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    高間晴

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    高間晴

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    敦太800字。相合傘。

    ##文スト
    #BSD
    #敦太
    dunta

    傘の中「参ったなぁ……」
     夜更けにバーに飲みに出かけて、マスターと少し話し込んでいたら雨が降り始めた。大きめの雨粒がばらばらと店の窓ガラスを叩いては滑り落ちていく。
     マスターが店に置いてある傘を貸してくれると云ったが、太宰は断った。コートのポケットから携帯を取り出してボタンを操作すると、耳に当てた。
    「あ、もしもし敦君?」
    「太宰さん、今どこにいるんですか?
     雨が降ってますけど……云ってくれれば迎えに行きますよ」
     太宰は丸椅子をくるりと回して、カウンターに肘をついた。
    「じゃあお願いしていいかな。
     駅前から裏通りを入ってすぐの、ノーチラスってバーだよ」
     通話を終えると、太宰はもう一杯飲もうと、ブランデーを注文する。
     敦が来たのは、太宰のグラスの中身が半分になる頃だった。
    「こんばんは。
     ――太宰さん、帰りましょう」
     それを聞いて太宰はグラスの残りを一気にあおると、会計を済ませて敦と店を出た。
     雨がざあざあ降る軒下で太宰に傘を渡して、敦は自分の傘を開く。
    「予報ではこの後、雨はもっとひどくなるみたいです。早く帰りましょう」
     急かす敦に、太宰は面白いことを思いついたと笑顔を浮かべる。
    「あ〜つしく〜ん♡」
    「な、なんですか」
    「相合傘しよ♡」
     敦は困ったように唇を尖らせる。しかし頬はほんのり桜色で、本心から嫌ではないことがわかる。
    「仕方ない人ですね。でもこの傘、男が二人も入ると肩濡れちゃいますよ」
     そうして二人は敦が差す一つの傘に収まると、道を歩き始めた。
    「太宰さん、随分お酒の匂いがしますけど……どれくらい飲んだんですか?」
    「当てたら、何でも敦君の云うこと聞いてあげる」
     太宰は酒のおかげで上機嫌。鼻歌でも歌い出しそうなくらいだ。
     敦は虎の嗅覚でだいたい分かってしまったので、それをそのまま口にする。
    「ウイスキーとブランデーですか?
     ウイスキーはかなり飲んでるみたいですけど、ブランデーは僕が迎えに行ったときの一杯だけ」
    「当ったり〜。さて、敦君のお願いを聞いてあげよう」
     太宰は敦の頭を撫で回す。敦はちょっと考えた末に、太宰の肩を抱き寄せる。
    「僕のいないところで、お酒を飲みすぎないでください」
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    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。嫉妬するチェズ。■わたしの一番星


     二人の住むセーフハウスにはグランドピアノが置かれた部屋がある。今日もチェズレイが一曲弾き終わって、黙って傍の椅子でそれを聴いていたモクマは拍手をした。応えるように立ち上がって軽く一礼する。
    「ところでモクマさん。あなたも弾いてみませんか?」
    「えっ、俺?」
     驚いたように自分を指差すモクマを、ピアノ前の椅子に座るよう促す。困ったな、なんて言いながら満更でもなさそうだ。そんな様子に少し期待してしまう。
     モクマは確かめるように、両手の指を鍵盤にそっと乗せる。そうして指先で鍵盤をゆっくり押し下げて弾き始めた。
     ――きらきら星だ。
     多少調子外れながらも、鍵盤を間違えずに一分弱の曲を弾いてみせた。
    「――はい。おじさんのピアノの十八番でした」
     仕向けておいてなんだが、チェズレイは正直驚いていた。きっと片手を使って弾くのがやっとだろうと思っていたから。それと同時に、興味が湧いた。
    「どこで、覚えたんですか」
    「あーね。おじさん二十年くらいあちこち放浪してたでしょ? いつだったかバーで雑用の仕事してる時に、そこでピアノ弾いてたお姉さんに教えてもらったの」
     若い頃のモ 871

    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。眠れない夜もある。■インソムニア


     同じベッドの中、モクマはチェズレイの隣で寝返りをうつ。
    「眠れないんですか?」
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     起き上がろうとしたモクマの肩を押し止める。薄暗がりの中でプラチナブロンドが揺らめいた。
    「寝酒は体によくありません。それだったら私が催眠をかけて差し上げます」
    「えっ」
     モクマは少しぎょっとする。これまで見てきたチェズレイの催眠といえば、空恐ろしいものばかりだったのだから。するとそれを見透かしたようにアメジストの瞳が瞬いて眉尻が下がる。今にも涙がこぼれ落ちてきそうだ。――モクマはこの顔にたいそう弱かった。
    「モクマさん……私があなたに害のある催眠をかけるとでも?」
    「い、いやそんなこと思っちゃおらんけど……」
     言われてみれば確かにそうだ。この男が自分にそんなことをするはずがない。
     しなやかな手によって再びベッドに背を預け、モクマは隣に横たわるチェズレイと目を合わせた。
    「目を閉じて、ゆっくり呼吸してください。体の力を抜いて」
     穏やかな声に、言われるとおりにモクマは従う。
    「想像してください。あなたは果てのない広い草原にいます。そ 854