美味しい食事のおかげでそれも無くなっていたので、気にすることは無くなっていたのだが、どうもおかしい。
    考えに考えを巡らせ行き着いた答えは一つだった。いやでも、そんなことはとぐるぐると同じことを繰り返し頭の中で答えを巡らせるも、意を決してあるものを買いに日中彼が寝ている間に出かけた。新横だと顔が割れてしまっているので、少し遠くの薬局になるべく身バレ要素を減らしあるものを購入し近くの公衆トイレに駆け込む。絶対に違うとお思えば思うほど悪い予感は的中してしまう。


    くっきり現れた2本線。この線が指し示す意味





    「・・・できちゃった。ドラ公とのあかちゃんできちゃった・・・・」






    気の迷い。ただの気まぐれ、そういう雰囲気だったから、あの場面にあのシーンだ間違いが起きてもおかしくなかった。
    でも、たった一回でできてしまうなんて思わなかった。でも、宿った命に罪はない。


    いけないのはわたしだ。


    ロナルドは夕方近くになって事務所に帰ってきた。おかえりと居住スペースからひょっこりと顔を覗かせたドラルク。今の状態を悟らせまいと、できる限り平常心を保ちただいまと返す。

    「今日起きるの早いな。どうかしたのか」

    と声をかけた。声は震えていなかっただろうかと思っていたが大丈夫だった様だ。

    「それがお祖父様から連絡が入っちゃって。私しばらく家空けないといけなくて、その荷物纏めてたんだ。」
    「へぇー、それってどれくらい?」
    「お祖父様のことだから1週間や2週間じゃ済まなそうなんだよね。なるべく冷蔵庫の食材消費させて作り置きしていくけどロナルドくん大丈夫?コンビニ弁当やカップ麺だけじゃなくてちゃんと野菜取ってね!」


    わかってるよ!!お前はわたしの母さんか!!と強めに手刀を食らわせて砂にした。
    そして心の中で好都合だと思った。



    ドラルクとジョンはその次の日祖父さんが迎えにきて故郷へ帰っていた。
    それからすぐ俺は行動に出た。薬局で黒のヘアカラーを買い、何でも揃うディスカウントショップで黒のコンタクトレンズと大きめの旅行カバンを買った。キンデメを仕事で長期間家を空けるからと嘘をつきビルの管理人に預けた。
    必要なものを全て鞄に詰めて最後に髪を染めてカラーコンタクトを入れて自分のトレードマークである赤いコートと命の次に大切にしていた仕事道具の銃をクローゼットにしまった。


    暗い事務所に荷物一式と目深にフードを被り最後にメビヤツに挨拶をした。

    「メビヤツごめんな。わたししばらくここ空ける。当分戻ってこれないと思うけどこの事務所守っててくれよな。戻ってくるまでこの帽子託したからな」

    主人が何故そんな事を言っているのか、なぜその様な姿になっているのか理解ができないメビヤツは、オロオロと心配そうな顔を向けるが、そうしている間に主電源を落とされコンセントも抜かれてしまった。

    最後の仕上げ事務所の看板の上に長期外出によりしばらく休業いたします、の張り紙。
    どこに行くあてもない、こんな夜逃げまがいなこと自分がやることではない気がするが、これが一番最善だと思った。自分で全て解決して仕舞えば大丈夫だと思った。なるべく遠くに、誰もわからないであろう場所に行かなくちゃと新横浜駅に向かう途中反対の道からショットとサテツがいるのが見えた。一瞬どきっとしたがいつもと風貌の違うのでわからなかったのであろう彼らはギルド方面へ向かっていった。
    ちいさくごめんなと口に出し足早に駅に向かう。


    ふと空を眺めるとても綺麗な星空だ。ああ、あの時もそういえば綺麗な星だったな。


    「・・・星。星がよく見えるところに行こう。」


    そう思いわたしは東京行きのチケットを買った。











    最近ロナルドの姿をみない。まるでいなくなったかの様だった。
    そんな違和感を覚えたのは常にハンター業で一緒にいるショットだった。

    「なあ、最近ロナルド来ないよな。」
    「そういえば来てないなあ」
    「最後にあいつ見たのっていつだっけ?もう2週間前くらい前だったか」

    カウンターに座りいつものごとくメロンソーダを啜りながら、隣にいたサテツもそういえばと返した。

    「マスターなんか知ってるか?大型の個人依頼が入ったとか副業の執筆が立て込んでるとか。」
    「いえ、そんなことは聞いてませんねえ。ああ、そういえば2週間前くらいですかな、ドラルクさんが実家に帰省すると言ってましたな。たしかルーマニアまで行くと。」
    「まさかついていくなんてことはないよな。ついていくならロナルド本人からも連絡が入るだろうし。」
    「ドラルクさんに確認して見ますか?」
    「おう、なんかこう落ち着かない感じでザワザワするんだよな。一応ロナルドにかけてみるか。」

    数コールした後、聞こえてきたのはおかけになった電話番号はおでになりませんという機械音声だった。

    「っち、でねぇ。マスター、ドラルクの携帯電話番号知ってる?」

    はい知ってますよと、メモをもらい自ら電話をかけてみた。


    「はいドラルク。」
    「ドラルクだな。ショットだ。悪いマスターから勝手に電話番号聞いた。」

    そんなの別に構わないよ、何かようかなと問いかけられた。

    「実は最近ロナルドがギルドにもハンターの仕事にも顔を出さないんだよ。お前今実家にいるんだろ?まさか一緒に着いてったりしてないよな。」
    「え?ロナルドくんこっちになんて着いてきてはないよ。ギルドにも行ってないの?ちょっと待ってどういうこと。ロナ戦も最近提出したばかりだからとくに引きこもる要素ないんだけど。」
    「お前のその反応、本当に何も知らないみたいだな。何かあるかもしれない俺事務所に行ってみるぜ。ドラルク携帯このまま繋いでおけよ。」

    会話の状況を聞いていた他の面子もただならぬ雰囲気を察知した様だ。

    「マスター。俺とサテツで事務所の方に行ってくる」
    「わかりました。何かあったら連絡ください」

    足早に2人でギルドを飛び出した。
    途中で事務所近くのヴァミマに寄り最近ロナルドが来たかどうかを聞いたがコンビニにも来てない様だった。嫌な予感がする、何かが起こってるどうか無事でいてくれと心の中で願うばかりだ。

    事務所のあるビルに到着するおそるそそる階段を登り扉の前まできた。

    「なんだこれ。」
    「ショットさんどうかしましたか。何かあったんですか。」
    「ドラルクよく聞け。事務所の前にこんな張り紙がしてあった”長期外出によりしばらく休業いたします”お前はこのことについて知っているか?」
    「何それ?よく見せて」

    カメラをオンにしてドラルクに事務所前の張り紙を見せる。
    紛れもないロナルドの字だ。

    「なあ、これっていわゆる失踪じゃねぇか?」
    「・・・・・すぐそちらに戻る。明日、いや今から1時間後ギルドをあけておいてくれないか?」
    「おいおい、今ルーマニアなんだろ!んな早く来れないだろ。」
    「大丈夫さ。ねぇお祖父様」

    ドラルクの後ろからぬっと現れた長身の吸血鬼

    「もちのろん」

    そんな緩い返事をしたのも束の間ドラルクと一緒にコウモリになり消えたかと思った思ったら通話は終了していた。
    ほんと竜の一族ってヤツはどいつもこいつも規格外だなと、心の中で思いつつもこの状況をギルドへ報告しに戻った。



    本当に1時間後ドラルクはジョンとそしてお祖父様いわゆる竜の一族の長と一緒にギルドへ現れた。

    「マスター、吸血鬼対策課のヒヨシさんこちらに無理にでもお願いしてこちらに出向いてくださいとお願いしてもらえませんか?」
    「わかりました。」

    なぜ吸対の隊長だけなのかと考えていた


    しばらくすると隊長のヒヨシがギルドのに来た。何で呼び出されたのかわからないままだったが。いつもとは違う異様な雰囲気にただならぬことが起きたと考えあぐねていると。

    「ヒヨシさん。ロナルドくんから事務所のスペアキー預かってますよね。お貸しいただけませんか?」
    「何言っているんだ。ドラルクお前持っているんじゃないのか?」
    「いいえ、あの馬鹿から私は鍵持たせてもらってないんです。」
    「まさか鍵が欲しいがためにわしを呼び出したんじゃなかろうな。ロナルドならその辺巡回でもしてるんじゃないのか?」

    え?なぜ吸対の隊長がロナルドの事務所の鍵を持っているのか皆疑問に思う。

    「いえ。・・・よく聞いてください。これからいうことは事実です。吸対の隊長のヒヨシではなくロナルドくんのお兄さんのヒヨシとして聞いてください。」

    ドラルクから放たれたロナルドの兄がヒヨシであることは色々聞きたいがそれはおいといて、尋常じゃない圧。
    周りのみんなもその圧に圧倒された。

    「ヒヨシさん。ロナルドくんがいなくなりました。事務所に張り紙があり鍵もかけられ入れません。私は2週間前から実家のルーマニアに帰省していましたが。その辺りから彼女の目撃情報がないんです。何か知っていることなどはないですか?」

    声が出ない、ロナルドがいなくなった?思考が追いつかない。

    「な・・・んだと。」
    「思うことはたくさんあると思いますがとにかく一大事なんです。一緒に事務所に来ていただけませんか?」
    「わ、わかった。」

    こうしてヒヨシをつれドラルク、ショット、サテツは事務所まで来たのだった。
    ヒヨシはロナルドから事務所の鍵を預かっていた。自分に何かあった時身辺整理をするために鍵を託したのだ。なぜその鍵がこんなに早く出番を迎えてしまったのか。嫌の方へ嫌な方へと思考が巡ってしまう。扉をあけたところに妹だったものが落ちていないかそんなことばかり考えてしまう。胸が張り裂けてしまいそうだ。預かった鍵は事務所の入り口の鍵穴にピタリと嵌りクルンと一回転してかちゃりと音を立てた。
    そっと扉を開けた先にはがらんとした無の空間。人の気配はない。ふとを横を見ると目を閉じたメビヤツ。その上には彼女のトレードマークである赤いハット。スリープモードなのか反応はない。

    「とりあえず居住スペースへ」

    4人で進んでいくとリビングももぬけのから。
    ドラルクは冷蔵庫の前に進み扉を開ける。

    「・・・・減ってない。」
    「どうしたドラルク。」

    ドラルクの声を聞いたショットは聞き返した。

    「私、帰省する前にロナルドくんのために作り置きをいくつか作っていったんだよ。それが一つも手がつけられてない。これが意味することって何だと思う?

    重い沈黙の後ヒヨシが声を発した

    「ドラルク。お前が帰省したその日、もしくは次の日辺りからロナルドはここから姿を消したと言いたいんじゃな。」

    2週間まえアヤツな何があったのか考えるまもなくドラルクの声が聞こえた。今度はクローゼットの前だ。

    「コートと銃がある・・・・・。帽子があったからまさかとは思ったが。全て置いていって。あの若造何がしたいんだ!!!!」

    ドラルクはいつものにこやかな表情とは裏腹に今にも人を殺しそうなほどの形相をしていた。

    「ドラルク!!落ち着け!!道具が綺麗に置いてあるってことは無理やりどこかに連れていかれたりはしていないんだろよ。それだけでもまだいいほうじゃねぇか。」
    「何か理由があるかもしれない。もう少しこの部屋で手がかり探そうぜ。」

    すまないと、少し落ち着きを取り戻したドラルク。
    すると洗面所からサテツの声が聞こえた。

    「皆これ見てくれ」

    そう言って差し出されたのは何故か黒のかヘアカラーの箱と残骸とコンタクトレンズの空き箱。
    なぜこのようなものがここにあるのか。誰も使う人なんていないだろうにと思っていると。

    「もしかして、ロナルド自信がこれを使ったんじゃないか?止むを得内情で素性を隠すためとか。」

    そうだ、ロナルドは目立つ容姿をしている。白髪に近い銀髪に空のような青い碧眼。外を歩けば誰もが1度は振り向くであろう容姿をしているのだ。そんなやつが誰にも知られずに失踪するなんて無理ゲーだ。

    事務所に戻ろうとする一行はひとつ無いものに気づく。

    「なあ、ドラルク。この入口のところ確かデメキンの水槽あったよな。」
    「確かに・・・・・ない、ね」

    誰かが移動させたのか、家主以外にいるまい。
    その水槽は今どこにあるのかと、そういえばメビヤツはなぜ電源を落とされていたのだろう。

    もう一度確認してみる必要があるなと事務所入口のメビヤツに近づいた。
    主電源がどうやら落とされているみたいだとスイッチを押しても反応が無い。後ろに回ればご丁寧にコンセントまで抜いてある始末。やっとの思いで起動したメビヤツ主人が帰ってきたと思ったが目に飛び込んできたのはドラルクであった。反射的にビームを打ちそうになったが、あまりにも必死に主人について知らないかとと問いかけられたので電源を落とされる前の映像データがあったのでそれを映し出したのだ。

    フードを目深に被ったロナルドが写った。
    よく見えないが多分黒に髪を染めてコンタクトをしているのであろう。普段とかなり印象が違う。そしてメビヤツに暫く帰れないことと、事務所を頼むといい電源を落としたところで映像は途切れていた。


    「あのバカ妹は本当に何をやっているんじゃ!!!小さい時から心配ばかりかけおって。見つけたらただじゃ置かんぞ!!」

    と今にもどこかに当り散らしそうなヒヨシと

    「ロナルドくん本当にどこにいるの。何があったのかくらいちゃんと教えてよ・・・・・君がいないと私どうすればいいの?」

    とさっきまでの威圧感はどこへ行ったのか、今にも消えてなくなりそうなくらい小さな声でドラルクは呟いたのだ。なぜこの吸血鬼が、たかが一緒に同居しているだけのハンターのことをこれほどまでに心配するのか。

    「ドラルク・・・・・お前さんなんでそこまでロナルドのことで必死になれる?お前からしたら城を壊した張本人でハンターだ。まさかとは思うがロナルドのことが好きなのかい?」

    ドラルクはハッと顔を上げヒヨシを見た。

    「すき・・・・・なのか私は。たがらこんなにイライラしているのか。ふ、ふふはは、私ロナルドくんのこと好きだったんだ。ヒヨシさん・・・・・こんなガリひょろの吸血鬼が妹さんを好きでも大丈夫ですか?」

    「あいつを大切にしてくれるのであれば種族なんて関係ないとワシは思っておる。だからな、必ずロナルド見つけるぞ」






    そこから、ロナルド捜索本部が設置されたが失踪からやく2週間立っていて、ほとんど防犯カメラの情報もましてや変装まがいなことをしてると思われる為目撃情報すらない。ロナルドの行きそうな所等も調べてみたが全て空振りに終わった。
    調べども調べども有力な情報は出てこない。打ち止めになるかもしれないと思ったときだった。それは捜査が始まり秋も深まって寒い日が続いていた11月の初めのことだった。思いもよらないところから電話があった。














    考えもなしに飛び出してきて、星が綺麗なところを探しにわたしは、かつて訪れたこの地に足を踏み入れた。そこは彼と初めて会った場所。
    どうしてここに来たのか私でも分からない。けど、前に彼がが自分の城からよく星が見えたと言っていたと思い出し、考え無しにここまで来てしまったのだ。

    さてこれからどうしよう。泊まるところもなければ携帯も事務所に置いてきた。多めにお金は引き出してきたけどいつまで持つかは分からないし、いつ見付かってしまうかも分からない。こんなことするんじゃなかったなぁと今になって後悔してしまう。

    すると、突然後ろから声がした。

    「おーい。そんなところに突っ立てどうしたんだい?ドラルク城でも観光しに来たのかい?あーダメダメ、1年くらい前にハンターが来た時に爆発しちゃってね跡形もないんだよ。」

    その爆発させた張本人わたしだーと心の中で呟くが口にはできない。

    「あ、いえ。わたし星を見に来たんです。前ここにいたドラルクていう吸血鬼が私の城から見る星が綺麗だって言ったものだからどんなものかなって。本当に綺麗ですね。ずっと見ていたいくらいです。」
    「星を見にねー。まあ、ここはいつでも星が綺麗なくらい田舎だからねー特にここなんて街の灯りすら届かないところだからね。」
    「そうですね。ドラルクさんも言っていました。」
    「じょうちゃん。つかぬことを聞くがあんた今日泊まる場所あるのかい?」
    「いえ、実は着の身着のままここに来たので泊まる場所も帰る場所も今ないんです。」

    話しかけてきた人はびっくりし、それは大変だととりあえず街の方まで来なさいと一緒に行くことにしたのだ。

    「とりあえず今日はここに泊まりな。」
    「え、でも。迷惑じゃないですか。」
    「なーに、今はこのばーさんと俺の2人暮らしだ。1人増えたくらいで構いはしないよ。」

    そうだそうだ、とおばあさんも快く私を迎えてくれたのだ。
    次の朝、お礼にと洗濯やら炊事を少し手伝っていると、おじいさんが話しかけてきた。

    「おじょうさん。もし、今行くところがないんなら私らのところにいなさい。」
    「そんな、こんなどこの誰かも分からない私なんか家に置いて迷惑ではないんですか?」
    「こんな、親切で優しい君が迷惑なんてそんなことないよ。むしろ孫が出来たみたいで嬉しいよ。」

    こんな暖かい心に触れたのは何時ぶりだろう。
    自ずとポロポロ涙が出てきてわたしはおじいさんの胸も中で泣いてしまった。なれないことをして気を張っていたのか思いのほか疲れていた体は、緊張の糸が切れたようで、深い眠りに入ってしまったのだ。



    「・・・・・ん、ぅん」
    いつの間にか眠ってしまっていたようだと体を起こす。どうやらあの後泥のように眠ってしまったようだ。
    気づくと朝になっていた。台所ではおばあさんが朝食の準備をしている。
    こんな時にふと思い出すのは彼のこと。後悔してないと言えば嘘になる。スッキリとした頭でいまになってハッキリと理解する。


    あぁ、わたしドラルクのことが好きだったんだなと。

    でももう遅い。私が何もかも壊しちゃった。



    「おばあちゃん、おはよう。」
    「あら、おじょうさんおはよう。」

    にこやかに微笑みかけてくれる顔はとても優しくおばあちゃんがいたらこんな感じだったんだろうなと思う。

    「何か手伝うことはある?」
    「じゃあお言葉に甘えて、お味噌汁とご飯を盛ってテーブルに置いてくれるかしら。」

    お易い御用と、いそいそと準備に取り掛かる。
    ご飯を盛りお味噌汁もつぎ食卓へ並べる。とても理想的な朝食である。


    ロナルドはその日からこの夫婦の家でお世話になることにした。例によって子がお腹にいることを隠し。
    できることはなんでもやった畑仕事、力仕事、そして晴れた日は星を見に城の方まで散歩にいくのだった。しかしいつからかそれも出来なくなっていたのだ原因は妊娠期特有のあの症状。最近は大好きな白米の匂いですらアウトだ。

    夫婦も心配したが大丈夫だと寝てれば良くなるとロナルドは病院に行くことを頑なに拒んだ。体調が少しでも良い時は腹に何かを入れるが直ぐにグロッキーになる。


    いつからからだろう布団から起き上がることが出来なくなっていた。激しい嘔吐、完璧なる栄養失調と脱水
    最後に外に出て星を見た日はいつだろう。
    このままではここの人に迷惑がかかってしまう。ロナルドはめいいっぱい力を振り絞り元気の振りをした。こんな1日で元気になるはずがない今すぐ病院に行きなさいと諭されるが、いえ大丈夫ですもうこの通り!と少しでも心配の種を残さない様になるべく元気にふるまった。如何せんロナルドは我慢することに慣れていた。それは自分の育った環境や職業的なものもある。よく怪我を隠して怒られていた。
    本当に大丈夫かいと最後まで心配されたが、大丈夫です。落ち着いたら連絡をさせてもらいます、と夫婦に別れの挨拶を告げぺこりと頭を下げる。必ず病院に行くようにと念を押されたが、そこまで行けるだろうか。




    最後に、あの城に行きたい。
    もし自分の命があそこで尽きるならおなさかの子供にはすごく申し訳ないだろう。ならせめて彼が半世紀以上居たあの城まで行きたいと、途中荷物を捨ててまで城まで来た。
    扉は爆破で消し飛び何も無い。でも、彼との思い出がここで蘇る。もう、立っている力もない。城入口にズルズルと身体を預けてそのまま冷たい地面へ身体が倒れた。ああ、ここまでなのか。
    「兄ちゃんヒマリ、ギルドのみんな吸対のみんな私もうダメみたい。勝手なことしてごめんなさい迷惑かけてごめんなさい。」


    「ドラルク・・・・・好きになってごめんなさい。」




    目を閉じ意識が奪われそうになったその時。




    「昼の子みーつけた」




    そこで私の意識は途切れた。

















    電話を受けたドラルク。それは紛れもなく自分の祖父からだった。
    ロナルドくん見つけたから。新横浜病院に来てちょうだい。


    何が起こったのか分からない。とにかく、ヒヨシさんヒマリさんそしてギルドのに連絡を入れた。

    30分後病院に到着したらお祖父様がロビーで待っていた。

    「お祖父様ロナルドくんは!!ロナルドくんは無事なんですか!!!」

    人目もはばからず叫ぶ私に、まあ、落ち着きなさい。
    昼の子はこっちだよと病室に案内された。
    そのあとあとは君たちが聞きなさいとお祖父様はどこかへきえていったのだった。

    案内された病室のドアを開けると、そこには管を沢山繋がれ、以前とは想像もつかないくらい痩せこけてしまった彼女がベッドに横になっていた。想像してたように、黒く染められた髪は途中から染めることが出来なくなったのか元の銀髪が数センチ伸びている。

    「あぁ、こんなに痩せちゃって。どうしてこうなるまで一人で頑張っちゃうの君は・・・・・」

    ドラルクの切ない声が病室に響く。

    するとコンコンと扉をノックする音が聞こえた。
    「失礼します。ああ、皆さんおそろいですね。主治医です。ロナルドさんの状態について少しご説明させていただきますね。本来であれば家族だけなのですが、状況が状況なので同居しているドラルクさんあなたも同席お願いします。」


    医師は現在の体の症状を最初から説明し出した。

    「主な原因は重度の栄養失調、そして脱水です。ココ最近吐き戻しが多かったようで、喉の奥に胃酸による炎症が見られました。栄養失調と脱水については点滴や回復後の食事で大丈夫ですが・・・・・」

    「先生他に何かあるんですか?なんでも教えてください。」

    ヒヨシは医師が言いづらそうにしている内容を積極的に聞こうとしていた。

    「皆さん大変驚かれるかもれませんが、この栄養失調と脱水ある事が原因で起こっています。・・・・・悪阻です。彼女、ロナルドさんは重症妊娠悪阻でここまで体調を崩されています。」


    「・・・・・にん、し・・・ん?」

    ヒヨシが呟いた。
    そこにいた全員が青白い顔になった。一体誰がいつどこで、なんの罪も無い少女にと・・・・・

    「現在の様子ですと、妊娠4ヶ月〜5ヶ月ぐらいでしょうか。あまりにも母体の状態が良くないので前後はあるかもしれません」

    ロナルドさんが目覚めてからみなさんでお話をされるのが1番良いでしょう。と医師はいい病室から出ていった。

    まさかまさかと思った。こんなことになっているとは。

    「ヒヨシさん私どうしよう。ロナルドくん好きなのに、お腹に子供いるって、これなんかの詰みゲーかな。」
    「ワシだってショックじゃよ。どこぞの知らない馬の骨が大事な大事な妹に手を出したんだ。お前さんならまだしも・・・・・」
    「おこ(私もどらるくさん以外なんて腹ワタ煮え返るくらい怒ってる)」



    沈黙が続く病室。
    どれくらい時間が過ぎただろうか、ベットの方から声が聞こえた。



    「・・・・・ん。ぅん。・・・・・あれ。わたし・・・・・。」


    3人一斉にベッドへと張り付いた。

    「ロナルド。兄ちゃんだ分かるか」

    「にいちゃん?・・・・・ヒマリ?」

    ふと右に顔をやると酷く心配した顔をしているドラルクが目に入った。

    「ドラ・・・・・ルク。あ、・・・・・わたし、ごめっ・・・・・ごめん・・・・・なさいっ」

    ドラルクの顔を見るなり号泣し始めたロナルド。頑張ったね、偉かったね、もう大丈夫だからと一つ一つ優しい声でそして頭を撫でながらロナルドが落ち着くのを待っていた。


    しばらくして冷静さを取り戻したロナルドを待っていたのは、この3ヶ月間どうしていたのかという質問だった。
    ロナルドは絶対に怒らないということを条件に。話を始めた


    「まずわしから聞くぞ。お前さん腹に子がいることは知ってるな。」

    こくりと頷く

    「いつから知っていた。」

    「・・・・・8月の頭ぐらい。月のものが来ないから少し遠くの薬局で試薬買って試した時にわかった。」

    絶句した。この子は分かっていながら誰にも相談せずに一人で抱え込んでしまったのだ。

    「ロナルド・・・・・なぜ相談しなかった。お前の味方は沢山いるだろう。わしだって兄貴だお前の力には多少なりともなれる。」

    ロナルドはぶんぶんと頭を振った

    「自分の勝手な都合で、勝手に出来ちまってそんなん相談するどころか迷惑になるだけだと思った。・・・・・でも、それは間違いだったってこの3ヶ月間で十分思い知ったよ」




    「ねえ、ロナルドくん」

    ドラルクが声をかけるとロナルドはびくりと身体を強ばらせた。

    「何・・・・・ドラ公」

    「ちなみになんだけど、単刀直入で聞くね。そのお腹の子誰との子?」

    おい、ドラルク!とヒヨシは止めたが。大事なことだからとあえて聞き出すつもりだ。
    ドラルクには心当たりがあるのだ。8月に妊娠が発覚。自ずとその約1か月前・・・・・そう、あの映画を見た日だ。その日以降ロナルドとほとんど行動を共にしていたのでほかの男が入る隙なんてなかった。

    「・・・・・」
    「黙っていちゃ分からないよ。じゃあロナルドくん。実はね私君にずっと隠してい秘密を教えてあげる。」

    ロナルドはふっと顔を上げた。

    「心のどこかではずっと思っていたんだけど、確信が持てなくて。君がいなくなった時ね、とても嫌な気持ちになったんだ。どこかとてもイライラしてしまうの。それがなぜだかお兄さんに言われて気づいたんだ。私ね、」

    君が大好きみたい。いや、みたいじゃないね。大好きなんだ。

    ロナルドの目がぱっと開かれる。その大きな太陽を称えるような青い瞳がドラルクを捉えた。

    「ねえ、本当はこの子私との子供じゃないの?」

    「ドラルクお前さん・・・・・。」
    「お兄さんすいません。これは話してなかったですよね。その時は気の迷いだったのかも知れません。映画を見て雰囲気に流されてしまって。私殴られてもいいようなことしてました。どうぞ殴ってください。」

    「まっ、待って。話す・・・・・話すから。兄ちゃんドラルクを殴らないで。」



    ロナルドは少しずつすこしずつ当時の状況を話し。

    「・・・・・あの時家で映画を2人で見てたんだ。恋愛モノだった。でも雰囲気に流されちゃって・・・・・。その時は一晩の気の迷い、その場の雰囲気のせいだと思ってた。次の日もドラルク普通に接してくれたしそのあとは1回も手なんて出されてない。そのあと最初に話したように生理が遅れてまさかと思って試したら。出来てた。たった1回だけなのに。・・・・・好きでもない私が、妊娠したなんてしれたら迷惑かけると思ったから、ドラルクが実家に帰るって言った時好都合だと思った。誰にもバレないように髪染めてコンタクト入れて、なるべく目立たないようにってしてたのにな。やっぱりどこかでドラルクのことが頭にチラつくの。どこに行こうかなって思った時に思いついたのが、星が綺麗って言ってくれたお前の城。」
    「まさか、爆破後の城に行ったの?」
    「うん、星すごく綺麗だったよ。でも、星よりもお前のことが頭から離れなくて。ああ、私ドラルクのこと好きだったんだなぁって全て投げ出したあとで気づいた。」



    「そっか、私たちいつの間にか両想いだったんだね。」
    「みたいだな。」
    「・・・・・ドラルクごめん。勝手に出て行ったりして。心配させてごめん。」
    「ホントだよ。どれだけ心配したか分かってる?でも、私も私だねロナルドくんが悩んでいることに気づいてあげられなくて。そしてその原因作っちゃてごめん。」

    抱きしめ合い仲直りなのか、愛の確認なのか一向に離れないふたりに

    「、ぅん、お前さん方わしらがいるの忘れてないかの?愛を確かめ合うのも大変よろしいんだか。ドラルクとりあえず1発殴らせろ」

    ニコリと笑うヒヨシこの上なく怖い笑顔で拳をこちらに向けてきた。

    「え、いやっちょいまは。スナァァァ」

    はぁーーー。ロナルドお前もだと少し強めにロナルドの脳天目掛けて手刀が落ちてくる。

    「付き合ってもないのに致すことこれ如何に?なんだが、これでちゃらにしよう。ロナルドも無事帰ってきたしお前さん方がくっついた事も嬉しい限りだ。」
    「ロナルド、まずはしっかりと身体を癒せ。まだ悪阻が終わったわけじゃないと思うがしっかり病院に通いながらドラルクから栄養満点の飯作ってもらぅんじゃぞ」

    ロナルドはめいいっぱい涙を浮かべうんと大きくうなづいた。

    「ちいねえ、身体、大事に、ドラルクさんも、大事に。
    あ、結婚式、よ!」(ちいねえ、赤ちゃんのいるからだ大事にしてね。ドラルクさんも大事にしてね。あと、結婚式するなら教えてちょうだいよね!)

    「け。けけ結婚式!!?」
    「おや、ロナルドくんは結婚式したくないの?」
    「え、あいやそのしたくない訳では無いけど・・・・・」
    「ふふ、子供が産まれて落ち着いたらそれからでもいいじゃない」
    「・・・・・うん」


    ヒマリはにこりと笑い、ヒヨシはバカップル誕生してしまったとやれやれと思うのであった。









    約1ヶ月病院への入院が義務付けられた。薬で押えているもののつわりの症状はなかなか収まらずだったが、入院後半にもなるとほとんど症状は消え、ご飯も食べれるようになり、筋力体力を付けるために院内を歩くようにしていた。
    入院中は、ギルドのメンバーやら吸対の奴らやら、その他多くの知り合い吸血鬼がお見舞いに来てくれた。どこから仕入れた情報なのかみんなわたしがドラルクとの子供が出来たと言うことまで知っていて、恥ずかしさとなんか、こう表現出来ない気持ちでいっぱいになった。

    退院当日、流石に退院は昼間にしないとなので大事をとって兄が迎えに来てくれた。少しずつ丸みを帯び始めたお腹の膨らみに手を添えてつつしっかりとした足取りで病院を後にし、久々に歩く新横の街を堪能した。足取りは軽いが行動に制限がかかるのはどうもわたしに合わない。はやく身体をめいいっぱい動かしたいなと思いつつ、他愛のない話を兄としながら、みんなが待つ事務所へ帰ってきた。
    この扉1枚へだてた先に帰るのは何ヶ月ぶりだろう。メビヤツも、キンデメも他のやつらにも色々心配かけたな。ドキドキと心臓が脈打つ中扉を開ける。
    眩しい光の中



    「ロナルド君。おかえり。」
    「ああ、ただいま。」



    暖かいそしてその温もりに触れた時、私はこの世で一番幸せ者だと改めて思ったのだ。
    その時、ポコリとお腹かが動くのを感じた。
    びっくりした顔でドラルクにも伝える、本当に!!?いそいそと私のお腹に手を当てる。その上から手を重ね、

    「かわいい私の赤ちゃん。初めまして。ここが今日からあなたのお家だよ」

    優しく語りかけた。















    「ねーねー、お父さんお母さん。今日はどこに行くの?」

    可愛らしい声が繋いだ手の先から聞こえてきた。

    「今日はお父さんとお母さんが1番最初に出会ったところだよ。」
    「そうなの!?楽しみー!」
    「楽しいかどうかは分からないけど、とっても綺麗なお星様が見えるんだ。気にいてくれると嬉しいな。」
    「私、お父さんお母さんが好きな物は全部大好き。」

    今日は暑い夏の日少しでも涼しいところへと、家族3人で初めての遠出。行先はもちろんあのお城。
    そして、お世話になったあの優しい夫婦の元へ訪ねる予定だ。

    初めて連れてくる小さな彼女は満天の星空と、この地をを気に入ってくれるだろうか。
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