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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    敦太800字。うどん食べたい。

    ##文スト
    #BSD
    #敦太
    dunta

    夜食 敦は目を覚ました。
    「……お腹すいた……」
     部屋は薄暗い。枕元の時計を見ればまだ夜中の三時。隣では太宰が眠っているので、そっと寝床を抜け出した。
     ――何か食べるものあったかな。
     台所に行き冷蔵庫を漁る。
     孤児院時代には一度だけした、夜食。ある時、空腹に耐えられなくて食料庫に忍び込んだことがある。味気ない乾パンを食べたがそれはとても美味しくて。でも結局、後に受けた罰でもう二度とはするまいと思ったのだ。
     冷蔵庫から冷凍うどんと卵、葱を見つけたので、これでうどんを作ろうと思って腕まくりする。
     まず鍋に水を入れてお湯を沸かす。その間に葱を刻むことにした。
    「あーつーしくーん♡」
     背後から声をかけられて敦はびくっと肩を震わせる。葱を刻む手元が狂わなくてよかった。振り返れば太宰が立っている。夜着を適当にひっかけただけのその姿は目に毒だ。
    「私を置いて一人で夜食なんてずるいなあ」
    「すみません。よく眠ってるように見えたので……」
     言い訳をすると、太宰はどこか愉しげに笑って「私も食べたい」と敦にすり寄ってきた。
     敦は笑顔で「いいですよ」と答え、冷蔵庫から冷凍うどんをもう一人分取り出す。
    「太宰さんは丼と箸を用意してくれます?」
    「いいよー」
     食器棚を開けている太宰を横目で見ながら、敦は沸騰した鍋に二人分のうどんの麺とスープの粉末を入れた。出汁のいい香りが台所に漂ってくる。ぐう、と敦の腹が鳴る。小さく笑う太宰の声。
     ――嗚呼、なんて幸せなんだろう。
     太宰から受け取った丼に、茹でたうどんとスープを入れ、割った卵と刻み葱を乗せる。食卓までその丼を持っていくと、太宰はにこにこしながら待っていた。
    「いただきます」
     敦は箸を手に取るとうどんを吹き冷まして一口すすった。香る出汁にもちもちの麺がたまらなく空腹にしみる。敦が黙々とうどんを食べていると、太宰がまだうどんに手をつけていないのに気づく。
    「食べないんですか?」
    「まだ熱いから。あと敦君の食べてる姿がすごく美味しそうで」
     そう云われてしまって敦はうどんを喉に詰まらせかける。そして、こう云い返してやるのだった。
    「美味しそうなのは、太宰さんの方です」
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    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。ポッキーゲームに勝敗なんてあったっけとググりました。付き合っているのか付き合ってないのか微妙なところ。■ポッキーゲーム


     昼下がり、ソファに座ってモクマがポッキーを食べている。そこへチェズレイが現れた。
    「おや、モクマさん。お菓子ですか」
    「ああ、小腹が空いたんでついコンビニで買っちゃった」
     ぱきぱきと軽快な音を鳴らしてポッキーを食べるモクマ。その隣に座って、いたずらを思いついた顔でチェズレイは声をかける。
    「モクマさん。ポッキーゲームしませんか」
    「ええ~? おじさんが勝ったらお前さんが晩飯作ってくれるってなら乗るよ」
    「それで結構です。あ、私は特に勝利報酬などいりませんので」
     チェズレイはにっこり笑う。「欲がないねぇ」とモクマはポッキーの端をくわえると彼の方へ顔を向けた。ずい、とチェズレイの整った顔が近づいて反対側を唇で食む。と、モクマは気づく。
     ――うわ、これ予想以上にやばい。
     チェズレイのいつも付けている香水が一際香って、モクマの心臓がばくばくしはじめる。その肩から流れる髪の音まで聞こえそうな距離だ。銀のまつ毛と紫水晶の瞳がきれいだな、と思う。ぱき、とチェズレイがポッキーを一口かじった。その音ではっとする。うかうかしてたらこの国宝級の顔面がどんどん近づいてくる。ルー 852

    高間晴

    DONEお題箱からのリクで風邪を引くチェズと看病するモさんの話。チェズモク。■いちばんの薬


     とある国で拠点にしているビル。上階にある執務室にて。
     モノトーンでまとめられた無駄のないスタイリッシュなこの部屋は、組織を率いるチェズレイの好みに合わせたものだ。室内にはドアの前に一人、チェズレイの側近である黒服の男が控えている。そんな中でチェズレイは黄昏の景色が映る窓を背にして机に座り、部下から提出された麻薬の密輸ルートに関する資料に目を通している。
     ――頭が痛む。これはたぶん熱もあるなと、チェズレイはそんなことを頭の隅で考えながら、涼しい顔を崩さない。
     そこへノックの音と「チェーズレイ」と呼ぶ声がしたので、はっと顔を上げてしまう。黒服が心得たように黙ってドアを開ける。そこには予想通りモクマの姿があった。書類を手に机までグレーのカーペットの上を下駄で歩いてくる。顔を見るのは二週間ぶりだ。チェズレイはすぐさま目の前の愛しい相棒兼恋人にハグしたかったが、部下の手前、そういうわけにもいかない。
    「ただいま~。久しぶりだね」
    「おかえりなさい、モクマさん」
    「お疲れさん。これ、俺がニンジャジャンの仕事やりながら新しく手に入れた、人身売買に関わってる組織のリストね」 2295