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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    敦太。カルピスおいしい。

    ##文スト

    甘酸っぱいのはカルピス 休日、太宰の部屋。二人で何をするでもなく卓袱台を囲んでテレビを見ていたら、ふと敦が訊いた。
    「――あの、台所借りてもいいです? お茶か珈琲淹れますから」
    「ああ、うちお茶っ葉もインスタント珈琲も無いよ」
     返ってきた言葉に敦はぎょっとする。
    「普段何飲んでるんですか?」
    「え~、ペットボトルのお茶とか水。コンビニで買えるやつ」
     そう云って立ち上がった太宰が、台所へ行き冷蔵庫を開ける。背後に敦もついて行った。太宰は五百ミリリットルのお茶のペットボトルを二本取り出す。
    「ほら、こういうの」
     それを見た敦は深い溜息をつく。頭が痛いと云った様子で額を押さえた。
    「太宰さん、なんでそんな勿体無い事をするんですか。お茶なんて絶対茶葉から淹れる方が安く済みますって」
    「面倒臭いよ。金で時間が買えるならそれに越したことは無いし」
     時は金なり。そう云いつつペットボトルを弄ぶ。敦は開けっ放しにしている冷蔵庫の扉が気になって、それを閉めようとする。そこで中にあるものを見つけた。
    「あ、カルピスの原液があるじゃないですか。これ、薄めて飲みましょうよ」
    「ああ、これ?」太宰はカルピスの原液を引っ張り出す。「前に敦君の部屋で君が作ってくれたカルピスがすごく美味しかったから、再現しようとしてるんだ」
     そこで太宰は「でも何度やっても君の味にならない」と苦笑した。敦は瓶を受け取って笑う。
    「なんだ。そんな事なら僕に云ってくれれば幾らでも作りますよ」
     敦はすぐ傍の食器棚から硝子のコップを二つ取り出す。カルピスを作ろうとしているのだ。それを見た太宰は冷蔵庫にお茶を戻すと、テレビの前に戻っていった。
     ――敦君の作るカルピス。その水と原液の配分だとかの所謂『企業秘密』は、知ってしまったらきっとつまらない。だって自分で再現できてしまったら、彼がいなくてもその味を味わえるようになってしまうから。
     だから太宰は、それを一生知らないままでいたいなあ、なんて思うのだった。
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    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。眠れない夜もある。■インソムニア


     同じベッドの中、モクマはチェズレイの隣で寝返りをうつ。
    「眠れないんですか?」
    「なんか寝付きが悪くてな。……寝酒でもするか」
     起き上がろうとしたモクマの肩を押し止める。薄暗がりの中でプラチナブロンドが揺らめいた。
    「寝酒は体によくありません。それだったら私が催眠をかけて差し上げます」
    「えっ」
     モクマは少しぎょっとする。これまで見てきたチェズレイの催眠といえば、空恐ろしいものばかりだったのだから。するとそれを見透かしたようにアメジストの瞳が瞬いて眉尻が下がる。今にも涙がこぼれ落ちてきそうだ。――モクマはこの顔にたいそう弱かった。
    「モクマさん……私があなたに害のある催眠をかけるとでも?」
    「い、いやそんなこと思っちゃおらんけど……」
     言われてみれば確かにそうだ。この男が自分にそんなことをするはずがない。
     しなやかな手によって再びベッドに背を預け、モクマは隣に横たわるチェズレイと目を合わせた。
    「目を閉じて、ゆっくり呼吸してください。体の力を抜いて」
     穏やかな声に、言われるとおりにモクマは従う。
    「想像してください。あなたは果てのない広い草原にいます。そ 854

    FUMIxTxxxH

    DONElife is yet unknown.

    モクマさんの手について。
    諸君がワヤワヤやってるのが好きです。
     事の起こりは、路傍の『それ』にルークが興味を示したことだ。

    「モクマさん、あれは何でしょう?」
     大祭KAGURAから数週間後・ブロッサム繁華街。
     夜とはまた趣を異にする昼時の雑踏は穏やかながら活気に満ちている。人々の隙間から少し背伸びしてルークの視線に倣うと、路地の入り口、布を敷いた簡素なテーブルを挟んで観光客と商売人らしい組み合わせが何やら神妙な顔を突き合わせているのが見て取れた。手に手を取って随分と熱心な様子だが、色恋沙汰でもなさそうで。
    「観光地ともなれば路上での商いはいろいろあるけども。ありゃあ……手相を見てるんだな」
    「手相……様々ある占いの中で、手指の形や手のひらに現れる線からその人を読み解くといったものですね」
     両腕に荷物を引っ下げたままタブレットでちょちょいと字引する手際はまさに若者のそれで、実のところモクマはいつも感心している。
    「こんな道端で……というよりは軒先を借りて営業しているんでしょうか」
    「案外こういう場所の方が一見さんは足を止めやすいもんだよ。そも観光なんて普段見ないものを見て歩くのが目的だもの。当たるも八卦当たらぬも八卦、ってやつさ。」
     益体 8628